春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「昭和語ぴたりと、平成ぴったんこ、令和語びったびた」

2021-09-11 00:00:01 | エッセイ、コラム
20210911
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>新語流行語2021(1)昭和語ぴたりと、平成ぴったんこ、令和語ビッタビタ

 ことばは生まれては消え、なかには生き延びるものもあらわれる。
 2020年はコロナ関連の語がどっと出て、まだまだ「密」も「濃厚接触」も現在進行形で使用されています。

 2021年、上半期の新語。
 まだまだコロナ関連が続き「人流」「まんぼう」「家飲み・路上飲み」「おうち時間・巣ごもり需要」など、上半期によくニュースなどで聞かれました。「まんぼう」とは蔓延防止措置の省略語。なんでも仮名文字4文字にしてしまう省略法ですが、最初に聞いたときは、魚のマンボウがコロナに関係しているのかと思いました。

 コロナ関連語「蔓延」の世の中ですが、オリンピックパラリンピック期間中は、競技のなかから「新語」「はやりそうなことば」も生まれました。冬季オリンピック・カーリングでよく聞いた「そだねー」が2018年の流行語大賞に選ばれたのは記憶に新しいところですが、さて、2021年は。

 「ボッチャ」という競技を見た人びとが多かったことから、ボッチャ競技の解説で使われた「ビッタビタ」という語を耳にした人が増えました。これは、新語流行語の中でも、近年にない例です。なぜなら、オノマトペ(擬音語擬態語)が新しく、人々に浸透することはそうはないからです。マンガやアニメによってさまざまなオノマトペが現れては消えるのですが、人々に浸透し定着することはそう多くはありません。特に、音を表す擬音語ではなく、状態様子を表す擬態語においては。

 新しい擬態語が定着した例としては。
 「花の子ルンルン(1979)」というアニメが放映されたあと、林真理子が「ルンルンを買っておうちに帰ろう」というエッセイを出版し(1982)、ルンルン擬態語として定着しました。楽しく上機嫌なときに「今日はルンルンだよ」などと表現するようになりました。

 日本語はオノマトペが非常に多い言語です。(たぶん、世界中の言語の中でもトップクラス)。
 日本語は副詞が少ない言語ですが、オノマトペに「に・と」をつけて副詞として用いることができ、副詞の少なさをおぎなっています。
 副詞には、程度頻度副詞(とても、かなり、しょっちゅう)などや、状態を表す副詞(ゆっくりと、そっと)などがありますが、数は多くないです。
 英語ならbeautifulという形容詞があれば、yをつければbeautifulyという副詞になるので、形容詞の数だけ副詞も作れます。
 日本語も形容詞「大きい」を「大きく」とク活用にすれば副詞として用いることはできるのですが、品詞はあくまでも形容詞の副詞形です。

 副詞を補うのがオノマトペ。
 オノマトペ・音を言語化した擬音語。ようすをことばにした擬態語があります。
 弱い雨が降っていれば「しとしとと降る」濁音にして「じとじと」にすると湿度が高くて不快なようす。「ぽとぽと雨だれが落ちる」に対して「ぼとぼと」落ちるでは、水の量が多い。ほとんどのオノマトペが、濁音にすることによって、より強く激しいようすを示すことができます。

 ドアをトントンとノックするのはいいけれど、ドンドンとたたいたら、寝ている人も起きる。カリカリかじるのはいいが、ガリガリかじったら、穴があく。という具合に、ほとんどのオノマトペは、濁音半濁音で強弱を表します。キラキラ輝くのとギラギラ光るのでは、光る程度がどれほど違うか、日本語母語話者は、感覚としてつかんでいます。

 「ぴったり」という副詞があります。ある物にほかのものが近づいて離れないようすを表します。「彼は子供にぴったりと寄り添った」また、ちょうどよく合う様。「この靴のサイズはぴったりだ」
 平成時代には「ぴったし」「ぴったんこ」などがよくつかわれるようになりました。
 そして令和。
 ボッチャ競技のルールでは。ジャックと呼ばれる白い基準ボールにどれだけ近づけて投げられるか、によって得点を競います。


 昭和語で言う「ぴったり近づける」に対して、もっと完璧に隙間なく近づけたボールを、解説者は「ビッタビタ」と表現しました。ピッタリより強いビッタリをさらに2倍にして「ビッタビタ」です。
 ボッチャチームリーダーの杉村英孝選手が何度もビッタビタのボールを出すので、解説者も何度も「ビッタビダ」と叫び、茶の間でテレビ観戦している 視聴者は、いやおうなく「ビッタビタ」を覚えました。
 今後ボッチャ競技を見るたびに、人々は「ビッタビタ」になりますように、と願うことでしょう。このオノマトペ、日本語語彙に定着するでしょうか。

 ルンルンのように「ビッタビタ」が定着するかどうかは、まだわかりません。3年後にも使われていたら新しもん好きの三省堂が辞書に載せるでしょうし、10年後にも残っていたら、岩波あたりも辞書搭載する。
 さて、ビッタビタの将来は?

 私の子供時代には聞かなかったオノマトペ。「心臓バコバコ」とか、「胸キュン(キュンキュン)」「ツンデレ」など、長く使われそうなオノマトペもあるし、「ビサビサ(完全に錆びているようす)」など、定着しないうちにすたれた語もあります。
 「ロリロリ男(性的対象としてロリータのような少女を選ぶ男性)」などのことばも、今はあまり聞かぬなあ。

 あと10年、ビッタビタの行く末を見守りたいと思います。日本語ウォッチングの愉しみ、

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする