リズム、リズム、リズム。大根仁の演出はこれにつきる。間(ま)の曲芸というか。
近作「湯けむりスナイパー」「モテキ」「まほろ駅前番外地」「リバースエッジ」に顕著だったのは、登場人物たちの語りと語りの呼吸が絶妙だということだ。ロックのPVを数多く撮っていることもあるだろうし、近ごろめずらしく脚本と監督を兼ねていることも影響しているだろう。この作品でも大根演出は絶好調だ。
“部活も勉強もしてこなかった”ふつうの(でもないのだが)高校生ふたりが、原作と作画をそれぞれ担当して少年ジャンプで連載を開始し、アンケートで1位をゲットできるか……これをジャンプの不滅の(でもいまでは誰も信じていない)スローガン「友情・努力・勝利」をベースに描く。
原作は大場つぐみと小畑健のDeath Noteコンビ。家庭や世間に関わり合うことなく、その道のことだけ始終考え、行動するという日本のスポ根漫画の王道を、マンガそのものの世界で描いている。
主役の佐藤健と神木隆之介が激しく魅力的。それに染谷将太が天才漫画少年として(「ラジャーですぅ」に笑った)、桐谷(ちびT)健太、新井(松ヶ根乱射事件)浩文、皆川(あまちゃん)猿時が新進漫画家としてからむ。面白くならないわけがない。みんなで飲みながらトキワ荘の故事にならったり、スラムダンクのやり取りを応用する場面はおかしかったなあ。
編集長リリー・フランキー、編集者山田孝之が、ジャンプのアンケート至上主義を体現。連載を決定する編集会議はリアル。
否定はされているけれども、ジャンプが数多の漫画家を使い捨てにしてきたことは確かだし、わたしはどちらかというと少年マガジン派だったので、リアルタイムでジャンプの盛衰を感じてはいない。あそこに行けばジャンプが土曜日に買える!的な盛り上がりとも無縁。
でも、マンガが自己実現の手法として確立することに(新人をひたすら発掘することで)ジャンプが貢献したことは疑いない。死屍累々たる青年たちの犠牲の上に成り立っていることも含めて、やはり漫画はすばらしいと思わせてくれる傑作。サカナクションの音楽も最高だ。ぜひ。