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ぽかぽか春庭「ベクション」

2015-06-18 00:00:01 | エッセイ、コラム
20150618
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ことばの知恵の輪(1)ベクション

 はじめて見聞きした語や、それまで誤解していた言葉の本来の意味がやっとわかったとき、できるだけメモしようと思っていたのに、このところサボっていました。新しく覚えた言葉も多々あったけれど、覚えるはしから忘れていくのもあるし、何を覚えたのか、書き留めないうちに、ずっと前から知っていたような顔をして使うようになったりしています。
 2015年5月に知った、新しい言葉、書き留めておきます

 ある物や、ある現象を目で知り身体で感じていても、その名前を知らない、というとき、その名前を知ると、「ああ、そうだったのか」と腑に落ちます。

 たとえば、荷物を送ったり受け取ったりするとき、割れ物などを包んでおく、気泡が入ったビニールの包み。包みから荷物を出したあとは、たいてい空気の入っているところをプチプチとつぶして遊ぶ、あれです。「エアパッキン」「エアクッション」という商品名を知ったときも「気泡緩衝材」という正式っぽい名前を知ったときも「へぇ、なるほど、そういう名前だったのか」と、納得しました。

 今回知ったのは、脳の知覚や心理学などの専門用語です。専門用語だから、一般には知られていないことばなのですが、それが表している現象については、だれでも経験している。
 止まっている電車に乗っていて、まだ発車していないとき、隣のホームの電車が動き出したとき、自分の方が動き出したのだと錯覚することが、あります。
 
 子どものとき、水路にかかる橋の上にいて、水路の水を眺めていると、いつのまにか橋が動き出し、遠くとおく旅することができました。ふっと水を見るのをやめて、周りの景色を眺めると元いた場所なのですが、水を眺め続けている限りは、どこまでも橋は動き続けていたのです。

 こういう現象を、専門用語では「視覚誘導性自己運動知覚」英語では「ベクションVection」と言うのだと、知りました。おお、子どものころのあの橋の旅行は、ベクションがなせる旅だったのか。

 自分ではなく、周囲が動いているのに、自分自身が動いているように感じる、こういう脳の働きをベクションと言う。最近では、運転シュミレーションとかパイロット養成のシュミレーション訓練にも取り入れられています。もっと身近な例でいうと、遊園地などにも、アミューズメントアトラクションとして取り入れられています。椅子に座って映像を見ているだけで、宇宙旅行やジャングル奥深くを探検できるアトラクションです。

 目から入る錯覚の現象や耳による錯聴など、人間の目や耳はとても簡単にだまされます。これは、人の脳の働きによるのです。

 私にとっての「新しく知ることば」
 新聞からは、新しいカタカナの言葉を仕入れるし、明治大正昭和前期の著作物からは、漢字の言葉を知ることができます。学生からは「若者ことば」を仕入れます。
 ベクションは、「キワミコトノハ」という専門用語を取り上げる番組で知りました。

 そのほか、去年あたりから大いに人の口に昇るようになったことば「爆買」とかいろいろありますが、「周辺事態」だとか、「重要影響事態」だとか、さっぱり理解できないことばもあふれてきました。「意味ワカンナ~イ」と、理解できないうちに、とんでもないことになってしまうのかも知れず、言葉には鋭敏でいたいと願っているのに、この私の脳では把握消化できないうちに、自分ではとどまっているのだと錯覚しているうちに、どこやらに運ばれていくのかも知れない、と警戒しています。

 なにしろ、人の脳は、自分の周りが動いているのを見つめていると、自分が運動しているという錯覚に陥るくらいヤワな脳なのですから。
 平和な世にするためなんだよ、と言われているうちに、脳は「武器をとることが平和を守ることなんだ」と知覚するようになるのかもしれません。

<つづく>
コメント (8)
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