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ぽかぽか春庭「マイライフストーリー私の若草物語」

2020-11-10 00:00:01 | エッセイ、コラム


20201122
春庭シネマパラダイス>虹のかなたに(2)マイライフストーリー私の若草物語

 私の世代の女性にとって、「少女必読書」だった本。「若草物語」「赤毛のアン」「足長おじさん」。小学生の時、「少年少女世界名作集」というような名のシリーズを買ってもらい、繰り返し読みました。

 私の母のお気に入りはなんといっても「アン」でしたが、私は若草物語の次女ジョーが大好きでした。文学好きな少女はもれなく「将来はジョーになる」と感じていたのかも。長女の姉が「将来はジョーがいい」と言ったときは「ジョーは次女だもん、次女は私だよ。長女はメグじゃないか」と、くってかかったこともありました。60年前の姉妹喧嘩。

 三女の妹はこどものころ体が弱く、いつも「自家中毒」というのを患っていましたから、べスのように若くして亡くなったらどうしようとひそかに案じていたのですが、どうしてどうして、今では私より体重多いどっしり婆になって孫の世話に忙しい。
 私たちの父は、三姉妹まとめて呼ぶときは「お~い、かしまし娘」と言っていました。姉妹漫才トリオの名でしたけれど、父に言わせると、まさしく女3人で「姦しい」のだと。

 「Little Women 4人の女性たち」とは、南北戦争に牧師として従軍したマーチ家の父親が、4人の娘たち全員に呼びかけるとき用いたことば。娘たちは父親からこう呼びかけられると、子供ではなく、一人前の女性としてみなされているという真剣な気持ちになって父の言葉を聞くことができました。
 作家となったジョー(次女ジョゼフィン)が自分の育ってきた一家を描くときにタイトルに「Little Women」を用いたのは、娘たちを尊重していた父の意思と愛情深かった母を敬愛する気持ちによるものだったと思います。

 日本では最初の邦訳は1906年。タイトルは「小婦人」でした。しかし、戦後は長く「若草物語」として親しまれてきましたから、2019年の映画も、原題の「Little Women」は使わないまでも、「マイライフストーリー私の若草物語」という長たらしい邦題は残念に思います。せめて後半だけにできなかったか、と。
 
 何度目かの「Little Women」の映画化。私は1949年版の(ジョー:ジェーン・アリソン、エイミー:エリザベス・テイラー)は何度か見返していますが、ジョーがキャサリン・ヘプバーンだった1933年版は1度見ただけなので、あまり覚えていません。

 2019年版。
次女ジョー・マーチ: シアーシャ・ローナン
四女エイミー・マーチ: フローレンス・ピュー
三女エリザベス・マーチ(ベス): エリザ・スカンレン
長女メグ・マーチ: エマ・ワトソン
母ミセス・マーチ: ローラ・ダーン
マーチおばさん: メリル・ストリープ
セオドア・ローレンス(ローリー): ティモシー・シャラメ
ミスター・ローレンス: クリス・クーパー
ジョン・ブルック: ジェームズ・ノートン
フリードリヒ・ベア: ルイ・ガレル
ミスター・ダッシュウッド: トレイシー・レッツ
ミスター・マーチ: ボブ・オデンカーク
ハンナ: ジェイン・ハウディシェル 
アニー・モファット: アビー・クイン

 92回アカデミー賞は、受賞衣装賞、ノミネート主演女優賞シアーシャ・ローナン、助演女優賞フローレンス・ピュー、脚色賞、作曲賞。

 2019年版は、作家として独り立ちしたジョーの回想として少女時代が描かれます。いっしょに見た娘は「私の中の若草物語は、保育園のときのアニメシリーズだから、ほとんど忘れていた。アニメではエイミーは小さな少女のイメージだったから、最初はフローレンス・ピューが大きすぎると思ったけど、結婚までを描くならあまり小さな少女では子役と成長後を分けなきゃいけないものね」と納得。初登場のエイミーは9歳なので、1949年の映画も、エリザベステーラーは3女ということにしてあり、最初は13歳、20歳でローリー結婚。(原作ではべス3女エイミー4女)

 2019年版でもエイミーは13歳-20歳の設定で、フローレンス・ピューが演じましたが、実はピューの実年齢は2女ジョー役のシアーシャ・ローナンと同じ年齢だというのでびっくり。わがままで気取り屋の幼い感じもローリーと結婚する初々しい若妻までをとても自然に演じていました。

 シアーシャ・ローナンは23歳にしてアカデミー女優賞に何度もノミネートれている実力派。キャサリン・ヘプバーン、ジェーン・アリソンなど、名だたる名女優によって演じられてきたジョーですが、シアーシャのジョーも、活発な部分も繊細な感情の部分、とてもよかったと思います。
 だれもが知っている物語のだれもが大好きなジョーを生き生きと演じていました。

 原作者のルイザ・メイ・オルコットは生涯独身で、執筆活動とフェミニズム活動に邁進しました。映画の中、作家として活動を始めたジョーに出版業者が忠告します。「生涯独身の女性を主人公にした作品など、読者はだれも読みたがらない」
 それで、オルコットはジョーとベア先生のロマンスを書きました。ほんとうは生涯独身の作家の物語を書きたかったことでしょう。

 ジョーではなくエイミーをヨーロッパ旅行につれていったマーチおばさんは「私は独身をつらぬいてもよかったんだよ。お金があったから」と言っていました。(メリル・ストリープがじょうず)オルコットの時代には資産を持たない女性が独身をつらぬくのは大変なことだったでしょう。

 そういえば、「赤毛のアン」のともだちのひとりは「将来は未亡人になりたい。そうすればオールドミスのそしりを受けることなく、夫の世話に振り回されることもないから」と言ってましたっけ。
 
 「マイライフストーリー私の若草物語」というまわりくどいタイトルをのぞけば、2019年版
若草物語は、気に入った映画のひとつになりました。

<つづく>
コメント (5)
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