何故か昔から雨がそれほど嫌いでなく雨が降っていると呑みたい気分になるんです。
夕方に誰か来ないかな~・・・と待っていたけれど・・あんな天気の日曜は皆家を出る気にならないのかだ~れも来てくれませんでした
昼過ぎに美由紀は友達と出かけ、僕は芋焼酎と純米酒を買いに出て三時四十五分より茶の間で一人テレビを点けて掛け時計を見守っていました
仕事を辞めたときから特別な会などがない限り四時を過ぎないと呑まないと決めているから待つしかないのです
そして四時 大きなグラスに焼酎を入れスダチを絞って湯を注いで呑み始めました
待った甲斐があってその美味いこと、美味いこと
どんどん呑んで気持ちよくなってきた頃に美由紀が戻ってきました。
「よ~けやったわ~」といい気分で言ったら「痛風いけるんで!」と忘れていた言葉を浴びせられましたが「焼酎やけん」と食べてしまった肴の皿を見ながら答えました
正月過ぎに高松と香川の山登りから戻ったあとそのままバスで美由紀も寝ています
毎日寝る前に「ええだろ」と聞くのですが「いっこも!」(こちらの方言で全然と言う意味)としか答えは戻ってきませんが
今日も朝から雨でした。 この前書いた作文を「すけべえやな~・・けどおもしろそう」と言ってくれた人がいたので続きを少しアップしました
お暇でしたら読んで見てください。
二章
「小夜」は源氏名で本名ではない。今年27歳になる。風呂に入りベッドに横になってから寝付けないまま考えていた。
もう朝が近い時間である。警察では単なる事故として処理されたが、いくら考えても安藤の事故は誰かの手が加わっているように思うのだ。
安藤誠三に初めて会ったのは五年前だった。
親の勧めで結婚を決めた男に別の女性がいることを知って高知の実家を飛び出し、頼りになりそうな高校の先輩を頼って大阪に来たのが21だった。
友達を頼って出てきたと言っても米穀通帳が無ければ米が買えなかった時代に家出娘の辿る道はネオンの世界にしかなかった。
ただ幸運だったことは友達の上司が口を利いてくれたバーの経営者やそこに集まるお客さんの質が良かったことだった。
衣装代の支払いに殆ど消えて手取りの給料は少なかったが心配した田舎者を笑うことも、無理に体を売らされることもなかった。
初めの半年は言葉遣いや礼儀作法を覚えるのに必死だったが、予想以上に愉しく怖い思いもせずに大阪の水に慣れる事が出来た。
そんな時にお客として店にきた安藤の席についたのが最初の出会いだった。 小夜の身長は159センチで女としては高めだが安藤は170以上で肩幅が広く腕も指も太くがっしりしていた。
初めて見たときは少し怖かったが話すと本当のお兄さんと言う感じだった。 小夜に弟はいるが兄は居なかった。
お酒を呑んでも変わらない優しさと時々くれる小さなプレゼントに奥さんや子供がいることは解っていても小夜の心は傾いていった。
週に一度、来る日が楽しみで来てくれると涙が出そうになった。 一緒に来る人はその時々で変わったり同じ顔だったりしたがいつも小夜を指名してくれた。
支払いは毎回安藤が現金でしていたので店にとっても上客でママの受けも良く勘定も良心的だった。
そんな安藤と男と女の関係になったのは半年ほど後だった。
安藤のセックスは会話では想像できない有無も言わせぬ一方的なもので服を脱がせて自分も脱ぐといきなり乗りかかってくる。
そこにはいたわりも思いやりも感じられないのだが何故かさっぱりしていて気持ちが良かった。
そんな関係になった後も殆ど態度が変わらない。変わったのは毎週顔を出してくれた日に後で落ち合ってホテルへ行く生活となった。
そんな生活が三年余り続いた。
初めから妻子がいる事は解っていたのでそれ以上求めることもお金が欲しいとは思わなかった。 時に寂しく思うことはあっても安藤に会えることは幸せだった。
安藤が「店をしないか」と言った時は驚いた。少し考えて全て任せてみようと思った。 それらしい返事をすると一ヶ月ほど後に店を見つけてきて勤めていたママさんにも話しをつけてくれた。
「バー小夜」がミナミで開店して一年になる。前の経営者から「居抜き」で買ったので看板を変えるだけで営業できた。店にいた女の子が4人と板前が残ってくれた。
支払いがどのようになっているのか知らなかったが安藤が亡くなった後、何も取立てが無かったから払いは全て安藤が済ませていたのだ。
安藤は相変わらず週に一度だが数人を連れて来てくれた。支払いも以前同様毎回現金で払ってくれる。
安藤の勧めでツケはしない代わり女の子は揃えた。 普通バーでは女の子の名前でツケをする。その人が払ってくれないと女の子が負担しなければならない仕組みだったから日当を全て現金で毎日支払う小夜の店はホステスも喜んだ。
店とアパートの家賃、仕入れ代、給料を払うと初めは殆ど残らなかったが最近は少し余裕も出てきたから安藤の考えは間違ってなかった事になる。 安藤が亡くなった後少し態度が変わった人はいたが安藤建設の人達は良く来てくれた。
安藤はセックスを除けば全てに慎重で人の心を読む力があった。 付き合いが長くなるにつれ気性の良さを感じた。
「竹を割ったような」と言う言葉があるが、とにかくさっぱりしていた。 仕事が危険そうなので小夜が心配して訊ねたら現場に出て高いところに上がる場合も命綱を移動の度に必ず掛け直すと言っていたほど慎重な安藤だった。
そんな安藤が不注意で死ぬと思えなかった。
