極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

宇宙の渚にエレベータ

2012年05月24日 | 環境工学システム論

 

 



【東京スカイツリーとエレベータ】

世界一高い電波塔として開業2日目を迎えた東京スカイツリー。初日の22日は強風で展望台の
エレベーターを停止させるトラブルがあった。エレベーターが自動停止する前に運行を取りや
める予防的な措置だった。これから迎える台風シーズンでも同様のトラブルが予想され、運営
会社は対応を迫られた。エレベーターの運行を停止は22日午後5時15分。天望デッキ(350メ
ートル)と天望回廊(450メートル)を結ぶ2基のエレベーターや地上4階と天望デッキを結
ぶ4基のエレベーターが運転停止。停止理由は「強風で揺れが大きくなり、自動で速度を落と
し最寄りの階に停止する『自動運転』になる可能性があったため」とか。「毎秒30メートル以
上の風で運行を停止、毎秒15メートルの風が長時間続く場合も自動運転に入る可能性が高い」
としており、22日は約450メートル地点で夕方から12~13メートルの風。エレベーターを納入し
た日立製作所は「自動運転に入るかどうかは揺れの大きさによって決まる」と説明する。地震
の際はかごのセンサーが震度4程度の揺れを感知すると自動運転に切り替わる。風については
「エレベーターごとに揺れ具合も違うため、風速の基準は建物の所有者の判断」とのことだ。
もしも、エレベーターが止まったら、天望回廊までの間には避難階段につながる7カ所の非常
用停止階があり、かごに取り残されることはないとのこと。

東京スカイツリー概要 

国内ではエレベーターの国内シェアは1位が三菱電機、2位が日立製作所、3位が東芝エレベ
ータ(国
内のエレベーター会社は約700社)。三菱電機は、1930年からエレベーターの部品製
造開始、1935年に三菱神戸病院にエレベーター第一号機を納入。日立製作所は1927年からエレ
ベーター製造に着手。東芝のエレベーターは、1966年交通事業部から分離独立する形で歴史を
スタートの後発だ。1978年池袋サンシャイン60(分速600メートル、時速36キロ)、1992年横
浜みなとみらい21のランドマークタワー(分速750メートル、時速45キロ)と、日々速度の記録
を塗り替えてきた。東芝エレベータは、2004年、分速1010メートルという、当時世界最高速エ
レベーターTAIPEI101(台北)を製造・納入。時速換算60.6キロ。話題の東京スカイツリーは、
2008年、東芝エレベータと日立製作所の二社で受注。東芝エレベータは、昇降距離が日本最長
の464.4メートルの業務用エレベーター2台。日立製作所は、地上350メートルにある第一展望
台を地上から直通で結ぶ超高速エレベーター4台。40人乗りで分速600メートル、第一展望台ま
では約50秒弱で到着する。

 

最上階に、東京スカイツリー用エレベーターのモーター部分が設置されていた。高さ2メート
ル、幅2メートル、奥行き2メートル。マンションなどでよく使われる、ロープは、直径20ミ
リのものを10本使用。一本で800キロあるので、ロープの自重だけで合計8トンにもなる。こ
のロープの片側には人が乗るかご、もう片方にはおもり。かごと乗員の重さが4~5トン。2
重巻きの永久磁石モーターを使った高出力高速巻上機と強力な巻上機を制御する信頼性の高い
制御装置。エレベーターはつるべ式だ。高速、大容量になれば、それだけ高強度なロープが必
要となり、建物が高くなり昇降行程が長くなればなるほど、地震や風による揺れも強くなるの
で、それをいかに制御し、快適さや安全性を確保するかが大きな課題となる。



さて、エレベータの技術革新について。1980年代のインパータとマイクロプロセッサの適用、
1990年代後半からの永久磁石電動機と機械室レスエレベータ技術がその特徴で、エレベータの
性能や構造を大きく進歩させたことか分かる。機械室レスエレベータ(MachlneRoomless Ele-
vatol:MRL)という言葉は聞き慣れないが、近ごろは新築のビルやマンションの屋上か平らに
なったことになった。これはMRLを採用し、屋上の機械室かなくなったからで、駅などでシー
スルーのMRLを見かけることも多い。
エレベータには多くの種類かある。MRLは低速の標準形エ
レベータに属し、10階程度までのマンションや事務所ビル、商業施設、駅などに広く使われて
いる。エレベータは大きくロープ式と油圧式に分けられ.ロープ式の大部分は下図のようにか
ごと釣り合いおもりがローブでつるぺ式に支持されて、巻上機の綱車(ブーリ)とローブ間の
摩擦力により駆動するトラクション式。トラクション式は、油圧ポンプと油圧ジャッキを用い
てかごを昇降させる油圧式に比べ、速度が速くかつ所要動力(電動機容量)か小さいのか大き
な特長で、低速から超高速まで広く使われている。また、エレベータは定格速度により、高速
エレベータ(120m/分上)と、低速エレベータ(105m/分以下)に分けられる。乗用エレベータ
で需要台数が多いのは低速エレベータの中の、速度が45~105m/分で積載量が450~1000kgの標
準形エレベータであり、2004年では需要台数79%を占める。またその96%以上かMRLだ。

