再びカメラマンのKさんと呑んだ。それも我が地元近くでだ。
今まで、わたしの地元で呑んだことはなかったのだが、最も近い私鉄で二駅の所に
魚のおいしい店があるというので、予約を入れているとのこと。
聞けば、彼の実家はこの駅に近いとこなので、そこで以前呑んだことがあって
なかなかの人気店だという。それは楽しみだと駅で落ち合い、店へと向かった。
「あの店ですよ」Kさんの指差す方は、以前友人のF氏と一度呑んだことのある
店ではないか。和風の飲み屋さんで、男女が気楽に呑めるところだ。F氏と来た時は
飲み会の流れで来た二軒目の店である。その時はあまり印象深くなかったのだ。
店に入ると、すでにお客は満杯状態で、直前の客は二階へと上がって行く。
予約のカウンター席へ座ると、すぐにイワシの煮物のお通しが置かれ、目の前には
ズラリと焼酎、日本酒の各銘柄の瓶が並んでいる。Kさんの大好きな純米酒の
銘柄もある。取り合えず生ビールにて乾杯し、二番手からは純米酒を頼んだ。
深めの皿の上にグラスが置かれ、瓶からなみなみとつがれていく…。溢れた純米酒が
深皿にたっぷりと溜まる。これが純米酒独特の入れ方であり、嬉しさなのだ。
わたしもKさんに負けず劣らずの純米酒ファンなので、二人して純米酒を呑み始める。
黒板に描かれたメニューを見ると美味しそうな魚の名前が並んでいる。目移りしつつ、
カツオのタタキ・タコ刺し・カンパチの刺身、と次々に頼んでいく。
魚は新鮮で皆うまい。きょうは給料日でもあり、呑み代はタップリ引き出して
あったのだ。
呑み進むうちにKさんが、「どうもそのKさんという呼び方何とかなりませんかねえ」
と言うのである。「さん」と呼ばれるのが他人行儀に聞こえるらしいのである。
ウ~ムさりとて、Kちゃんというのも何だかなあ…と考えあぐねていると、「以前
Kやんと呼ばれていたことがあるんですよ」と言うので、「Kやん!」と呼んでみる。
「ン…いいですね」と言うので、これからKやんと呼ぶことにした。
わたしは、彼に「イッちゃん」と呼ばれている。所属する同好のクラブでのわたしの
プロフィール名なのだ。彼も違うプロフィール名を持っているのだが、わたしは
本名の「Kさん」と呼んでいたのである。
うまい純米酒はのど越しがよく、いろいろな銘柄を頼んで飲み比べていくうちに
したたかに酔ってきた。Kやんが二重三重に見える。おかしいなあ…この前呑んだとき
より量的には少ないはず…だが…。と思いつつトイレに立とうとしたが、足元が
ふらついておぼつかない。思っている以上に酔っぱらっているではないか。
そう気づいたとき、胃袋からこみ上げるものがあり、思わずトイレにてあげて
しまったのだ。「ああ、カツオが…タコ刺しが…」この期に及んでの意地汚さが顔を
出す。呑んであげるなどというのは、ホントに何十年かぶりである。
トイレのドアがたたかれ、「イッちゃん!大丈夫!」Kやんの声が遠くに聞こえた
気がした…。
後でKやんに聞くと量的にはさほどではなかったものの、ピッチが早くて
心配していたとのこと。Kやんに送られ、タクシーで帰還したが、みっともない
呑み方をKやんにさらしてしまったなあ…と反省したのだった。
Kやん!面目次第もございませんでした。これに懲りず、またやりましょう。
しかし、“Kやん”か…。彼に関西の雰囲気を感じないので、なーんかもう一つ
しっくり「やん」と呼びにくいヤンかいさ。(笑)
Kさんでそんなに他人行儀かなあ…Kさん。