20170421
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日記>2017年4月スタート(2)日本語の大きさ
新しく出講することになった大学の留学生、中国、韓国、台湾、サウジアラビアからです。
2000年から出講している大学の日本人学生に教えてきた日本語教育学概論。毎年のはじめにする「世界の国からこんにちは」というクイズ。
1,日本語はマイナー言語ですか、メジャー言語ですか、どちらと思いますか。メジャー言語とはどれとどれですか。
最初の挙手では、受講生15人のうち、日本語をメジャー言語と思った学生はひとりでした。
ヒントとして次の三つのクイズに数字を出して応える。
(1)世界に国はいくつぐらいありますか。
(2)世界に言語はいくつくらいありますか。
(3)国連公用語とは、いくつあり、何語ですか。
世界に国がいくつあるか、知っている国を具体的に出しながら、数えてもらいます。
自分が知っている国、アメリカ、イギリス、フランス、中国、、、、、など、数えてもらうと、学生の答えは、「50くらい」「100くらい」「200くらい」など、さまざま。正解は、約200です。
日本が国連加盟国として承認している国数は195で、日本を加えると196。国連に加盟していないバチカン市国、北朝鮮なども加えて、約200です。
日本語最近、国連加盟国として承認した国。2011年7月に南スーダンを承認し、2011年3月クック諸島を承認しました。
南スーダンは、自衛隊の派遣でニュースになった国ですから知っていましたけれど、クック諸島が独立国として国連に加盟していたことなど、知らないですごしてきました。
クック諸島という名は、キャプテンクックにちなんで名付けられたことくらいしか知りませんし、日本が2015年に承認したニウエという国に至っては、世界の国について注意を払っているつもりの私も、「それって、いったいどこにあるの」と、思いました。
ニュージーランドの「自由連合国」であり、元首はエリザベス二世。サモアやトンガが「ご近所の国」に当たる、南太平洋の島です。人口は2000人ほど。西サモアからの留学生に出会ったことのある私も、ニウエとはとんとご縁がありませんでした。
クイズ(2)の、言語数。この国の数から推察して、世界に言語はいくつくらいありますか。
学生の答えは、約100という少数を出す学生から、1万という多数を出す学生までさまざま。200くらいの国の数だから、言語は200~500くらい、と数えた学生が多いです。
言語は、数え方によるけれど、世界には3000から7000くらいの言語があること、そのうちの約半数は、すでに家庭の中でその言語を話して育つ子供がいなくなっている絶滅危惧言語である、と教えます。たとえば、ネイティブアメリカンには多数の部族のことばがあったけれど、ほとんどの部族の子供が英語で育つようになっており、豊かな言語文化のほとんどが消えかかっている、という現実があります。メジャー言語によって暮らしたほうが、進学にも就職にも有利だからです。
国の数と言語の数が同じ、と思うのは、「日本国=日本語が使われてている地域」という「常識」が学生の頭にしっかり入っているからです。しかし、世界のほとんどの国は多数民族で構成されており、大学院教育までひとつの言語だけでまかなわれている国は、少数派で、アジアでは、日本、韓国くらいであることも伝えておきます。
また、国の名前=○○語ではない、ということもわかってもらう。スイスで話されているのはスイス語ではないし、ケニアで話されている言語はケニア語ではない。
(3)の国連公用語。国際関係論の授業などをとって、知識として知っている学生もいるけれど、一人一人に公用語を言ってもらうと、ドイツ語、イタリア語、韓国語など、自分にとって身近な国の言語が出てきます。
正解は、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語、アラビア語という6言語。このうちの5つは、第二次世界大戦の戦勝国、連合国側の言語です。
話者数の問題もあります。ほとんどの南アメリカ大陸の国ではスペイン語を公用語としている、などの事情、西アフリカの公用語の多くは、フランス語、などの事情があります。アラビア語はどうして国連公用語になれたか。むろん石油を握っているからです。
