『改めて日本語を考える』その25。毎日使う言葉も改めて考えると面白い。よく『はるか彼方』と使うが、この『かなた』はかなり遠いところと言う意味で使う。彼方の由来は何なのであろうか。
実は『か』は『こそあど』言葉の一つで、近くにあるものは『此方』、少し遠いものは『其方』、わからない場合は『何方』、また『あなた』も指示語として使う場合は『彼方』と書くのである。漢字にすると意味がよくわかる。確かに時代劇で相手のことを『其方(そなた)』と使っている。
2つ目。『途方に暮れる』『途方もない』などと使うが、気になるのが、途方の意味である。この『途方』を辞書で調べると①多くの方向、向かう方向、②てだて、方法、③すじ道、道理などと出てくる。『途方に暮れる』は②の手立てや方法が尽きてどうしていいかわからないという意味。『途方もない』は『道理があわないほどとんでもない』から転じて並々ならぬの意味に使うことが多い。
同じような言葉に『途轍』がある。『途方途轍』とも使うが、これは言葉を重ねて強調しただけで③の意味である。
最後に『莫大』、大変量が多い場合に『莫大な金塊』という使い方をするが、辞書を引くと伯樹という木の果実を乾燥させたもの、とも書かれている。この莫大に水で戻すと大きく膨張し、この膨張した果肉は刺身のつまや懐石料理の酢の物などに用いる。さらに調べると『莫』には①虚しい、②(否定する言葉)、③果てしなく大きいの3つの意味があり、③の意味で使っていると思われる。つまり『果てしなく大きい』という意味であるから、これは先程の果実が元の大きさに比べて驚くほど大きくなるため、莫大とつけられたのだろう。
最後に蛇足。『莫大小』と書いてなんと読むかご存知ですか?割に有名だから読める人も多いだろう。正解は『メリヤス』、編み物の古い呼び方である。外来語でスペイン語で靴下を意味するmediasの読みに漢字を当てたもの。ただ、『莫』は先程の②の否定を意味する使い方で伸び縮みするから『大きくも小さくもないな』という意味を無理やり漢字を当てただけで読みは関係ないようである。色々と調べてみると面白い。