20240921
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ことばの新旧(3)漢字読み方の変化 誤読→慣用読みその1
2005年の春庭コラムの再録です。
漢字の読み方も、旧い読み方から新しい読み方に変化していきます。現在の読み方を習い、その読み方が当然と思っていて、旧い読み方を知ると驚きますが、人々が新しい読み方のほうを採用すれば、そちらが「正しい」読みになっていきます。
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2005/02/01 (火)
ニッポニアニッポン語>みんなで間違えばこわくない・誤読→慣用読み①
留学生のための漢字教育。非漢字圏(漢字教育を学校で行わない地域)の学生にとっても漢字は日本語学習の壁のひとつ。
複雑な形と表意文字であることに興味をもって「漢字フリーク」となり、どんどん覚える学生もいるし、「私の頭には複雑すぎる」と、拒絶反応を起こしてしまう学生もいる。
私が担当しているクラスでは、ゼロスタート(ひらがなも知らないまったくの入門クラス)の学生が3ヶ月で300字の漢字を覚える。(30歳前後の大学院留学生、大人相手だから詰め込み教育でもなんとかなり、学生はよくがんばっています)
漢字教育というのは、「日本語の語彙教育」でもある。日本語の語彙は、和語の総数よりはるかに多くが漢字熟語なのだから。
留学生にとってだけでなく、日本の子どもにも漢字学習はたいへんだ。
文部科学省所管の「総合初等教育研究所」が2005/01/27に公表した「漢字の読み書き調査」。
読みは89%の正答率。書きは72%が正しく書けている。ただし、学年が進むにつれ誤答が増え、「漢字は苦手」という子が増えてくる。
小学校6年で1000字ほど、中学高校で1000字弱の漢字を覚えれば常用漢字の読み書きはカバーできるはずだが、国語教師にとっても、漢字教育は泣き所のひとつ。漢字書取り毎日出したりすれば「詰め込み教育」と不評を受け、やらなければ「漢字の書き方ひとつ定着させられない無能教師」と責められる。
さて、今週は漢字の誤読についての話から。みんなが間違えれば、誤読が慣用読みとなり、やがて、慣用読みが正規の読みを圧倒していくという話。
漢字に自信がある方、ない方。次の漢字読み方クイズ、おためしを。
(1)漏洩(2)稟議(3)捏造(4)貪欲(5)貼付
ワープロを使い始めてから、手書きで書こうとすると、あれっ?となる私でも、読む方は自信があるとおもっているのですが、、、、
答え、 漏洩:ろうせつ→ろうえい 稟議:ひんぎ→りんぎ 捏造:でつぞう→ねつぞう 貪欲:たんよく→どんよく 貼付:ちょうふ→てんぷ
→の左が元の読み方。右側が現在通用している読み方。左側の読みをした方がいただろうか。
ニッポニアニッポン語>みんなで間違えばこわくない・誤読→慣用読み①
留学生のための漢字教育。非漢字圏(漢字教育を学校で行わない地域)の学生にとっても漢字は日本語学習の壁のひとつ。
複雑な形と表意文字であることに興味をもって「漢字フリーク」となり、どんどん覚える学生もいるし、「私の頭には複雑すぎる」と、拒絶反応を起こしてしまう学生もいる。
私が担当しているクラスでは、ゼロスタート(ひらがなも知らないまったくの入門クラス)の学生が3ヶ月で300字の漢字を覚える。(30歳前後の大学院留学生、大人相手だから詰め込み教育でもなんとかなり、学生はよくがんばっています)
漢字教育というのは、「日本語の語彙教育」でもある。日本語の語彙は、和語の総数よりはるかに多くが漢字熟語なのだから。
留学生にとってだけでなく、日本の子どもにも漢字学習はたいへんだ。
文部科学省所管の「総合初等教育研究所」が2005/01/27に公表した「漢字の読み書き調査」。
読みは89%の正答率。書きは72%が正しく書けている。ただし、学年が進むにつれ誤答が増え、「漢字は苦手」という子が増えてくる。
小学校6年で1000字ほど、中学高校で1000字弱の漢字を覚えれば常用漢字の読み書きはカバーできるはずだが、国語教師にとっても、漢字教育は泣き所のひとつ。漢字書取り毎日出したりすれば「詰め込み教育」と不評を受け、やらなければ「漢字の書き方ひとつ定着させられない無能教師」と責められる。
さて、今週は漢字の誤読についての話から。みんなが間違えれば、誤読が慣用読みとなり、やがて、慣用読みが正規の読みを圧倒していくという話。
漢字に自信がある方、ない方。次の漢字読み方クイズ、おためしを。
(1)漏洩(2)稟議(3)捏造(4)貪欲(5)貼付
ワープロを使い始めてから、手書きで書こうとすると、あれっ?となる私でも、読む方は自信があるとおもっているのですが、、、、
答え、 漏洩:ろうせつ→ろうえい 稟議:ひんぎ→りんぎ 捏造:でつぞう→ねつぞう 貪欲:たんよく→どんよく 貼付:ちょうふ→てんぷ
→の左が元の読み方。右側が現在通用している読み方。左側の読みをした方がいただろうか。
「日本語が乱れている」と嘆いても「私は使いたくない」と抵抗しても、変わるものは変わってゆくことの例として、慣用読みが定着した熟語例をあげてみた。
消耗の元の読み方はショウコウだったが、現在はショウモウと読まれるようになった。
元は「誤読」だったのに、その読み方が定着していく漢字熟語。大半の人が誤読のほうを使うようになれば、辞書に掲載され「慣用読み」として通用するようになる。
経理に消耗品費を請求して、「ショウモウヒンではだめです。ショウコウ品でないと、お金は出せません」と、つっぱねられることもない。
新聞のふりがなも「捏造ねつぞう」となっている。元の読み「でつぞう」と、誰も読まなくなったのだ。
元は「誤読」だったのに、その読み方が定着していく漢字熟語。大半の人が誤読のほうを使うようになれば、辞書に掲載され「慣用読み」として通用するようになる。
経理に消耗品費を請求して、「ショウモウヒンではだめです。ショウコウ品でないと、お金は出せません」と、つっぱねられることもない。
新聞のふりがなも「捏造ねつぞう」となっている。元の読み「でつぞう」と、誰も読まなくなったのだ。
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20240921
他人事を「ひとごと」と読む年寄りに対し、若いアナウンサーなどは「たにんごと」と読み、ワープロ返還で「たにんごと」と入力してもちゃんと他人事と変換されるので、すでに「たにんごと」は容認されているのだろう。
先日、放送大学の江戸時代の話。朗読者は江戸武家奉公人の話の中で「中間」を「なかま」と読んだのでびっくりした。ここは「ちゅうげん」だろうが、仲間とも書くので、最近はお友達の「なかま」と読むのも容認されることになったのか、最近の学問動向などにうとい私が知らなかっただけなのか。まさか、放送大学のテキスト朗読で間違えるとは思わないので、担当講師もこの読み方を見逃したのか、認めたのか、いまだ思案中。
<つづく>