お絵描き部屋があって、そこでもっぱら
絵を描いている。
絵の具を筆で水に溶いていると、突然小バエが
一匹飛んできて、何を思ったかその水溶き絵の具の
中へポチャンとはまり、泳いでいるではないか。
飛んで火ならぬ水に入る虫だ、筆でグッと
押さえて、沈没の刑に処した。
筆先にすくいあげて筆拭きのティシュの上に
放置した。
ヤレヤレと絵を描き始めると、な何と溺れ死んで
いたはずの小バエがフッと飛び立ったではないか。
追撃しようと椅子から腰を浮かせたが、ままよ
我が必殺の筆の一撃で死ななかった命だ…と
その強運に敬意を表し、このお絵描き部屋での
生存を許可することにした。
というわけで、今一匹の小バエと部屋を共有
しているのです。
ヤツは、性懲りもなく時折絵皿の縁に留まって
水に溶いた絵の具を眺めております。