春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「漢字読み方の変化 誤読→慣用読みその4」

2024-09-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240926
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>ことばの新旧(6)漢字読み方の変化 誤読→慣用読みその4

 2005年の春庭コラム再録です。
~~~~~~~~~~~~
2005/02/04 (金)
ニッポニアニッポン語>みんなで間違えばこわくない・誤読→慣用読み④

 総合初等教育研究所の読み書き習得状況調査によれば、5年生の半数が「赤十字」を「あかじゅうじ」と読んだそう。

 自分の生活に身近でない漢字のことばに出会ったとき、知っている漢字や熟語から意味と読みを類推する力はとても大切。
 「赤十字」の活動にも「赤十字病院」にも縁がない生活をしていれば、5年生の多くが「あかじゅうじ」と読むのは当然だ。
 子どもの生活に身近な「赤レンジャー青レンジャー」「赤とんぼ」「運動会の赤旗白旗」のほうに合わせて、「あか十字」と類推したのだ。

 赤ちゃんのときから「赤十字病院」のお世話になっている子どもだったら、親から「ほら、きょうはセキジュージにいって、おばあちゃんの薬もらってくる日だよ」などと、聞かされており、漢字と音が結びついていて間違えない。

 昔の人が近所に赤十字病院がなくても「セキジュージ」と読めたのは、ナイチンゲールやアンリー・デュナンの伝記が今より広く知られていたからかも。(1933(昭和8)から1940年まで使われた第4期国定修身教科書に、ジェンナー、ソクラテスらと共にナイチンゲールの話が掲載されていた)

 しかし、「米作」が「べいさく→こめさく」と慣用読みが定着するのではないかと予想されるのとは異なり、「赤十字」については、そうはならない。その存在や活動を学習した時点で「せきじゅうじ」という読み方のほうを採用するだろう。「赤十字」は団体の固有名詞でもあるので、慣用読みの定着はむずかしい。

 子どもが読みを間違えるのは、その漢字が日常生活での会話にも、テレビや、本・漫画から仕入れる語彙にもなじみがない語であることが多い。
 幼児のころから「へんし~ん!」という言葉を見聞きしていたあと「変身」という漢字をならった場合、「へんみ」と読む者は少ないはず。

 漢字の誤読・誤記は、子どもが浸っている生活文化全体の問題なのだ。
 夏の陽射し厳しい中を歩いていて日陰がほしいとき、木の下で憩える子どもは少なくなっている。ビルの間のちょっとした陰や道路におかれたパラソルの下の日陰で休む人にとっては、「木かげ」より「小かげ」のほうが、実感にあっているだろう。

 今回の調査で「高層ビル」「大統領」の正答率が上がったのは、これらの言葉をニュースなどで見聞きし、親世代の会話のなかに出現する頻度も上がっているからだ。

 子どもの漢字力語彙力(ボギャブラリー)を心配するなら、子どもをとりまく大人たちが、子どもの目耳心に、豊かな語彙を、どんどん与えることだ。親世代の言語能力がなくなっているのに、子どもの言語力があがるはずがない。

 昔の子どもたちは、酒屋へおつかいに行かされれば、一合だの一升だのと単位を覚えた。豆腐屋へ豆腐を買いに行って「とうふひとつ油あげふたつください」「はい、とうふ一丁あげ二枚ね。おまちどうさま」というやりとりで、豆腐は丁、油揚げは枚と数えるのだと、自分で覚えた。

 今の子どもは、スーパーで親がだまってパック入りの豆腐をかごにいれるのを見るのみ。いくら「数え方辞典」片手に教え込もうとしたところで、それは「知識」にはなるが、身についた生きた言葉になるのは難しい。
 すべてのものを「いっこ、にこ、さんこ」と数えるようになるのもやむを得ない。

 わかりやすい例として助数詞(ものを数えるときにつけることば)をあげたが、すべての語彙において、同じ現象がおきている。授業で教えテストをするだけでは、子どもたちの語彙能力は高まらない。

 周囲の言葉のやりとりの中で「政治家のオショクジケンは困ったもんだ」と、聞いて誤解し、「お食事券ぼくも欲しい」と、話題に加わってみる。こんなとき「汚職事件」について説明されれば、国語の時間に辞書をひいて覚える以上に頭に入る。

 生きたコミュニケーションのなかでの言葉のやりとりをし、周囲の人の話、本・新聞やニュースで知ったことばを生活で使ってみたり、書き言葉にとりいれたりする、その営みが貧弱になっていれば、子どもの言葉は育たない。
~~~~~~~~~
20240926
 元首相が「云々」を「デンデン」と誤読して、新聞テレビの格好の笑い話になったのも今は昔。人気アナウンサ―が「旧中山道」を「いちにちじゅうやまみち」と読んだのも、今は伝説。つい最近ではアイドル欅坂出身のアナウンサー原田葵が「何卒なにどぞ」を「なにそつ」と読んだことが笑い話にされていました。生放送なので、周囲からのフォローが間に合わなかった。私の考えでは「なにとぞ」という語に漢字を使うことはない。今は語彙返還でなんでも漢字表記で出てしまうのだけれど、接続詞や感動詞その他文章の中で漢字で書かなくても意味が通る語は、できるかぎりひらがな表記にしたほうがいいと思うほうです。今「とおり」を「通り」と漢字表記にしたけれど、私の好みでは「とおり」のほう。

(副詞)
余りに→あまりに 至って→いたって 一旦→いったん 未だに→いまだに 大いに→おおいに 恐らく→おそらく 様々な→さまざまな 次第に→しだいに 暫く→しばらく 随分→ずいぶん 既に→すでに 全て→すべて 大変→たいへん 例えば→たとえば 最も→もっとも 僅か→わずか
(接続詞)
或いは→あるいは 及び→および 且つ→かつ 更に→さらに 然し→しかし 然るに→しかるに 従って→したがって 但し→ただし 就いては→ついては 尚→なお 並びに→ならびに 又→また 若しくは→もしくは 故に→ゆえに 因って/依って→よって
(副助詞)
頃→ころ 位→くらい 等→など 迄→まで 程→ほど

 そのほか、名詞動詞でも、ひらがなで書いても意味がとおるものはひらがなで書くこともある。漢字ふたつの語彙は基本的に漢字読み書きですが、日本語として定着していて、他に同音異義語がないものはひらがなで書くこともある。
遠足→えんそく 鉛筆→えんぴつ 田舎→いなか

 動植物名はカタカナ書きが基本ですが、わざわざ漢字名を書くことも多い。
 「行く(いく)」と「行う(おこなう)」の使い分けのように間違えやすい動詞もひらがなで。漢字変換作業が簡単になり、やたらに漢字変換した文章を書く人もいるけれど、全体のバランスとか、文章の性格を考えて漢字ひらがなの選択をしたいです。
 とはいっても、昨今の小中学生には漢字語は消滅の方向へ。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする