つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

スィーツの尺度

2011-06-11 03:36:59 | 食べ物
「会社の近くでおいしいケーキ屋さん知らない?」時折パートの女性たちに
聞いている。近所のおいしいケーキ屋さんが、店舗代えした後、どういうわけか
まったく美味しくなくなってしまったのである。

別にわたしはスィーツ大好きという程ではないが、たまには旨いケーキが
食べたいだけなのである。女性はすべからく甘いものが好きだという固定観念が
あって、当然知っているものと思って手当たりしだいに聞いていたのだが、
以外にも知らない人が多いのに驚いた。

それでも、やはり好きな人は居て、「あそこのSケーキは苺がいっぱい入っている
ので買っている」とか、「あの通りのナントカというケーキ屋さんは美味しいって
友人が言ってた」とかの情報が集まってくる。

わたしは一軒一軒当たってみた。当たってみると言っても、そこへ行ってやみくもに
買ってくるわけではない。店に行くと、まず、じっくりケーキを見るのだ。
あの造形美はパティシエの作りだすアートそのものだと思っているので、一通り
観賞するのである。その後、シュークリームを一つ頼むのだ。

むさいオヤジが、腕組みしたり、顎に手を当てて長々と眺め回ったのち、
シュークリーム一つである。胡散くささは免れないでありましょう。

中には妙齢な店員さんに露骨にイヤな顔をされることもある。しかしながら
これも店の品定めの一つなので、素知らぬ顔で受け流している。

そんな折、ちょうど会社帰りの道すがらに、評判のいい店があると聞き込み、
早速会社帰りに寄ってみた。
こじんまりした和風のケーキ屋さんである。すでに先客が数人居て、ケーキを
購入していく。先客が帰った後、わたしは例のごとく、まじまじ、長々と見て回り、
「シュークリーム一つください」と言ったのだった。

中年のママさんが一人微笑を浮かべつつ、「わかりました」と言って
店長の似顔絵らしきかわいいイラスト入りの紙袋に丁寧に包んでくれた。
その微笑は見事に「胡散くさいオヤジ…」という懸念の欠けらも見せることはなかった。

そのとき、白いパティシエ服を着た、恐らく店長と思われる男の人が奥から現われ、
チラとわたしを見ると「いらっしゃい」と一言声を掛けて、そのままカウンターの
中を通り過ぎて行った。紙袋のイラスト顔がそっくりで思わずニンマリしてしまう。

わたしは勝手にシュークリームのおいしい店のケーキはおいしいに違いない
と思っているのだ。だから最初に行く店では、こうやってシュークリームを買ってきて
一家みんなで「試し食い」と称しては割って食べるのである。
おいしいとなれば、初めてケーキを一家分買いに行くのだ。

この前食べたシュークリームがなかなか旨くて、家族の評判も上々だったので、
再び、そのこじんまりした店へと行ってみた。そして一家分ケーキを買い揃え、
店長の顔のイラスト入り紙袋に詰めて会計をしていると、また店長が顔をのぞかせ、
チラとこちらを見ると、ちょっと微笑んで「ありがとうございます」と言うと、
またカウンターをよぎって行った。どうやら前にシュークリーム一コを買っていった
胡散くさいオヤジを覚えていたようなのだ。わたしは苦笑いしつつ店を後にした。

やはり、ケーキはなかなか旨かった。まだまだ品数はあったので、次はどれにしようかと
早くも舌舐めずりしているのである…。




コメント
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