
2012/07/04
ぽかぽか春庭ブックスタンド>2012年3月~6月のブックスタンド(2)栞子さん
私はベストセラーというのを、売れてる最中に読んだことがない。ベストセラーになる前に知って読むか、はやりが終わって100円本になってから読むってことはあるけれど。
その、めったにない、売れているのに買ってしまった本が、文庫ベストテンのうち、4位になった三上延『ビブリア古書堂の事件手帖1、2』 (メディアワークス文庫)
図書館への「新刊書予約受付」にちょっと出遅れてしまった。「予約者がすでに100人もいる」とレファレンス係に聞いて「あら~、そんなにいるんじゃ、借りられるのは、ずっと先になりそうですね」と言いました。そしたら、係員は「文庫本なんだから、早く読みたいなら、自分で買えば?」と、言いました。ムカっときました。確かに、文庫1冊580円、1巻2巻を同時に買っても、千円ちょっとの値段です。区の職員として年収ウン百万円を得ている「安定した公務員」から見れば、千円の本代をケチっているように見えたのは仕方がないことなのでしょう。でも、それって、区の公務員である図書館員が言うべきことば?
図書館員のなかには、本好きもいますけれど、それはパートタイムの職員のことが多い。区の公務員が図書館に配属される職員は、定期異動でくるくる変わる。レファレンスの椅子に座っていたのは、「こんな図書館の仕事を早く卒業して、区役所の出世コースへ戻りたい」という顔をしたおっさんでした。千円の本を買うのに、今夜のオカズ代との兼ね合いを考えるオバハンは、いじましくみえたことでしょう。
1巻2巻を買って、新刊をひとりで読むのはもったいないから、娘と息子にも「読め」と強制しました。ははは、やっぱりイジマしいな、私。

ナンシー関は、没後10年。39歳での死は、なんとしても惜しかった。ほとんどのコラム集は読んできたけれど、没後の編集というのもあるので、ブックオフなどで、目についたら、買う。私は百円本しか買わないけれど、娘は300円のも買ってくるので、私とは違う種類を買ってくる。「読んじゃったから、あげる」と、娘からまわってくる。それで、読んでみると、編集をちょっと違えただけのものも多い。たとえば、『何を根拠に』は、以前読んだ角川文庫の『何様のつもり』で読んだのと重なっている。しかし、2度読んでも面白い。笑える。批評コラムというのは、こういう批評精神を言うのだ、と、笑いながら思う。

米原万里も早世した。おもしろさはナンシー関とは異なるけれど、笑いながら読む。幸田文の『雀の手帖』、文庫が出たのは1997年だが、初出は、1959年の新聞連載。皇太子ご成婚(現・天皇と皇后)への祝意などが書き綴られており、それこそ「三丁目の夕陽」時代の東京の雰囲気が濃い。文章のうまさは抜群だけれど、明治の語彙を露伴からたたき込まれた人の文の中に、私の知らない語を見つけるのが楽しい。

林望は、書誌学専門家をやめてから、源氏物語の新訳を出したり、文学づいていることは知っていたけれど、小説も出していたこと知らなかった。絵画をモチーフにした作品、なかなかよかった。

辺見庸の『記憶と沈黙』は、新たに「辺見庸コレクション」と再編集されたもので、ほとんどは前に読んだものだったけれど、68歳の身にいくつもの病気を抱えて、それでも書かずにはいない魂の迫力を感じる。好き!

秋山豊寛『原発難民日記』、被災者の生の声。日本人で最初に宇宙を見た元ジャーナリスト、今、農民の秋山さん。めぐまれた立場にいることは承知で、原発汚染地域から逐われた農民の闘いを伝えています。
磯貝勝太郎『司馬遼太郎の幻想ロマン』、この新書を読むと、司馬の『ペルシャの幻術師』などを読み返したくなった。書評というのは、そうあるべき。読んでいない人には、ぜひ読まなくちゃ、と思わせ、読んだ人には「もう一度読みたい」と思わせる。

雑誌掲載時には記録せず、単行本文庫本で読んだものだけを記録しておく方針だけれど、吉井磨弥『ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ』@市川森一『バースデーカード』は、この先、単行本になるかどうかわからないから、ちょっとメモ。出稿先の講師室においてあったのを、仕事が終わってからちょこっと読んだ。
柄谷行人『日本精神分析』も、最初に雑誌に掲載されたときコピーをとって読み、なんどか必要があって再読してきたのだけれど、単行本になってから雑誌に載っていなかった部分も含めて読んでいなかったので、今回やっと全体を読むことができた。
この春休みから夏休み前までの読書、そうたくさんは読む時間がとれなかった。車内読書が唯一の読書タイムなのに、電車爆睡ってのが多かったから。それにしても、電車内で文庫を広げている人がまだまだいます。しかし、向かい側の座席、7人中5人はケータイでメールやネットゲーム。この前は、隣の人、アイパッドで株価をチェックしていました。私は当分、車中では電子ブックではなく、百円文庫を広げることにします。数ページ読むと寝てしまうことが多いけれど。
夏休み中は、電車に乗らない分、読書時間が減る傾向にあるけれど、ツンドク本が山積みになっている。山高きが故に貴からず。
<おわり>