日本語は、ドイツイタリアと並んで、第二次世界大戦の枢軸国側すなわち敗戦国側であった、というと、学生のなかには、「え、日本って、負けた側ですか」と、のんきな者もいる。世界史や現代史を選択せず、高校では日本史を明治維新まで習っておわり、先生に「あとはほとんど入試に出ないから、ここまでを暗記しろ」と言われた学生。
ここで、もう一度挙手をしてもらうと、たった一人「日本語はメジャー言語」というほうに手をあげた学生も、「やっぱ、マイナーだな」となります。
そこで、つぎは、各国の公用語と母語の話。
インド国の公用語は、最大多数部族のことばであるヒンディ語と、歴史的に宗主国であった国の言語、英語が共通語として公用語になっています。しかし、州ごとに州の公用語があり。インドのお札には、15の言語でお札の値が記載されています。
ヒンディ語のほか、ベンガル語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、パンジャーブ語、アッサム語、カシミール語など300もの言語がひとつの国のなかでそれぞれの地方で話されています。
家庭のなかで養育者によって話され、子供が自然に習得する言語を「母語」と呼びます。母国語というと、スイス=スイス語のように思う学生も出てしまうから、国と言語をわけるために、母国語という言い方は、言語学では行いません。
母語として話される人数が多い順に言語を並べるランキング。
1 中国語(北京語・普通話)8億8500万人。上海語、広東語などの地方諸語を加えると13億人
2 英語 5億1000万人(アメリカ・イギリスで3億人他は2億人)
3 ヒンディー語 4億9000万人 (インド)
4 スペイン語 4億2000万人(スペイン王国の話者が4500万人。他は南アメリカ大陸の話者)
5 アラビア語 2億3000人
6 ベンガル語 2億2000人(インド)
7 ポルトガル語2億1500万(ポルトガル共和国の話者は1000万人。あとはブラジル)
8 ロシア語 1億8000万人
9 日本語 1億3400万
10 ドイツ語 1億3000万
11 フランス語 1億2300万(フランス国の話者6200万人)
国連公用語と、母語話者数の多さを比べると、その違いがでてきます。話者数が多いのに、ポルトガル語が国連公用語でないのは、ポルトガルは第二次世界大戦中の中立国であり、戦勝国ではないから。インドの公用語として英語があるから、母語話者の多いヒンディ語とベンガル語は、除外されてしまい、日本語とドイツ語は、敗戦国だから、母語話者が多くても、国連公用語にはならなかった。
以上、国連公用語とは何か、までふまえて解説すると、「日本語はマイナー言語」と思い込んでいた、学生も「あれ?」となります。話者数の多さから言うと、日本語は決してマイナーではなく、世界の中の大言語のほうです。
次に、英語を公用語共通語として採用している国の広がりを考えます。世界中で英語を公用語としている国連加盟国は、59カ国あります。
一方、日本語を公用語としている国は、世界中でゼロです。
あれ?日本は?
日本は、法律では公用語を定めていないのです。
ただし「裁判所法74条」により、「日本国の裁判所での使用言語は日本語」と定められており、国内の公立小中学校での教育用語が日本語なので、事実上の公用語は日本語です。
日本国以外で、日本語を公用語としている国はありません。わずかに、人口130人という、パラオ共和国アンガウル州(アンガウル島)での州公用語として正式に認められています。(アンガウル州憲法第12条第1項で公用語として定められている)
日本統治時代に日本語を覚えさせられた住民は、すでに亡くなっていて、現在は日本語を話して生活している人はいません。でも、パラオ語の中に、日本語由来の語が多数残存しています。
モシモシ、サムイネ、アチュイネ、ヨロシク、アリガトウ、ゴメンナサイ、マタアシタなどが、パラオ語の語彙として通用しているそうです。
ぜひ、現地に行って使って見たいというのが、長年の夢です。
以上から、学生たちが「日本語はマイナー言語」と思ったのは、英語のように世界に通用する言語ではない、という理由による、ということが、学生にも理解でき、ただし、話者数から言うと日本語は、世界でも10番目に話者数が多いメジャー言語だということがわかってきます。
そこから、日本語教育についての学びがはじまります。日本語について単純に「世界のなかではマイナー」と思い込んでいた学生に、世界の中では決して少数言語ではないのだけれど、話者は日本国内にとどまっていること、それでも現在、日本語を学ぼうとしている人は、世界に400万人もいることを知らせます。
