
20241019
ぽかぽか春庭アート散歩>2024建物散歩秋(3)庭園美術館建物公開2024
年に何度か訪れてきた庭園美術館。夏は竹久夢二展を二度も観覧。一度目はひとりで二度目は娘と。秋は「建物公開、あかりともるとき」を第3水曜日に65歳以上無料の日に見にいきました。最寄りの目黒駅・白金台駅はシルバーパスで乗り降りできます。


庭園美術館の口上
本展は、1933年(昭和8)に竣工した旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)の建築としての魅力を存分にご堪能いただくため、年に一度開催している建物公開展です。これまで当館では毎回テーマを設定し、様々な角度から建物公開展に取り組んでまいりました。今回は、この建物のみどころの一つとも言える「照明」に焦点を当てます。
1920年代、滞在中のフランス・パリにて、当時全盛期だったアール・デコの様式美に触れ、魅せられた朝香宮夫妻。帰国後、最先端の技術と最高級の素材を用い、アール・デコの精華を積極的に取り入れた自邸を建設しました。フランスの装飾美術家アンリ・ラパンが主要な部屋の室内装飾を手がけ、宮内省内匠寮の技師らが全体の設計を担い、日仏のデザインが融合する形で完成した建築です。現在は美術館として活用していますが、竣工時からの改変はわずかで、当時の様子を良好な状態で伝えることから、国の重要文化財に指定されています。
天井や壁面に据えられた照明は、旧朝香宮邸の室内空間において特に印象的な要素です。こだわりの材質やディテールがあしらわれた照明器具の多くは、この邸宅のために制作されたもので、華やかさと独自性を高めています。本展では、各室の照明に関する解説、資料を通して旧朝香宮邸の魅力に迫るとともに、同時代のランプ類を展示します。また、本館の窓のカーテンを開け放ち、自然の光を感じる空間で、宮邸時代の家具や調度を用いた再現展示をお楽しみいただきます。
普段は作品保護のために閉じられている窓のカーテンを開け放ちます。大きな窓から望む景色とともに、旧朝香宮邸の室内装飾やアール・デコ様式の意匠、多彩な照明器具に改めてご注目ください。
秋が深まるにつれ、繊細な陽の光の移ろいを長く楽しめるしっとりとした季節です。徐々に色づき始める庭園もあわせてご堪能ください。
秋が深まるにつれ、繊細な陽の光の移ろいを長く楽しめるしっとりとした季節です。徐々に色づき始める庭園もあわせてご堪能ください。
いつも窓のカーテンはきっちり閉じられ、外の景色を眺めることができませんが、今回は部屋の中から緑あふれる庭園を見ることができて、とても新鮮な旧朝香宮邸の建物見学になりました。朝香宮夫妻がパリ万博でアールデコを気に入り、朝香宮邸をアールデコの館として建設した1933(昭和8)年から90年余り。
敗戦後、都内の主な建物はGHQに接収され、改造されてしまいました。岩崎邸の貴重な金唐革の壁紙の上にべったりとペンキが塗られてしまい、金唐革は修復不能になったのもその一例。現在金唐革の復元には1m四方で100万円かかるそうです。日本文化にまったく知識がない米軍将校の仕業、損害賠償を求めたい気分です。
しかしながら旧朝香宮邸は、時の首相吉田茂が首相官邸として使用を決めたために、大きな損傷は免れました。
東側正面玄関 南面ベランダ側


今回の展示では、復元された家具が配置され、照明具はあかあかと灯って往時をしのぶことができました。竣工なった新邸にわずか半年しか住まず、父と同じ腎臓系の病でなくなったという明治天皇第八皇女允子妃にとっては心残りだったことでしょう。現在、庭園美術館として、各部屋を観覧できること、ありがたいことです。
朝香宮鳩彦王の書斎、居間


カーテンが開けられた大食堂 復元されたワードローブのある納戸部屋


普段は非公開のウインターガーデン。4階の日当たりのよいところに、冬の間の避寒の部屋として家族団らんの場所が設けられました。復元された赤いパイプ椅子、90年前の椅子ですが、とてもモダンなデザインです。私は最初にウインターガーデンを見学したとき、90年前の邸宅にどうしてこんな今どきのパイプ椅子を配置しているのかと思いましたが、朝香宮が直接注文して取り寄せた椅子とのことでした。


日本庭園の中にある茶室「光華」も同時公開




邸内を彩るあかりとルネ・ラリックらのアールデコ家具やガラス器はのちほどご紹介。
<つづく>