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ぽかぽか春庭「中国的漢字ふりがな」

2024-03-05 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240305
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春庭文字表記(7)中国的漢字ふりがな

 春庭アーカイブ。何度目かの再録です。
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2009/04/05
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(5)中国的漢字ふりがな

 中国人大学院修士課程修了学生への漢字テスト。漢字にひらがなで読み方をふらせる「ふりがな試験」です。
 長音、濁音と清音、促音(つまる音)、拗音(きゃきゅきょなど)の聞き取りが弱い学生が多いので、仮名をふらせると、この発音の間違いがよくわかる。また、地方の方言によって、RとN、RとTの音の区別がむずかしい学生がいるので、この発音のまちがいも、ふりがなでわかります。熱心に「れっしん」と仮名をふった学生、RとNの区別がつかない中国南方の出身者と思われます。日本人にはRとLの音の区別がわからず同じ音に聞こえるように、中国南方地域ではRとNの音が「同じ音」に聞こえるからです。

 文法の試験でも、発音の間違いによって、×にされてしまう学生もいます。たとえば、「もし、都合が<  >たら、遊びに来ませんか」という文の< >に「いい」という形容詞を活用させて記入する問題で、正解は「いい」を活用させ「もし都合がよかったら、遊びに来ませんか」なのですが、促音の聞き取りを苦手とする人たちは、しばしば「もし、都合が よっかたら~」と、書いてしまう。促音の聞き取りと発音はむずかしいので、なかなか促音を正しく発音できないのです。母音の聞き取りも「ん」も難しい。

 ふりがなの間違いを書き出してみると。
 合格こうかく 兄弟きゅうたい 出発しゅぱつ・しょうぱつ 条件じょけん 条件じょっけん 事故じこう 給料きゅうりょ 税金ぜきん・ぜんきん 熱心ねしん・れっしん 趣味しゅうみ・しゅっみ 種類しょうるい 長所ちょうしょう 迷惑めんわく 種類しゅうるい・しょうるい 平均点へいけんてん・へいきんてい 

 朝鮮族の学生は、文法はよくできます。朝鮮語は日本語と同じ文の並べ方だから。でも、発音が苦手です。漢字ふりがなでは、朝鮮族の苦手な発音がよくわかります。朝鮮語は語頭には必ず清音になり、語の中では濁音になりますから、合格を「こうがく」と書く学生もいるし、条件を「ちょうけん」と書く学生もいる。税金せいきん 洗濯物せんだくもの、など。清濁(無声音と有声音)の聞き分けはたいへん難しい。
 
 日本の小中学生高校生への漢字読み仮名テストは、漢字の読み方を覚えたかどうかをチェックするテストなのですが、中国人大学院学生への漢字テストは、「発音のまちがい」をチェックするテストになります。もちろん、漢字の読み方そのものを覚えていなくて、「税金を納める」に「ぜいきんを なめる」「ぜいきんを のうめる」と書いた学生は音読みの「納」ナッ、ノウを覚えていて、訓読みを忘れたのだということがわかります。
 間違える人もいますが、ほとんどの学生が、ふりがながよくできており、さすがエリート中のエリート大学院生だと感心しています。

 非漢字圏学生への漢字テストだと、「兄弟あにいもと」とか、「出発ではつ」などはまともなほうで、どうしてこんな読み仮名をつけるかなあという笑えるふりがなが多い。非漢字圏の漢字学習者たち、知恵をふりしぼってユニークな読み方をひねりだすので、講師室ではいつも漢字担当者たちが「本日の笑えるふりがな」を披露しあって楽しんでいました。

 現在担当の中国人大学院生たちのふりがなには、「笑える」ものはなくてつまらないですが、発音の間違いがよくわかる結果を見て、今後の発音教育に生かしていこうと思っています。


<つづく>
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ぽかぽか春庭「和製漢語」

2024-03-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
29240303
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>文字表記と語彙(2)和製漢語

 春庭アーカイブです。
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2009/04/24
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(1)和製漢語のはなし
 
 有栖川宮熾仁親王が錦の御旗を押し立てて江戸へ入城し、時代は明治。文明開化は疾風怒濤で世を変えていきました。
 明治時代、西欧の思想や科学・産業がどっと日本に入ってきました。福澤諭吉、西周らは、それらの新しい概念の語を、苦心して日本語に翻訳しました。日本語へ翻訳したといっても、和語ではなく、「和製漢語」を案出したのです。

 日本語が漢字表記を取り入れて以来、千年の間に「日本製漢字語」がぽつぽつと生まれて定着してきました。
 その中には、やまとことばでは「おほね」だった野菜に「大根」という当て字を用いたために、現在では音読みの「ダイコン」が定着している漢字語や、「ひのこと」の当て字「火事」が「カジ」として広くもちいられている「和語→漢字語」もあるし、日本で漢字の造語法を利用して作られた漢字語もあります。たとえば、芸を仕事とする者だから「芸者」、三本の糸を用いる楽器「三味線」など、中国の漢語にはなかった漢字語を用いてきました。

 幕末から明治時代にかけて、英語その他の西洋語から「科学」「哲学」「郵便」「野球」などが翻訳されました。日本語では「野球」と翻訳したBase ballは、中国では「棒球」と翻訳するなど、日中でことなる翻訳をした語がそれぞれに定着した語もありますが、多くの和製漢語がそのまま中国語にも定着しました。明治時代以後に来日した「清国留学生」たちが、日本製漢語を中国へ持ち帰ったためです。
 幕末以降、西欧由来の新概念や事物、個人・社会・主義などの翻訳された和製漢語を逆輸入した中国の人々は、もともと中国の漢語だったと信じて使っています。

 もともとあった中国の漢語、「自由」「観念」「福祉」「革命」などに、西洋の概念をあてはめて、新しい意味を持たせた語もあります。「自然」は日本語も「じねん」と読むときは仏教用語であり、「万物が現在あるがままに存在しているものであり、因果によって生じたのではないとする無因論」「ひとりでに、おのずから為す」という意味を持っていました。英語のnatureの翻訳語として「自然しぜん」が採用されました。

 そのため、中国語母語話者は、「革命など、もともと中国語にあった語彙だ」と思っています。もともとの「革命」の意味は、「命(天命)を革(あらた)める」という意味でした。王朝の交替などの場合に使われていた語を、英語のrevolution(語源は「回る、回転する」)にあてはめた語です。現在の中国では、現在古代中国語の意味としてより、日本が意味を改編した「revolution」の意味で使っています。

 言葉が社会に定着して使われるようになれば、その語がどこからやってきたかなどと言うことは、まったく気にせずに、もともとある言葉として根を下ろします。これは、日本人が煙草や天麩羅を、ポルトガルから来たなどと意識せずに「もともとの」日本語」と信じて使っているのと同じです。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「翻訳新漢語」

2024-03-02 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240302
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春庭文字表記と語彙(1)翻訳新漢語

 春庭アーカイブです。中国赴任中にUPした漢字についての再録です。
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2009/04/21
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>中国と外来語(6)翻訳新漢語

 日本語の会社名、漢字ならそのまま採用されるかというと、中国語での意味が問題になります。意味がOKなら、「松下」はそのままの文字でソンシャァと読まれるし、「東芝」はトンジー。

 しかし、イトーヨーカ堂は、中国進出にあたって、日本語漢字表記の「伊藤羊華堂」を採用しませんでした。「羊華」だとイメージがよくないというのです。中国や中華をイメージする「華」に「羊」を組み合わせたのがあまりよくないのかもしれません。あえて悪いってものを選ぶことはなく、「華堂商場」という表記にしました。
 中国語は、外来の語を導入するには、日本語ほど自由にはいかないことがわかります。人名地名は音訳ですが、その他はほとんど漢語に翻訳して取り入れます。

 室町時代末期に、ポルトガル語が日本語に入り込み、いくつかのポルトガル語由来のことばが現在も使われていることを紹介しました。タバコ煙草、カルタ歌留多、テンプラ天麩羅、などでした。これらは、ポルトガル語の発音をそのまま取り入れていますが、明治時代、西洋語を取り入れたときは中国方式でした。
 開国近代化にあたって、欧米の物品・思想の導入が急務でしたから、つぎつぎと翻訳語が考案されました。明治の日本人は、欧米語の翻訳に苦心奮闘したのです。
 日本語としての翻訳漢語(新漢語)成立について。

 スピーチを演説、ディベートを討論と訳したのは、福沢諭吉である、など、翻訳した人の名が分かっている語が多い。
 サイエンスを翻訳して「科学」、フィロソフィを翻訳して「哲学」、ベイスボールを翻訳して「野球」。デモクラシィを翻訳して「民主」「民本」

 その他、「郵便」「社会」「運動」「意識」「進化」「唯物論」「左翼」「階級」「主義」「共産」「共和」などなど、多くの西欧思想、西欧の物品の名が翻訳されて明治の世に導入されました。
 これらの和製漢語(新漢語)は、中国へ輸出されました。清朝から明治日本に留学していた魯迅らが伝えたのです。

 「大型ブックストアとして代表的な本屋である紀伊國屋書店にもときどき行きますが、私がよく買いにいくブックショップは、駅前にある個人経営の書店です」と、並べて書いても混乱がなく、ちゃんと理解できます。

 本屋(ほんや)は和語です。書店は漢語です。ブックショップは英語由来カタカナ語です。
 ことばのニュアンスを使い分け、どの語も文脈に合わせて使えますし、ブックストアなんて語は使いたくない、と思えば、使わずにすみます。

 日本語の「本屋」は中国語では「書店」です。ただし、日本語で「書店」と表記されたものは、多くの場合、中国語では「出版社」を意味します。「紀伊國屋書店」と表記されていると、中国語では、店売りの本屋としてより「出版社」として受け取られます。
 同じ漢語でも日本語と中国語で意味合いの異なる熟語があることはすでにお話しました。

 同じ動きをやっても、ある人がやればセクシーで、ある人がやれば、???!!!になることもある。
 春庭のベリーダンス練習、第2回目を20日の昼休みに行いました。ビヤ樽ベリーダンス、本来のベリーダンスとはまったく意味合いが異なっておりますが、、、はい、笑いのとれる日本語教師。
 

<つづく>
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