「茶房じゅん」での展示期間は、7/7~7/18水・木(休)なので、
正味10日間である。例の値段を付けてみた一作に、金額を書いて
一緒に展示することにした。
しかし自分の絵に値段を付けるというのは、やっぱりどうも
落ち着かない。「高あ~」「強気~」と身内が言うように、
私が付けた値段は高いらしい。
なにせ初めてなので、相場だとか皆目わからないのと、
これを必死で「売るんだ!」という気力が弱いため、頭に浮かんだ
値段を、天の啓示と、付けたのである。
それと、前回の「ギャラリー」で、絵がほしいのでポストカード
みたいなのはないのか、という意見を幾つか聞いたので、
カードを作ることにしたが、印刷を頼んだりするのも大変そうで、
どうしようかと、ママに相談したら、「うちのお客さんはこんなんで
作っているよ」と見せてくれたのは、パソコンで印刷したものだった。
「ああこれならうちでも出来る」と急に気が楽になった。
それと自分の作品の中で、どの作品が好評なのか、アンケート的にも
知りたかったので、一枚ずつ作品別に刷ってパッケージして持っていった。
翌日仕事から帰ってくると、身内が、「ママから電話があってポストカード
もう、一枚しか残っていないので追加で刷って持ってきてほしいそうよ」
「え、早っ」9枚刷ってあったのだ。「それから猫ちゃんのと、この指止まれ、
が三枚予約が入ってるんだって」「は~」そうかその二枚が人気あるのか…
私は早速翌日持って行くことにしたが、こうなると残っているという一枚が
気になった。作品はみんな自分の子供のようなものなので、かわいそうに
なったのである。結局今度は29枚も刷って持って行った。
あったあった、なんとあわれに残っていたのは、もう一枚の猫ちゃんだったのだ。
私の作品には猫が登場するのが何枚かあるのだが、今回は一作品だけを展示
していて、残っていたのは展示していなかった作品なのだ。
「ウ~ム…そのせいだけとも、思えないが…」
人気という不思議なものに、考えこんでしまった。
その後、もう一つの猫ちゃんの追加を10枚刷っていったが、
またたく間に売れてしまい、圧倒的人気だった。
ホッとしたのは売れ残っていたもう一つの猫ちゃんが、
4枚刷っていって全部売れたことだった。
今回ポストカードという初めての試みが、大変好評だったので、うれしい限り
なのだが、一番感じたのはこの「茶房じゅん」の力みたいなものだった。
もちろんお客の多さもだが、その質である。お客は、入って来るなり
「ジーっ」と、展示している作品を見ていくのである。
そして、しばしお茶を飲み始めたかと思うと、また「ジ~っ」と一巡り
するのである。ついでに見られるのに慣れてた私は、驚きとともに
緊張したのである。しかしこれは展示している者にとっては最高に
幸せなことなのだった。
さてあの値段を付けた作品だが、見事に売れませんでした。
「ほしいっていう人がいたんだけど、値段が、
自分ではちょっと…と言ってらして」とママ。
そうか一応欲しいという人は居てくれたんだ…。
私はそれを聞けただけで、けっこう満足感を覚えたのだった。
そして展示も無事終わり、搬出のため絵を仕舞っていると、
「あの絵をほしいって言ってた人又来てねえ、
この字どう読むのか聞いてたんだけど、」とママが言うのは、
「シマアジの残像波の打ち均す」の「均す」ならす、である。
そうかまた来て見てくれたのか…。この作品、私は苦労して描いたのだが、
身内に不評で、未発表のあわれな作品なのである。
しかしこの作品の波の絵は、私の作品の中でもかなり上位に来る
いい絵だと思っていたので、大げさに言えば、世に問うために
値段を付けたのである。値段を付けた以上手放すのは覚悟しているので、
私に言ってもらえば、いくらでも相談にのりますデス、ハイ。
手放す作品にとって一番幸せなのは、欲しいと、強く思われているところに
行くことなのだから…。というわけで
「茶房じゅん」での展示は大いなる成果のもとに、終了したのだった。