<つづく>
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日記>2017年4月スタート(2)日本語の大きさ
新しく出講することになった大学の留学生、中国、韓国、台湾、サウジアラビアからです。
2000年から出講している大学の日本人学生に教えてきた日本語教育学概論。毎年のはじめにする「世界の国からこんにちは」というクイズ。
1,日本語はマイナー言語ですか、メジャー言語ですか、どちらと思いますか。メジャー言語とはどれとどれですか。
最初の挙手では、受講生15人のうち、日本語をメジャー言語と思った学生はひとりでした。
ヒントとして次の三つのクイズに数字を出して応える。
(1)世界に国はいくつぐらいありますか。
(2)世界に言語はいくつくらいありますか。
(3)国連公用語とは、いくつあり、何語ですか。
世界に国がいくつあるか、知っている国を具体的に出しながら、数えてもらいます。
自分が知っている国、アメリカ、イギリス、フランス、中国、、、、、など、数えてもらうと、学生の答えは、「50くらい」「100くらい」「200くらい」など、さまざま。正解は、約200です。
日本が国連加盟国として承認している国数は195で、日本を加えると196。国連に加盟していないバチカン市国、北朝鮮なども加えて、約200です。
日本語最近、国連加盟国として承認した国。2011年7月に南スーダンを承認し、2011年3月クック諸島を承認しました。
南スーダンは、自衛隊の派遣でニュースになった国ですから知っていましたけれど、クック諸島が独立国として国連に加盟していたことなど、知らないですごしてきました。
クック諸島という名は、キャプテンクックにちなんで名付けられたことくらいしか知りませんし、日本が2015年に承認したニウエという国に至っては、世界の国について注意を払っているつもりの私も、「それって、いったいどこにあるの」と、思いました。
ニュージーランドの「自由連合国」であり、元首はエリザベス二世。サモアやトンガが「ご近所の国」に当たる、南太平洋の島です。人口は2000人ほど。西サモアからの留学生に出会ったことのある私も、ニウエとはとんとご縁がありませんでした。
クイズ(2)の、言語数。この国の数から推察して、世界に言語はいくつくらいありますか。
学生の答えは、約100という少数を出す学生から、1万という多数を出す学生までさまざま。200くらいの国の数だから、言語は200~500くらい、と数えた学生が多いです。
言語は、数え方によるけれど、世界には3000から7000くらいの言語があること、そのうちの約半数は、すでに家庭の中でその言語を話して育つ子供がいなくなっている絶滅危惧言語である、と教えます。たとえば、ネイティブアメリカンには多数の部族のことばがあったけれど、ほとんどの部族の子供が英語で育つようになっており、豊かな言語文化のほとんどが消えかかっている、という現実があります。メジャー言語によって暮らしたほうが、進学にも就職にも有利だからです。
国の数と言語の数が同じ、と思うのは、「日本国=日本語が使われてている地域」という「常識」が学生の頭にしっかり入っているからです。しかし、世界のほとんどの国は多数民族で構成されており、大学院教育までひとつの言語だけでまかなわれている国は、少数派で、アジアでは、日本、韓国くらいであることも伝えておきます。
また、国の名前=○○語ではない、ということもわかってもらう。スイスで話されているのはスイス語ではないし、ケニアで話されている言語はケニア語ではない。
(3)の国連公用語。国際関係論の授業などをとって、知識として知っている学生もいるけれど、一人一人に公用語を言ってもらうと、ドイツ語、イタリア語、韓国語など、自分にとって身近な国の言語が出てきます。
正解は、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語、アラビア語という6言語。このうちの5つは、第二次世界大戦の戦勝国、連合国側の言語です。
話者数の問題もあります。ほとんどの南アメリカ大陸の国ではスペイン語を公用語としている、などの事情、西アフリカの公用語の多くは、フランス語、などの事情があります。アラビア語はどうして国連公用語になれたか。むろん石油を握っているからです。