初めに考えていたより少し仕掛けを大きくしました
夕方に誰か来ないかな~・・・と待っていたけれど・・あんな天気の日曜は皆家を出る気にならないのかだ~れも来てくれませんでした
昼過ぎに美由紀は友達と出かけ、僕は芋焼酎と純米酒を買いに出て三時四十五分より茶の間で一人テレビを点けて掛け時計を見守っていました
仕事を辞めたときから特別な会などがない限り四時を過ぎないと呑まないと決めているから待つしかないのです
そして四時 大きなグラスに焼酎を入れスダチを絞って湯を注いで呑み始めました
待った甲斐があってその美味いこと、美味いこと
どんどん呑んで気持ちよくなってきた頃に美由紀が戻ってきました。
「よ~けやったわ~」といい気分で言ったら「痛風いけるんで!」と忘れていた言葉を浴びせられましたが「焼酎やけん」と食べてしまった肴の皿を見ながら答えました
正月過ぎに高松と香川の山登りから戻ったあとそのままバスで美由紀も寝ています
毎日寝る前に「ええだろ」と聞くのですが「いっこも!」(こちらの方言で全然と言う意味)としか答えは戻ってきませんが
今日も朝から雨でした。 この前書いた作文を「すけべえやな~・・けどおもしろそう」と言ってくれた人がいたので続きを少しアップしました
お暇でしたら読んで見てください。
二章
「小夜」は源氏名で本名ではない。今年27歳になる。風呂に入りベッドに横になってから寝付けないまま考えていた。
もう朝が近い時間である。警察では単なる事故として処理されたが、いくら考えても安藤の事故は誰かの手が加わっているように思うのだ。
安藤誠三に初めて会ったのは五年前だった。
親の勧めで結婚を決めた男に別の女性がいることを知って高知の実家を飛び出し、頼りになりそうな高校の先輩を頼って大阪に来たのが21だった。
友達を頼って出てきたと言っても米穀通帳が無ければ米が買えなかった時代に家出娘の辿る道はネオンの世界にしかなかった。
ただ幸運だったことは友達の上司が口を利いてくれたバーの経営者やそこに集まるお客さんの質が良かったことだった。
衣装代の支払いに殆ど消えて手取りの給料は少なかったが心配した田舎者を笑うことも、無理に体を売らされることもなかった。
初めの半年は言葉遣いや礼儀作法を覚えるのに必死だったが、予想以上に愉しく怖い思いもせずに大阪の水に慣れる事が出来た。
そんな時にお客として店にきた安藤の席についたのが最初の出会いだった。 小夜の身長は159センチで女としては高めだが安藤は170以上で肩幅が広く腕も指も太くがっしりしていた。
初めて見たときは少し怖かったが話すと本当のお兄さんと言う感じだった。 小夜に弟はいるが兄は居なかった。
お酒を呑んでも変わらない優しさと時々くれる小さなプレゼントに奥さんや子供がいることは解っていても小夜の心は傾いていった。
週に一度、来る日が楽しみで来てくれると涙が出そうになった。 一緒に来る人はその時々で変わったり同じ顔だったりしたがいつも小夜を指名してくれた。
支払いは毎回安藤が現金でしていたので店にとっても上客でママの受けも良く勘定も良心的だった。
そんな安藤と男と女の関係になったのは半年ほど後だった。
安藤のセックスは会話では想像できない有無も言わせぬ一方的なもので服を脱がせて自分も脱ぐといきなり乗りかかってくる。
そこにはいたわりも思いやりも感じられないのだが何故かさっぱりしていて気持ちが良かった。
そんな関係になった後も殆ど態度が変わらない。変わったのは毎週顔を出してくれた日に後で落ち合ってホテルへ行く生活となった。
そんな生活が三年余り続いた。
初めから妻子がいる事は解っていたのでそれ以上求めることもお金が欲しいとは思わなかった。 時に寂しく思うことはあっても安藤に会えることは幸せだった。
安藤が「店をしないか」と言った時は驚いた。少し考えて全て任せてみようと思った。 それらしい返事をすると一ヶ月ほど後に店を見つけてきて勤めていたママさんにも話しをつけてくれた。
「バー小夜」がミナミで開店して一年になる。前の経営者から「居抜き」で買ったので看板を変えるだけで営業できた。店にいた女の子が4人と板前が残ってくれた。
支払いがどのようになっているのか知らなかったが安藤が亡くなった後、何も取立てが無かったから払いは全て安藤が済ませていたのだ。
安藤は相変わらず週に一度だが数人を連れて来てくれた。支払いも以前同様毎回現金で払ってくれる。
安藤の勧めでツケはしない代わり女の子は揃えた。 普通バーでは女の子の名前でツケをする。その人が払ってくれないと女の子が負担しなければならない仕組みだったから日当を全て現金で毎日支払う小夜の店はホステスも喜んだ。
店とアパートの家賃、仕入れ代、給料を払うと初めは殆ど残らなかったが最近は少し余裕も出てきたから安藤の考えは間違ってなかった事になる。 安藤が亡くなった後少し態度が変わった人はいたが安藤建設の人達は良く来てくれた。
安藤はセックスを除けば全てに慎重で人の心を読む力があった。 付き合いが長くなるにつれ気性の良さを感じた。
「竹を割ったような」と言う言葉があるが、とにかくさっぱりしていた。 仕事が危険そうなので小夜が心配して訊ねたら現場に出て高いところに上がる場合も命綱を移動の度に必ず掛け直すと言っていたほど慎重な安藤だった。
そんな安藤が不注意で死ぬと思えなかった。
初めに考えていたより少し仕掛けを大きくしました