ローブ式エレベータは、高速エレベータでは減速機のないギヤレス巻上機か主に用いられてき
た。低速エレベータではウォーム歯車減速機(効率60~70%)、次にはすは(ヘリカル)歯車
減速機(効率95%)のギヤード巻上機か主流であったか、MRLになり巻ヒ機の小型化/薄型化、
低騒音化のために,永久磁石同期電動機を用いたギヤレス巻に機に変わっだ。高速エレペータ
は古くはMG(Motol Genelator}セットを必要とするワードレオナード方式、次にMGセットが不
要のサイリスタレオナードカ式が用いられた。低速エレベータは誘導電動機の極数変換による
交流二段制御方式、次にサイリスタにより誘導電動機の一次電圧を制御する交流帰還一次電圧
制御方式が用いられた。サイリスタ制御の時代に制御回路もリレー回路からマイクロプロセッ
サに置き換えられた。




1983年にパワーートランジスタを用いた交流町変電圧可変周波数(VVVF}制一方式=インパー
タ制御力式が高速エレベータで実用化され、翌年には低速エレペータにもインバータ制御方式
か導入された。低速エレベータでは一次電圧制御力式に比べ約50%もの省工ネこなり、乗り心
地も高級エレベータ並みとなった。1996年、高速エレベータで誘導電動機に代わり、より小形
で高効率な永久磁石同期電動機が実用化された。低速エレベータもMRLの登場に伴い、永久磁
石同期電動機になる



本では198O年からホームエレベータの開発が進められ、1988年に小型、低速に限り規制が緩
和され、駆動装
置を昇降路内に設置することか認められた。1988年よりさまざまな力式の機械
室のないホームエレベータが実用化
された。なかには、現有のMRLに近い構造のものもある。
1989年にリニアモータエレベータが開発され、日本市場に投入された。上図にその構造を示す。
円筒形のリニ
ア誘導電動機(LIM)が釣り合い重りの中に設置され、2次導体は円柱形C昇降路
の頂部と下部で固定されて
いる。巻上機のための屋上機械室は必要ない。LIMは回形誘導電動
機に比ベエアギャッブが大きくなり、一般に
力率、効率が良くなる。リニアモータエレベータ
は油圧式
エレベータに比べ、速度、消費電力、電源設備容量で勝っていたが、MRLの登場でこ
れらの優位性かなくなっ
た。

 

現在のリニアモーター式は「究極の機械室なしタイプ」で、次世代のリニアモーター式エレベ
ーターとして、釣合おもりに内蔵されている一次側を、かごに内蔵する研究が進められている。
この方式が実現すれば、昇降路内に伸ばした二次側にそって一次側の「かご」が移動すること
になり、ロープ不要になり、水平・垂直・カーブなど、かごの移動方向も制約がなくなり、エ
レベーターの概念が根底から覆ることになる。つまりは、現在JRが計画中のリニアモータカ
を垂直方向に移動するイメージが、宇宙エレベータあるいは軌道エレベータなどとして。  

 

 

今回のエレベータ停止騒動で、昇降機の現状を俯瞰してみたわけだが、大規模環境変動対応と
いう安全性や信頼性設計の再考と修正(PDCAサイクル)が迫られているように思えた。そ
れと同時にデジタル革命は、現在のエレベータを根底から変えてしますことを意味している。

【電力料金値上げ騒動】



全国の電力会社とガス会社は、原油や天然ガスの価格上昇に伴い7月の料金を引き上げるとい
う。東京電力は「標準家庭」(月290kW時)で90円上がり、7,063円になる。7千円を超えるの
は2009年4月以来、約3年ぶり。関西電力は6,808円(前月比39円増)、東京ガスは5,461円(
同47円増)、大阪ガスは6,095円(同42円増)。ただし、7月の料金算定に使うのは2~4月の
輸入価格ということだ。このことは、福島第一原発事後発生時からわかっていたことだが、
最新鋭からポンコツ欠陥原発までの停止・廃棄、そして、核燃料処分システム建設と処分費用
がのしかかる上、再稼働するにしてもその新体制でのリスク分散費の見積もりがどの程度にな
のかさっぱりわからない、当事者もわからない値上げ提案だろうから、本当にザックリした
値段になるのは仕方ないが、疲れて鬱ぎがちなのに滅入るね。

コメント
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