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ぽかぽか春庭「留学生からのメール日本語能力試験受験相談」

2020-01-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20200121
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録日本語教師日誌(12)留学生からのメール日本語能力試験受験相談

 春庭の日本語教師日誌を再録しています。
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2005/12/13 火
ニッポニアニッポン語教師日誌>学生からのメール(6)日本語能力試験対策

留学生ルーより第二信
 『 こんにちは、お忙しい中ご返事ありがとうございます。そして、文章の添削もありがとうございました。こちらの返事遅くなり、申し訳ございませんでした。

 はい、先生がおっしゃった通りに、一歩一歩、着実に頑張っていきます。現在、一番近いのは日本語検定試験ですから、ずっと前から語彙、文法、読解などの問題集をやっていますが、なかなか難しいと感じています。

 私は一般の留学生と違って、高一の時日本にやってきて、日本に来る前に、日本語を何一つも勉強したことがありませんでした。それで、日本語学校に入らずに、普通の高校に入学しました。ですから、私は正式の日本語を学んだことがありません。

 今、日本語に対して、一番弱いのは文法と読解です。今から一からやり直す時間もないのに、どうしたら(正:どうしても)少しでも把握したいです。もちろん、文法対策と読解対策の問題やリまくりです。
 うん~でも、そんなに効果がないと思いますね。先生、どうしたらいいですか。お願いします。 敬具 

教師から返信
 『 読解対策=とりあえず、一語でも多くの語彙を獲得すること。1級語彙問題に取り組む。

文法対策=過去問をして、間違っていたところについて、正解解説を読む。読んで意味が分らない部分、授業の休み時間4:15~4:25の間に、私に質問する。

 4:25~4:40を、「日本語能力試験に出る文法問題講座」として、解説します。ルーさんのためだけでなく、他の日本語教師をめざす学生の役にもたつことなので、質問どんどん持ってきて。どうぞ、ご遠慮無く。』
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 ルーさんの次のメールは、日本語能力試験1級問題に出題された「身体部位を含む慣用句の意味内容」を問う設問。正解を見れば、理解はできるが、なぜ、その答えになるのかわかっていないので、解説してほしいという。

 次の日本語教育研究の授業で、さっそく「語彙論。語の意味の拡大の例として、身体部位語を用いた慣用句」として、講義した。

 「口(くち)」は、身体部位の語として基本語です。口には、ふたつの基本的な機能がありますね。ひとつは私が今やっていること。私、何していますか。
 日本人学生にあてると「講義している」「話している」などの回答。はい、正解。「もうひとつの機能は何ですか」学生のこたえ、「食べること」はい、正解。
 
 「くち」は食事をする口、話すための口、という二つの機能を比喩的に表わす語として、意味が拡大していきます。
 「口ほどにもない」という慣用句の「口」は「話す機能」から、「以前に自慢したりできると言っていた内容」の意味になる。「口ほどでもない」は、「自分ができると言っていたより、実際はおとっていること」という慣用句として用いられる。

<つづく>

2005/12/14 水
ニッポニアニッポン語教師日誌>学生からのメール(5)語の意味の拡大

 「口がおごっている」の「口」は、「食べる機能」から、「味覚を味わう能力」となり、美味しいものを食べ続けた結果、マズイものを受け付けなくなっていることを意味します。

 このように、「口」は、たくさんの意味を含んで使われます。では、手、足、頭など、他の身体部位のことばを調べてみましょう。

 ルーさんが質問してきた1級日本語能力試験問題を検討した。
 日本人学生に解説させようと思っていたのだが、学生は、「むずかしい、わからないのがある」という。そこで、回答だけさせて、解説は教師がすることに。

 ( )の中に、適切な語句を選択する問題。
・旅行でお金を使いすぎて(1)が出てしまった。 ①手 ②足 ③目 ④顎
 日本人学生なら、簡単に答えるだろうと思ったのだが、「おあし=お金」の意味を知らない学生もいて、「足がでる=お金が不足する」という慣用句がわからない。

・あの方なら、(2)が広いから、きっと適任者を知っているでしょう。 ①手 ②顔 ③額 ④頭
ここはひとつ私の(3)を立てて許してやってください。①顔 ②腹 ③腕 ④気

 2と3は、どちらも「顔」が入るが、それはなぜか、これから、「顔」には、どんな意味が含まれていると考えられるか。
 2「顔が広い」は「ある人物が広く知られていること、いろんな方面に関係をもっていること」を表わす。
 3「顔を立てる」の「顔」は、「ある人物の面子、体面、プライド」を表わす。
 このふたつの慣用句から取り出せる「顔」が含む比喩的な意味とは?はい、答えて。

 このように「語彙論」「日本語文法」「日本語音声学」などを復習しながら、「日本語教授法」の講義もし、模擬授業を実演し、という具合で、ふたコマ続き、180分の授業もあっという間に終わる。

 ルーのメール。「先生の授業に出て、はじめて、大学でこんな面白い授業をやっている先生がいるんだと、いつの間にか授業にやってくるのが楽しみになりました。先生は他の先生と違い、いつも元気で、明るくて、先生と学生の間が、まるで友達のように感じました」
 と、感じてくれる学生ばかりだといいのだけれど、なかには「単位さえとれればいい」という学生もいるし、毎回、講義を聴いたり日本語教授法ビデオをみたりするより、友だちにメールをしていたい、という学生もいる。

 いろんな学生がいるけれど、今日も、春庭、薄給の身ながら、1コマの授業に乾坤一擲でございます。

<つづく>
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