20150620
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ことばの知恵の輪(2)ドローン&囲い
2015年5月に新聞テレビを賑わしたことばのひとつが「ドローン」です。
15才の少年が人混みにドローンを飛ばして「祭り警備への威力業務妨害」なんぞで補導され、物議をかもしました。
ドローンは少し前から話題に上っていました。もともとは軍事用偵察機として開発されたようですが、私がこの「自動操縦小型ヘリコプター」の民間活用を知ったのは、小笠原諸島西之島が噴火して、島の形がどんどん変わっていくころでした。人が近づけない島に、この「ビデオカメラ付き自動操縦小型ヘリコプター」を飛ばし、島の貴重な固有生物などがどうなっているのか調査した番組を見たときでした。2013年ですから、それほど昔のことではないですが、それ以来、あっという間の「ドローン」の浸透でした。
あれよあれよと言うまに、この小型ヘリコプター「ドローン」という名が社会に広まり、「ドローンによる宅配サービス」などが話題になりました。
一般の人が買える価格になった現在、ドローンの使用についての社会合意がなされる前に、「首相官邸屋上への着陸」「15才の少年によるドローン飛行操作」が「悪徳」として話題になったのです。早速規制案が出てきました。
これらの事件は、「ドローン」という「物」「機械」の存在を世に広めましたが、私が新しく知ったことばは、「囲い」という「人」「現象」についてです。
15才の少年が、学校に行くことを拒否し、自分の枠の中だけで生きている。そのこと自体は、彼の選択なのだから、少年とその家族にまかせるべきだろう。しかしこの事件には「囲い」と呼ばれている一群の人々がいて、少年はこの「囲い」の人々に「囲われて」いたのです。
ネット社会で「囲い」と呼ばれる人々。最初は、「ニコニコ動画の生中継コンテンツを応援する人」「おもしろい生中継動画のファン」でした。
ニコ動による「囲い」「囲い厨」の解説では。
ファンと囲いという用語について。「囲い厨」は元来、出会い目的の者を指す語だったが転じてファンであるリスナーが自ら名乗る、または(生)放送主がファンに囲われることを歓迎するケースがある。これらの場合、リアルで接近することを目的とした出会い厨としての囲いでなく、ネット上に限られた配信者とファンという関係を保つために、配信者が放送中に嫌悪感を抱くなどして放送を辞めてしまったり、ファンリスナーが離れることを回避する必要性が生じ、その配信者や自分以外のファンリスナーを擁護するなどして放送をサポートする。この種類のファンによる行為も囲いと呼ばれることがある。
単なるファンの応援コメント書き込みからエスカレートして「あおり」や「やらせ」まで行き着くまで、あっという間のできごと。
ドローン少年にも特定の「囲い」ができました。囲いたちは少年をはやし立て、おだてあげるコメントを寄せる。少年は自分の行為を撮影して動画サイトに投稿することによって、ファンから誉められ社会から一定の認知を得られることを感じるようになりました。
少年がドローンを購入したり、映像を作ったりする資金を与える囲いが現れます。少年はより上位の機種を買い、囲いたちのあおりに乗せられていく。
囲いたちは、ある程度の金額を提供することにより、自分はなにひとつ手をくださずに、他の人物に「突出したできごと」を行わせ、おもしろがったりスリルを味わうことができます。
一連のドローン動画は、まだ自己判断力、自己決定の力が弱い少年に対して、囲いの大人たちが資金援助することによってエスカレートしていった、と言えます。
ネット社会では、従来の人間関係とは異なるつながりが生まれてきます。生動画の放送主と「囲い」の関係は、事業主とクラウドファンディング(Crowdfunding)と相似形です。
群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語「クラウドファンディング」は、不特定多数の人が、直接に、またインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味します。ソーシャルファンディングとも呼ばれ、ある事業に投資する資金提供者は、その事業に魅力を感じることによってお金を投じます。
自分が魅力を感じた動画生放送に、資金を提供することも、提供者は「趣味を楽しむ」のと同じようにお金を出したのでしょう。
5月のドローン事件では、生放送主となったのが15才の少年であったため、問題となりました。
働いているコンビニストアの冷蔵ケースの中に横たわる映像をyoutubeにアップした男性は「馬鹿なやつ」とは思いますが、22才でした。コンビニの本部は、フランチャイズのこの店との契約を解除。店の経営者にとっては、大きな損害が生じる事件になりましたが、損害賠償などは本人の責任において行われるでしょう。
15才少年の将来、どうなってしまうのかを案じています。
手を下さずにスリルが味わいたい「囲い」にひとこと。「動画投稿者は匿名であるため、年齢がわからなかった」という言い訳はするな。いまどき、名を知らぬ年も知らない相手に資金援助として金を出すなら、被提供者に代わって責任をとるくらいの覚悟を持って「囲い」をやってほしい。