日本語は、ドイツイタリアと並んで、第二次世界大戦の枢軸国側すなわち敗戦国側であった、というと、学生のなかには、「え、日本って、負けた側ですか」と、のんきな者もいる。世界史や現代史を選択せず、高校では日本史を明治維新まで習っておわり、先生に「あとはほとんど入試に出ないから、ここまでを暗記しろ」と言われた学生。
ここで、もう一度挙手をしてもらうと、たった一人「日本語はメジャー言語」というほうに手をあげた学生も、「やっぱ、マイナーだな」となります。
そこで、つぎは、各国の公用語と母語の話。
インド国の公用語は、最大多数部族のことばであるヒンディ語と、歴史的に宗主国であった国の言語、英語が共通語として公用語になっています。しかし、州ごとに州の公用語があり。インドのお札には、15の言語でお札の値が記載されています。
ヒンディ語のほか、ベンガル語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、パンジャーブ語、アッサム語、カシミール語など300もの言語がひとつの国のなかでそれぞれの地方で話されています。
家庭のなかで養育者によって話され、子供が自然に習得する言語を「母語」と呼びます。母国語というと、スイス=スイス語のように思う学生も出てしまうから、国と言語をわけるために、母国語という言い方は、言語学では行いません。
母語として話される人数が多い順に言語を並べるランキング。
1 中国語(北京語・普通話)8億8500万人。上海語、広東語などの地方諸語を加えると13億人
2 英語 5億1000万人(アメリカ・イギリスで3億人他は2億人)
3 ヒンディー語 4億9000万人 (インド)
4 スペイン語 4億2000万人(スペイン王国の話者が4500万人。他は南アメリカ大陸の話者)
5 アラビア語 2億3000人
6 ベンガル語 2億2000人(インド)
7 ポルトガル語2億1500万(ポルトガル共和国の話者は1000万人。あとはブラジル)
8 ロシア語 1億8000万人
9 日本語 1億3400万
10 ドイツ語 1億3000万
11 フランス語 1億2300万(フランス国の話者6200万人)
国連公用語と、母語話者数の多さを比べると、その違いがでてきます。話者数が多いのに、ポルトガル語が国連公用語でないのは、ポルトガルは第二次世界大戦中の中立国であり、戦勝国ではないから。インドの公用語として英語があるから、母語話者の多いヒンディ語とベンガル語は、除外されてしまい、日本語とドイツ語は、敗戦国だから、母語話者が多くても、国連公用語にはならなかった。
以上、国連公用語とは何か、までふまえて解説すると、「日本語はマイナー言語」と思い込んでいた、学生も「あれ?」となります。話者数の多さから言うと、日本語は決してマイナーではなく、世界の中の大言語のほうです。
次に、英語を公用語共通語として採用している国の広がりを考えます。世界中で英語を公用語としている国連加盟国は、59カ国あります。
一方、日本語を公用語としている国は、世界中でゼロです。
あれ?日本は?
日本は、法律では公用語を定めていないのです。
ただし「裁判所法74条」により、「日本国の裁判所での使用言語は日本語」と定められており、国内の公立小中学校での教育用語が日本語なので、事実上の公用語は日本語です。
日本国以外で、日本語を公用語としている国はありません。わずかに、人口130人という、パラオ共和国アンガウル州(アンガウル島)での州公用語として正式に認められています。(アンガウル州憲法第12条第1項で公用語として定められている)
日本統治時代に日本語を覚えさせられた住民は、すでに亡くなっていて、現在は日本語を話して生活している人はいません。でも、パラオ語の中に、日本語由来の語が多数残存しています。
モシモシ、サムイネ、アチュイネ、ヨロシク、アリガトウ、ゴメンナサイ、マタアシタなどが、パラオ語の語彙として通用しているそうです。
ぜひ、現地に行って使って見たいというのが、長年の夢です。
以上から、学生たちが「日本語はマイナー言語」と思ったのは、英語のように世界に通用する言語ではない、という理由による、ということが、学生にも理解でき、ただし、話者数から言うと日本語は、世界でも10番目に話者数が多いメジャー言語だということがわかってきます。
そこから、日本語教育についての学びがはじまります。日本語について単純に「世界のなかではマイナー」と思い込んでいた学生に、世界の中では決して少数言語ではないのだけれど、話者は日本国内にとどまっていること、それでも現在、日本語を学ぼうとしている人は、世界に400万人もいることを知らせます。
<つづく>