PART17「春よ、来い」はこちら。
1995年はむちゃくちゃな年だった。1月に阪神大震災、3月にオウムによる地下鉄サリン事件と警察庁長官狙撃事件、9月に沖縄で米兵による少女暴行事件、10月にオウム幹部にTBSが事前に坂本弁護士のインタビュー映像を見せていた、いわゆる「TBSは死んだ」(筑紫哲也)問題……朝ドラよりもワイドショーの方がはるかにドラマティックだった。
そんななか始まったのが「走らんか!」。長谷川法世の「博多っ子純情」の翻案。わたしはあのマンガの大ファンだったので、知っていれば見ていたかも。コペルニクス的転回、とか「知っとぉや?」とかのエッチな展開はあったんだろうか。なかったろうな。
ちなみに、「博多っ子純情」は光石研主演、曽根中生監督で78年に映画化されていて、これは傑作でした。DVDが出ているみたいなんで近く特集します。
「走らんか!」の主演は三国一夫。身長187㎝で新潟出身。六平がモデルなのにどうして(笑)。視聴率はまたしても最低を更新。一気に20.5%まで降下。
どうなることかと思われた朝ドラ。しかしここで乾坤一擲「ひまわり」が登場。弁護士のお話。主演はほとんど実績のなかった松嶋菜々子と、前年に「大地の子」でブレイクした上川隆也。主題歌は山下達郎の「Dreaming Girl」いい曲ですよね。クランクアップのときに山下が駆けつけて生でこの曲を歌ったという泣かせるエピソードもある。
わたし、このドラマは見てました。なにしろ面白い。松嶋、夏木マリ、藤村志保という、三世代の美女がクールな家族を演じていて気持ちよかった。
脚本は、直前にNHKでオンエアされた「照柿」(高村薫原作)を書いた井上由美子。これがもう大傑作。合田雄一郎刑事役は三浦友和で、彼と運命の女を演ずる田中裕子がうまいのは当然としても、合田の旧友を演じた野口五郎がすばらしかったんですよ。以降、井上さんはキムタクのドラマなどでビッグになっていくのだけれど、「照柿」のDVDを誰か持っていたらご一報ください(笑)。以下次号。