春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「日本語学校の入学から卒業まで1年半コース」

2021-04-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
20210403
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校春(2)日本語学校の入学から卒業まで1年半コース

 私が勤務する日本語学校には、4月入学の2年コースと10月入学の1年半コースが設置されています。クラスによって日本語進度はことなりますが、この3月に卒業した学生は、2019年10月に入学以来、1年半で上級まで進み、日本語能力試験2級&1級レベルの実力をつけました。カリキュラムを紹介します。

 まず、一般的な日本語学校の授業時間数と日本語能力試験の級を示します。
日本語能力試験
4級(N4)初級教科書 300~400時間
3級(N3) 初中級   200時間
2級(N2)  中級    200時間
1級(N1) 上級~超上級      


2019年10月-2020年2月
 「みんなの日本語Ⅰ(初級前半)みんなの日本語Ⅱ(初級後半)」
 日本の小中学校英語授業で、小学校5年生から中学校卒業までに初級英語を習います。中学校卒業時に英検3級レベル。その中卒英検3級レベルと日本語の「日本語能力試験(Nテスト)」の3級レベルは、ほぼ同程度の外国語力です。
 Nテスト3級合格をめざして、一般的な日本語教育機関ではおよそ400時間の日本語授業で達成します。

 45分授業を一日4コマ。月-金の授業で20コマ。およそ15週-20週で300~400時間の授業をこなします。
 4月に入学した4月生は、だいたいその年の12月には初級コースを終了します。優秀な学生がそろったクラスでは4-9月に初級を終えます。12月までかかるのは、「ゆっくり進んだほうがいいクラス」
 2019年10月の第1期生は、初級後半の授業をすでに終了している学生が2人。初級前半から始める学生が3人でした。既修者には補講をすることにして、初級前半から授業を行い、5ヶ月18週およそ320時間で初級教科書を仕上げました。
(初級復習)
 2020年3月「TryN4」
 初級コースを終えた学生が、日本語能力試験N4級に合格するための復習用教科書。
(中級入門&中級)
 2020年4月-8月「中級へ行こう」「中級を学ぼう 前期中期」
 一般的な日本語学校では400時間で中級課程を終えます。日本の高校3年間で行う英語中級授業と同程度の日本語力を、45分授業コマ×週5日=20コマ(15時間)×25週=375時間
 この時期は、大学院入試のための英語授業と専門科目授業(化学、農学、デザイン学)などの授業も重なり、たいへんハードな時期になりました。
(中上級)
2020年10月-2021年1月「中上級の日本語」
 このころ、学生は、大学院入試が始まり、専門科目の口頭試問(面接試験)の練習や日本語論文試験の準備を続け、学生には厳しい時期でした。一番入試が早い東京大学大学院にチャレンジしたのですが、あと一歩及ばず、3人の受験生全員不合格。気落ちしている学生を励まし、次に備えて元気を出させるのも教師の仕事。
(上級)
2020年2月-3月
 学生4人の大学院2度目のチャレンジで、3人が修士課程合格。1人は補欠合格(半年間研究生として研究室で学んだ後に修士課程進学)。
 全員の進路が決まりほっとするなか、卒業旅行、卒業アルバム制作なども同時進行で行われ、日本語学習は以前ほどの「徹底学習!」ではなく、飲食店アルバイトを続けていた女子学生は、ほぼ毎日1限目に遅刻してきました。しかし、アルバイトと学会発表のための課外授業もあるので、遅刻をきつく叱ることはしませんでした。ちょい甘い措置。
 卒業生全員、大学院で他の日本人学生と同じ教室で学ぶに十分な日本語力を備えてきたことは明らかでしたので。

 卒業生が学んだ教室


 卒業生の将来。修士課程終了後は、博士課程進学希望の者、日本の会社に就職希望の者、国に帰って後進指導に当たりたい者、それぞれの希望の未来が待っています。
 卒業式のあと、卒業生はそれぞれの大学がある土地を互いに訪問し合う旅行の計画をたてていました。
 たのしい大学院生活になりますように。それぞれの研究が成果を生みますように。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「日本語学校卒業式」

2021-04-01 00:00:01 | エッセイ、コラム
20210401
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校春(1)卆業式

 春庭が勤務している日本語学校。2019年に開校。2019年9月の開校式と2019年10月の入学式は、理事長が研究員として所属している東京大学のホールを貸し切りにして、来賓を招いての「初めよければ~」精神の大がかりな式を行いました。
 2019年10月入学生は、5人だけ。令和の元号切り替えにともなう学校設立認可が5月まで遅れ、入管ビザ締め切りの6月に申請ができたのは5人にとどまったのです。転校生がひとり入校しましたが、一人は家族の事情で帰国。ひとりは体調を崩し療養のため帰国。卒業式に臨むのは4人です。

 4人はそれぞれとても優秀な学生で、最初に担当する教師としてはとてもラッキーな教室でした。
 私は、大学日本語教育機関で日本語教育を担当してきた25年の間「国費留学生」を担当してきました。国を代表して日本の文科省の給費奨学生に選ばれた超優秀な学生に教えるのは、教師としてはらくちん。1を聞き10でも20でも悟ってくれるし、英語を媒介語にできたので、私の下手な英語でも役にたちました。

 2019年入学生は中国人でしたから、中国語バイリンガルの若い日本語教師は生活面でも親身に援助し、学生ととても仲良くなっていました。
 昨年3月4月の緊急事態宣言後、オンライン授業に切り替わったときは、WiFi接続の不都合から、私はリモート授業ができませんでした。教室での授業再開後、学生は大学院入学準備の英語授業もあり、専門科目の入試問題準備もありましたが、日本語もよく勉強し、どんどん日本語力が伸びました。

 学院は、「進路支援センター」という部署を設け、元大学教授ふたりが進路指導にあたりました。なんとしてもよい大学院進学を成功させたいという、熱心な指導によって、1人は公立大学大学院、2人は国立大学大学院修士課程、ひとりは国立大学大学院研究生(10月に修士課程進学)という進路が決まりました。

 デザイン学専攻の学生は、修士課程入学前に学会発表をこなす、という快挙。日本語学校学生が学会発表を行ったのは、おそらく日本に多数ある学会発表の中でも異色だったろうと思います。
 農業環境学専攻の学生は、「太陽光発電パネル設置とパネル下の土地利用農業の可能性」という論文をある審査に応募し、残念ながら選外とはなりましたが、実例研究としてとても立派な研究になっていました。
 研究生として研究室に入る化学専攻の学生は、3月から大学院研究室に参加し、研究を始めています。

 4人の卒業生がそれぞれ卒業後の未来をみすえ、新しい勉学の場に希望を持って卒業することができ、送り出す教師達も誇らしく思っています。
 卒業証書授与


 卒業式はコロナ禍ということで、予定のホールをキャンセルし、ゲストなし。歌、音曲なし。全員マスク。学校内の教室で、在校生出席も「次回卒業する気持ちを持つ学生」にかぎり、こじんまりと行われました。
 しかし、先生達の温かいはげましのことばも、在校生からの「送る言葉」も、胸に染みるとてもよい式となりました。

 パソコン設置の準備中


 困難な時代ですが、若者が希望を持って巣立つのをみることは、老いの心も奮い立たせてくれます。私が元気にいられるのも、若い人々の奮励努力の場に身を置くことができるおかげと、学生達に感謝しています。

 みんな、元気でね。これからの活躍をお祈りしております。
 
 卒業式衣装。下はユニクロ780円で買ったキュロットパンタロン。

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする