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ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>文字表記と語彙(2)和製漢語
春庭アーカイブです。
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2009/04/24
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(1)和製漢語のはなし
有栖川宮熾仁親王が錦の御旗を押し立てて江戸へ入城し、時代は明治。文明開化は疾風怒濤で世を変えていきました。
明治時代、西欧の思想や科学・産業がどっと日本に入ってきました。福澤諭吉、西周らは、それらの新しい概念の語を、苦心して日本語に翻訳しました。日本語へ翻訳したといっても、和語ではなく、「和製漢語」を案出したのです。
日本語が漢字表記を取り入れて以来、千年の間に「日本製漢字語」がぽつぽつと生まれて定着してきました。
その中には、やまとことばでは「おほね」だった野菜に「大根」という当て字を用いたために、現在では音読みの「ダイコン」が定着している漢字語や、「ひのこと」の当て字「火事」が「カジ」として広くもちいられている「和語→漢字語」もあるし、日本で漢字の造語法を利用して作られた漢字語もあります。たとえば、芸を仕事とする者だから「芸者」、三本の糸を用いる楽器「三味線」など、中国の漢語にはなかった漢字語を用いてきました。
幕末から明治時代にかけて、英語その他の西洋語から「科学」「哲学」「郵便」「野球」などが翻訳されました。日本語では「野球」と翻訳したBase ballは、中国では「棒球」と翻訳するなど、日中でことなる翻訳をした語がそれぞれに定着した語もありますが、多くの和製漢語がそのまま中国語にも定着しました。明治時代以後に来日した「清国留学生」たちが、日本製漢語を中国へ持ち帰ったためです。
幕末以降、西欧由来の新概念や事物、個人・社会・主義などの翻訳された和製漢語を逆輸入した中国の人々は、もともと中国の漢語だったと信じて使っています。
もともとあった中国の漢語、「自由」「観念」「福祉」「革命」などに、西洋の概念をあてはめて、新しい意味を持たせた語もあります。「自然」は日本語も「じねん」と読むときは仏教用語であり、「万物が現在あるがままに存在しているものであり、因果によって生じたのではないとする無因論」「ひとりでに、おのずから為す」という意味を持っていました。英語のnatureの翻訳語として「自然しぜん」が採用されました。
そのため、中国語母語話者は、「革命など、もともと中国語にあった語彙だ」と思っています。もともとの「革命」の意味は、「命(天命)を革(あらた)める」という意味でした。王朝の交替などの場合に使われていた語を、英語のrevolution(語源は「回る、回転する」)にあてはめた語です。現在の中国では、現在古代中国語の意味としてより、日本が意味を改編した「revolution」の意味で使っています。
言葉が社会に定着して使われるようになれば、その語がどこからやってきたかなどと言うことは、まったく気にせずに、もともとある言葉として根を下ろします。これは、日本人が煙草や天麩羅を、ポルトガルから来たなどと意識せずに「もともとの」日本語」と信じて使っているのと同じです。
<つづく>