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2012/07/21
ぽかぽか春庭日常茶飯辞典>十二単日記201207老いの小文(3)老いの美学・日本語の美
怒鳴門さんが長年住んできた住まいは、北区西ヶ原にあります。1974年から40年近く住むこの部屋の一番いいところは、窓から旧古河庭園の緑が見下ろせること。
2008年に日本国文化勲章を受けた怒鳴門さん。その2年前、2006年に名誉北区民になっています。名誉区民受諾の記念講演で、冗談ですが、「北区のためなら死んでもいい」と発言したそうです。
2011年までの名はDonald・ Lawrence・Keene。2012年3月8日、法務省は、アメリカ人Donald・ L・Keeneさんが、日本国籍を取得し「キーン・ドナルド」となった、と発表しました。
キーンさんは、学生時代に『源氏物語』英語翻訳に触れて日本文化に興味を持ち、太平洋戦争中に「日本語翻訳通訳をこなす将校」として日本語を習得しました。日本文学日本文化研究を続けてきたキーンさん。コロンビア大学で長年教鞭をとり、「日本学」の研究者を育ててきました。昨年4月に退官し、現在は名誉教授です。日本で生まれ育った人よりも日本文化に造詣深く、多くの著作で西欧社会に日本文化日本文学の紹介を続けてきました。
若かりし日のドナルド・キーン「青い眼の太郎冠者」
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名前を漢字表記する時は、鬼怒鳴門にするそうで、これは愛して止まない地名、鬼怒川と鳴門を合成して作った「雅号」だそうです。
ご本人は「人を笑わせるときに使う」と話していますが、この「鬼怒鳴門」という漢字の組み合わせ、「暴走族が背中に刺繍を入れるような字面」として、ネットで話題になりました。「夜露死苦よろしく」と同じような発想と思われたのです。古事記、万葉集、源氏物語、方丈記などを深く研究してきた先生ですから、万葉仮名、変体仮名、漢詩までたくさんの字を知った上でのこの漢字選択。いやあ、ジャパノロジー、奥が深い。日本研究、どこまで行っても奥の細道。
4月に、北区の赤レンガ図書館を紹介しましたが、2008年の図書館オープンとともに「名誉区民ドナルドキーン文庫」が設立され、今回の国籍取得で、この文庫をさらに充実させていくそうです。
キーンさんの著作、全部ではありませんが、興味の持てる本は読んできました。一番好きな著作は『百代の過客』1884朝日選書です。最近は『日本語の美』を再読しました。キーンさんが英語で書き、翻訳者が日本語にした著作が多い中、『日本語の美』は、キーンさんが自分自身で最初から日本語で書いたエッセイです。研究論文とはことなる気軽な随筆ですが、日本文学を長年研究した中からこぼれ出てくる日本語への愛が感じられます。
日本国籍取得が発表されて以来、北区の住まいに腰を落ち着かせるヒマもないくらい、全国で講演活動を行っているキーンさん。専門の日本文学に関してだけでなく、国際交流であるとか、歴史だとか、ちょっとでも関わりがありそうなテーマで、なんとかキーンさんを講演者として招きたい団体やら大学がひきもきらず、全部をこなしていたら、大好きな和食をゆっくり食べている間もないのではないかと心配になります。
なにせ1922年生まれ。今年6月10日には満90歳。
日本人ドナルドキーンさん、これからもお元気で活躍されますように。
旧古河庭園での鬼怒鳴門近影(飛鳥山博物館「ドナルドキーン展」チラシ)
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<つづく>