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ぽかぽか春庭「見ることの重層展 in 写真美術館」

2024-10-12 00:00:01 | エッセイ、コラム
20241012
ぽかぽか春庭アート散歩>2024アート散歩秋(2)見ることの重層展 in 写真美術館

 写真美術館3階展示は「見ることの重層」


 写真美術館の口上
 東京都写真美術館では約37,000 点を超える収蔵作品のなかから、テーマに沿って選び抜かれた名品を定期的に紹介しています。本展覧会では、当館の所蔵する写真作品を中心に、「見ることの重奏」をテーマとして、見るということを問い直す試みを行います。
 ひとつの作品に内在する、作者や批評家、鑑賞者など、さまざまなまなざし。たとえば、写真家は制作のプロセスにおいて、ある対象を独自の方法で見つめ、それをフレーム化します。また批評家は、自身の作品の見方を言語化することで、作品を評価し、価値づけます。そして鑑賞者はそこに写されている事象と自身の個人的な経験や記憶を結びつけ、その関係性のなかで作品を見ることができます。
 このように、イメージの作り手、語り手、受け手など、その立ち位置によって、写真を見るという行為は多様なものとなります。そして見る経験は、イメージの表面上には見えない、歴史的な視点と豊かな想像力、自身の思考が重なり合い、それらを共鳴させる行為とも言えるのではないでしょうか。
 本展では、これまで語られてきた作品をめぐる言葉とともに、時代も地域も異なるコレクションが一堂に展示されます。出品作品を通して、写真を見るということについて思考をめぐらせる場となれば幸いです。
出品作家|
ベレニス ・ アボット、ウジェーヌ ・ アジェ、アンナ ・ アトキンス、チェン ・ ウェイ、スコット ・ ハイド、アンドレ ・ ケルテス、ウィリアム ・ クライン、奈良原 一高、マン ・ レイ、杉浦 邦恵、 モーリス ・ タバール、寺田 真由美、マイナー ・ ホワイト、山崎 博

 アンナ・アトキンス(1799-1871) イギリスケント州生まれ)
 アンナは出生の翌年に母を亡くしました。科学者であった父から19世紀にはまれであった科学的教育を受けて育ちました。父の博物著書の挿絵を描くなどしたのち西インド諸島で財をなしたアトキンスと結婚。子供に恵まれませんでしたが、植物標本の作製を続け、父と夫の共通の友人であるタルボットから写真技術を習いました。植物画を描くとともに、写真乾板の上に植物標本を載せ、太陽光で露出する、という方法で、植物の姿を定着した。アンナは41歳までにはカメラを所有しており、最も初期にカメラによる作品を残した女性になりました。1843年に、ウイリアム・H・ハーベイの藻類を収集した本にサイアノタイプ撮影の藻類の写真を掲載。アンナは植物標本を残すためにカメラを手にしたのだけれど、残された青い画像はとても美しい。

 アンナ・アトキンスの「ギンシダ(ジャマイカ)」


 アンナ・アトキンスは植物学研究者の間では知られていたのでしょうが、亡くなってから45年たって、インターネットの中で突然よみがえりました。2015年、アンナのシアノプリントがネット公開され、2017年にはアムステルダム国立美術館で開催された「19世紀の新しい現実の写真」展の主要作家として世に知られるようになったのです。

 私は、アンナ・アトキンスという最初の写真家となった女性をまったく知りませんでした。今回一作品だけですが、プリントを見ることができてよかったです。
 写真美術館所蔵作品以外のアンナ・アトキンス撮影作品


 牧野富三郎は、植物画を描くとき、その植物が一番美しく見える角度を探して写生したということですが、アンナもシダや藻類の姿を写すとき、一番美しく見えるように写真乾板の上にそっと乗せたのに違いない。

 奈良原一高の写真は、何度も見ています。好きな写真家のひとり。でも、「大ガラス」とタイトルをつけたマルセル・デュシャンの作品を撮影したもの、一点だけというのを見たことあるけど、数点まとめて展示してあるのを初めて見ました。 
 アメリカ・フィラデルフィア美術館に所蔵されているマルセル・デュシャンの《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(1915〜23)を奈良原が撮影。一連の写真群は、『デュシャン大ガラスと瀧口修造シガー・ボックス』としてまとめられ、91年にみすず書房より出版されました。 

奈良原一高「大ガラス」
  
  
   
 
 マン・レイの作品は撮影不可でしたが、大半は撮影自由だったので、さまざまな写真家の作品に触れ、前回見た今村光彦の「日本の里山」展ももう一度見て、9月第三水曜日のシルバーデイを楽しみました。


<つづく>
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