20220723
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2022シネマ夏(4)ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男
飯田橋ギンレイでの観覧。
ダークウォーターときくと、ホラー映画かと思い、見る気がしていなかったのですが、夫タカ氏が併映の「スイング・ステート 」が面白かったという。タカ氏は選挙大好き男で、自分の票読みがどれほど結果と近かったのかということが彼の娯楽のトップなのです。今回の参院選でも、「聞きたくもない」のに、さんざん「ボクの読みがどれほど当たったか」を語りたがり、うざいったらない。
まあ、シネパスポートをタダで映画見ることができるのだから、スイング・ステートを見ておこうかと、期日前投票をしたついでに飯田橋に寄りました。
2本とも見ることにしたのですが、私には「スイングステート」は、笑えたけど、夫ほどには面白と感じない。なるほど、アメリカの民主党VS共和党の選挙っていうのは、こんなふうに地方の町長選挙まで入り込むのか、とおもったけれど、夫の選挙話と同じ。選挙の駆け引きやどっちが勝つかについて、興味がないので。面白かったのは、最後の「町の勝利」があきらかになったところだけ。
でも、併映の「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 」がとてもよかった。
「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 」は、環境汚染を40年間隠し続け、化学物質による健康被害を拡大させてきた大企業デュポンに対して、裁判を起こし、法の力で勝利した弁護士の20年にわたる戦いを描いた実話に基づく物語です。
私は、デュポンが賠償に応じる決定をした、というニュースを見たとき、その背後にこのような壮大な戦いの歴史があったこと、あまり知りませんでした。ああ、アメリカでも環境汚染による賠償がなされたのだなあ、これは『沈黙の春』などの思想が敷衍したからかなあと思った程度。
化学物質垂れ流しによる環境汚染と巨大企業というと、すぐに思い出すのはチッソによる有明湾汚染とと水俣病の長い闘いです。
最終的にチッソが患者救済や賠償に応じるまで、やはり30年かかっています。
<あらすじ>
弁護士のロバート・ビロットは、ウェストバージニア州の農場経営者ウィルバー・テナントから、村で連続して起きている家畜の不審死の調査を頼まれました。牛の体に恐ろしい変質を起こり、190頭もの牛が死んだのです。テナントは、牛の歯や内臓に異変が起きていることを知り、証拠として冷蔵庫に保管しておきました。
ビロットはテナントに、不審死は化学企業のデュポンが化学物質を川に流出させ、生活水が汚染されていることが原因であると明かされます。病気になり農場経営ができなくなったウィルバー・テナントの弟の土地をデュポンは買いたたき、そこに汚染物質を廃棄することにしたのです。その廃棄物質は川の水を汚染し、その水を飲んだ牛につぎつぎに異変がおこりました。
調査を始めたビロットは、デュポンが環境汚染を認識しながら隠蔽していることに気付き、訴訟を起こします。しかしアメリカ合衆国を代表する大企業のデュポンに戦いを挑むのは、アリが針を持って象を刺しにいくようなもの。だれもが、すぐに象に踏みつぶされる無謀な戦いと思いました。
弁護士事務所の上司や部下からも支持を受けられず、デュポンからの脅迫で身に危険が迫ります。妻のサラは、職を失いかねないビロットに不安を募らせ、子育てもひとりで行わざるをえなくなった人生に失望も感じています。
ビロっとは、開示要求によって手に入れた膨大な書類の中からひとつひとつ証拠となる事実を集め、訴訟を続けていきます。
- マーク・ラファロ:ロバート(ロブ) ビロット デュポンに対峙した弁護士
- アン・ハサウェイ:サラ・ビロット ロバートの妻
- ティム・ロビンス:トム・タープ ロブの上司-
- ビル・キャンプ:ウィルバー・テナント ロブの母親の知り合いだったことから、牛190頭の死とデュポン化学物質汚染の調査を依頼-
- ヴィクター・ガーバー:フィル・ドネリー デュポン方のトップ
- メア・ウィニンガム:ダーリーン・カイガー デュポンによる健康被害者。訴訟団の代表で、さまざまないやがらせを受ける。
最初にウィルバー・テナントが牛の死をロブに知らせた1998年から、2017年2月、デュポン社とその子会社ケマーズが3550件の訴訟で、合計6億7070万ドル(約765億円)の賠償支払いで和解するまで20年。
米化学大手デュポンと同業のケマーズは13日、デュポンの工場から河川に流出した化学物質により健康被害を受けたとする3550件の訴訟で、合計6億7070万ドル(約765億円)の支払いで和解したと発表しました。20年に及ぶ戦いでした。
主役のマーク・ラファロは、2016年にこの裁判が報じられると映画化を申し込み、2019年に公開。
依頼のあったウエストバージニアの農場へいやいやながら向かう弁護士ロブの車から、♪カントリーロード♪が流れます。ウエストバージニアは、この歌に代表されるように、美しい自然と人々の素朴な暮らしの土地でした。
化学製品の会社デュポンはそんな田舎に雇用を生み出し、地元に豊かさをもたらしました。その一方で40年もの間、垂れ流しの化学物質汚染が健康被害を生み出したことを隠し続けたのです。
会社の化学物質によって健康被害を受けた社員は、内部告発ができないでいました。会社から生活を保障されて口をつぐむしかなかったから。
ロブの20年による戦いの結果、最終的に裁判所は、デュポン社の犯罪であることを認めました。
2021年12月のニュース。沖縄宜野湾市の米軍基地からPFOAとPFOSが流出しました。発がん物質として使用が禁じられているPFOAとPFOSを飛行機の洗浄用に使っていたのです。
PFOAとPFOSは、フライパンの加工などに使われるフッ素樹脂「テフロン」の製造過程で使われていましたが、発がん物質であったことからデュポンは既にPFOAの使用を中止しています。
それが、米軍基地では堂々と使われていました。しかも開示された資料は黒塗りで真実は闇の中。
弁護士ロブが開示要求をしたデュポン社の内部資料がロブの請求によって公開され、裁判勝利の根拠となったのに比べて、日本の「秘密主義」に暗然とします。
日本では政治がかかわると真実は最後まで「黒塗り」になる。
20年の間苦しみ続けたウエストバージニアの人々は最終的に救済されたけれど、日本にロブのような弁護士、いるのかなあ。
マーク・ラファロは、自ら映画化を望んだ作品で、熱演でした。20年たった最後はだいぶふけたメークになり、妻役アンハサウェイは最後まで若く美しかった。ま、女優だからいいか。
<おわり>