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ぽかぽか春庭「モモにチュウイ!」

2021-09-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
20210916
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語2021かんじいいかんじ教室(2)モモにチュウイ!

 漢字教育について、現在の受け持ち日本語クラスは、春庭にとって、はじめての教育経験となります。
 今教えているのは、漢字圏中国人と非漢字圏(ネパール&ベトナム)の混成クラスなのです。

 これまで、中国人クラスには「日本漢字と中国簡体字の字形の違い」と、音読み・訓読み、熟字訓などを教えればよかったし、非漢字圏学生への初歩の漢字クラスには、「非漢字圏学生への漢字授業KnowHow25年間」を私の財産として、効果的な授業を模索し実施してきました。

 しかし、混在クラスでは、どちらの授業方法も使えない。漢字の字形成り立ちや書き順を教えても、中国人学生には退屈。しかし、日本で初めて漢字を習う学生には、私がアラビア文字、タイ文字、ビルマ文字を習ったときにとまどった以上の難しさがあることは想像に難くない。(ハングルは楽勝でした。人工的に作られた合理的な文字なので)

 漢字圏学生が漢字を知らないネパール人をばかにしたりしないように、私はときどきホワイトボードにネパール文字(ヒンディ文字)を書かせて、中国人に「これ、読めますか」と尋ねます。

 ある日はホワイトボードに「म:म: 」とネパール学生に書いてもらいました。中国人に「はい、これは中国人も知っている料理の名前です。読んでください」と尋ねました。むろん、だれも読めません。ネパール人はみな「うんうん、知っているよ」と言う顔。
 こたえは「モモ。ネパールの蒸し餃子です。シャオロンパオ(小籠包)のほうがわかるかな」
 「なあんだ、ぎょうざかぁ」

 ネパールの蒸し餃子(小籠包)「म:म: モモ」


 こんなやりとりで、ネパールにはネパール文字(ヒンディ文字)があり、中国人にヒンディ文字が読めないのと同じように、ネパール人が漢字が書けなくても当然、ということ、くぎ指しておきます。

 自分たちが漢字が書けるからって、えらいわけじゃない。どの国にも固有のことばがあり、ある国には固有の文字がある。
 お互いの文化や言語を尊重しあって、他の国の異文化、ことなる言葉を学ぶことで世界が広がるのだ、ということを学生に感じさせながら、漢字授業を進めていきます。

 ネパール人のための「漢字書き方教室」を、通常クラスとは別に設置し、漢字の成り立ちと書き順の初歩から指導してきました。(ベトナム人3人のうち、2人は中華系で、漢字をある程度習っており、漢字がまったくわからなかったのはひとりだけ)。

 ベトナムもかっては中国文化圏の一部であり、知識階級は漢字を使っていました。いまでも、ベトナム語語彙の40%ほどは、漢字由来のことばです。たとえば、「注意」は、ベトナム語「チュウイ」ですし、「衣服」は「イフック」です。しかし、非知識階級に文字を広げる識字教育のために、ベトナムはフランス植民地になったことをきっかけに、ベトナム語表記法として、アルファベットを採用しました。(Chúng tôi đã sử dụng bảng chữ cái làm ký hiệu tiếng Việt.)

 非漢字圏の学生に、漢字の形が印象に残るよう、あの手この手で漢字を教えます。「大きい」のときは、両手両足を広げ体で「大」の字をつくります。「馬」は、下手な馬の絵を書き、そこに馬の文字を重ねて、形が印象に残るように教えていきます。
 難点は、私が書く馬の絵、豚だか犬だか、よくわからない姿になることです。学生が「馬」という漢字に「いぬ」というフリガナを書いたとしたら、それは学生のせいではなく、あまりに絵心のない教師のせい。

<つづく>
コメント (2)
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