<つづく>
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ことばの知恵の輪(2)ドローン&囲い
2015年5月に新聞テレビを賑わしたことばのひとつが「ドローン」です。
15才の少年が人混みにドローンを飛ばして「祭り警備への威力業務妨害」なんぞで補導され、物議をかもしました。
ドローンは少し前から話題に上っていました。もともとは軍事用偵察機として開発されたようですが、私がこの「自動操縦小型ヘリコプター」の民間活用を知ったのは、小笠原諸島西之島が噴火して、島の形がどんどん変わっていくころでした。人が近づけない島に、この「ビデオカメラ付き自動操縦小型ヘリコプター」を飛ばし、島の貴重な固有生物などがどうなっているのか調査した番組を見たときでした。2013年ですから、それほど昔のことではないですが、それ以来、あっという間の「ドローン」の浸透でした。
あれよあれよと言うまに、この小型ヘリコプター「ドローン」という名が社会に広まり、「ドローンによる宅配サービス」などが話題になりました。
一般の人が買える価格になった現在、ドローンの使用についての社会合意がなされる前に、「首相官邸屋上への着陸」「15才の少年によるドローン飛行操作」が「悪徳」として話題になったのです。早速規制案が出てきました。
これらの事件は、「ドローン」という「物」「機械」の存在を世に広めましたが、私が新しく知ったことばは、「囲い」という「人」「現象」についてです。
15才の少年が、学校に行くことを拒否し、自分の枠の中だけで生きている。そのこと自体は、彼の選択なのだから、少年とその家族にまかせるべきだろう。しかしこの事件には「囲い」と呼ばれている一群の人々がいて、少年はこの「囲い」の人々に「囲われて」いたのです。
ネット社会で「囲い」と呼ばれる人々。最初は、「ニコニコ動画の生中継コンテンツを応援する人」「おもしろい生中継動画のファン」でした。
ニコ動による「囲い」「囲い厨」の解説では。
ファンと囲いという用語について。「囲い厨」は元来、出会い目的の者を指す語だったが転じてファンであるリスナーが自ら名乗る、または(生)放送主がファンに囲われることを歓迎するケースがある。これらの場合、リアルで接近することを目的とした出会い厨としての囲いでなく、ネット上に限られた配信者とファンという関係を保つために、配信者が放送中に嫌悪感を抱くなどして放送を辞めてしまったり、ファンリスナーが離れることを回避する必要性が生じ、その配信者や自分以外のファンリスナーを擁護するなどして放送をサポートする。この種類のファンによる行為も囲いと呼ばれることがある。
単なるファンの応援コメント書き込みからエスカレートして「あおり」や「やらせ」まで行き着くまで、あっという間のできごと。
ドローン少年にも特定の「囲い」ができました。囲いたちは少年をはやし立て、おだてあげるコメントを寄せる。少年は自分の行為を撮影して動画サイトに投稿することによって、ファンから誉められ社会から一定の認知を得られることを感じるようになりました。
少年がドローンを購入したり、映像を作ったりする資金を与える囲いが現れます。少年はより上位の機種を買い、囲いたちのあおりに乗せられていく。
囲いたちは、ある程度の金額を提供することにより、自分はなにひとつ手をくださずに、他の人物に「突出したできごと」を行わせ、おもしろがったりスリルを味わうことができます。
一連のドローン動画は、まだ自己判断力、自己決定の力が弱い少年に対して、囲いの大人たちが資金援助することによってエスカレートしていった、と言えます。
ネット社会では、従来の人間関係とは異なるつながりが生まれてきます。生動画の放送主と「囲い」の関係は、事業主とクラウドファンディング(Crowdfunding)と相似形です。
群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語「クラウドファンディング」は、不特定多数の人が、直接に、またインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味します。ソーシャルファンディングとも呼ばれ、ある事業に投資する資金提供者は、その事業に魅力を感じることによってお金を投じます。
自分が魅力を感じた動画生放送に、資金を提供することも、提供者は「趣味を楽しむ」のと同じようにお金を出したのでしょう。
5月のドローン事件では、生放送主となったのが15才の少年であったため、問題となりました。
働いているコンビニストアの冷蔵ケースの中に横たわる映像をyoutubeにアップした男性は「馬鹿なやつ」とは思いますが、22才でした。コンビニの本部は、フランチャイズのこの店との契約を解除。店の経営者にとっては、大きな損害が生じる事件になりましたが、損害賠償などは本人の責任において行われるでしょう。
15才少年の将来、どうなってしまうのかを案じています。
手を下さずにスリルが味わいたい「囲い」にひとこと。「動画投稿者は匿名であるため、年齢がわからなかった」という言い訳はするな。いまどき、名を知らぬ年も知らない相手に資金援助として金を出すなら、被提供者に代わって責任をとるくらいの覚悟を持って「囲い」をやってほしい。
<つづく>