ホメイニの登場は、そしてそのカリスマ的人気は他国にとって計算違いのものだったらしい。そんな事情をわたしは矢作俊彦+大友克洋の「気分はもう戦争」で知ったのだけれど(笑)、その影響もあってか、イランのアメリカ大使館籠城事件は千日手のごとく膠着した。
そこでCIAが持ち出したのが「アルゴ」作戦。架空のSF映画を撮影するためという理由でエージェント(ベン・アフレック)は潜入し、大使館員を救出しようとする。
アラブ人の表情がよくわからないため(他民族を蛮族扱いするのはハリウッドの得意技)、画面に異様な緊張感がただよう。
特にしんどいのが空港の場面。わたしはもう金輪際海外旅行などするものかと思いました。
この映画がすばらしいのは、くだらないB級映画に血道をあげる映画界や、他国に実は迷惑もかけているアメリカという存在への韜晦があることだ。
あまりにもばかばかしい作戦なのでいかにもアメリカならやりそう、というあたりを、そのハリウッド自身がやっているあたり、泣かせる。特に、自分の仕事がそんなことに役立つのかと最後まで半信半疑だったアラン・アーキンがいい感じ。
実際にこの作戦にたずさわったエージェントを意識したか、ベン・アフレックはほとんど表情を変えない。しかし、リスクの大きな作戦でも、交渉人として人質を絶対に見捨てないという職業的誇りが感じられてすばらしい。肝心なところでいつもポカをするのがCIA、という定番すら利用したストーリーがなによりも取り柄。ほんとにこんなことやってたとはなあ。
さて、この映画にはもうひとつ言いたいことがある。アメリカの公文書は25年経つと公開されるという大原則がある。
「機密情報は、原則として、原機密指定から25 年経過した年の12月31 日までには機密解除されなければならない」(大統領令3.3 条(a)項)
アルゴ作戦については、手柄話だからその前に公開されたけれども、失敗したとしてもいずれ国民に知れる。
それをなんですか日本の特定秘密保護法案とかいうやつは。秘密にする内容は事実上不特定だし、公開は60年後?
民主主義が根付いていない、やはりこの国は蛮族の地なのかも。