まだ8月半ばだというのに、秋雨前線が停滞して北海道を除いて全国的に雨の週末。線状降水帯も発生し西日本を中心に大雨が降り続き、各地で「大雨特別警報」が発令されており、50年に一度という極めてまれな雨量で命を守るための最善の行動を取ることが求められている。まずは、浸水したり、土砂崩れが起こるなどの大きな被害に遭われた方々にお悔やみを申し上げるともに、被災された全ての方々及び関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げたい。
東京も断続的に降り続いている。当然、予定していた遠征は中止にし自宅に籠らざるを得ない。また、1日の新型コロナウイルスの新規感染者が5,000人を超える東京。改めて自粛も迫られる昨今、この雨の週末は「運と偶然」どちらなのだろうか。
今年は、何年も追いかけてきた未撮影である希少種昆虫の貴重な姿を収めることに時間を費やしている。予めその種の生態を調べ生息環境や行動について学ぶ。広く知られた保護地域に赴いたり、生息地を一から探して遠征し、まずは図鑑的写真を撮る。これは、その種の特徴が良く分かり、更にその種の一番美しい姿・色彩を一番美しい時期に美しい写真にすることである。そして、最終的に羽化や産卵等の生態のステージを収めることが目標である。
しかしながら、撮影するためにはその種を前にしないことには先に進めない。予め生態を細かく学んでいても、生息地でその種に出会うのは、最後は「運」という時もある。本年6月に撮影したヒロオビミドリシジミやヒサマツミドリシジミは、将に運の良さが味方したと言える。
7月からは、ほとんど目標が達成できていない。信州の白馬、乗鞍、上高地へ通うこと4回。いずれもチョウとトンボの特定の種を撮影するためであったが、すべて惨敗。出会えれば何とか撮影はできるし、生息の確認ができれば、戦力を考えて再訪すれば良いが、出会いさえ叶わなかった。今年は、計画そのものを断念した種もある。例えば高山蝶。未見・未撮影で5年前から生息地に通っている。北アルプスの数か所では出会えず、今年は中央アルプスに行こうと計画したが、コロナの影響で登山に時間がかかることと、最盛期にあたる頃に天候が悪いことから断念せざるを得なかった。
昆虫に限らず自然相手に写真を撮っていると、偶然とまぐれもある。前記事の上高地の大正池の光景は、将に偶然の出会いであった。トンボを田代湿原で探索することが目的で、そのために降りたバス停が大正池。天気と時間も大正池に朝霧がかかる条件と合致していた。ただし、この偶然の出会いに十分と対応できる撮影機材を持っていなかったことが悔やまれる。
昆虫の写真では「まぐれ」が多い。「まぐれ」 の由来を辞書で調べてみると、動詞の「紛れる(まぎれる)」から転じた名詞「紛れ(まぎれ)」がなまって「まぐれ」となったようだ。つまり、多くの中に良い結果が紛れているということ。空中で静止しない飛んでいるチョウを撮る場合は、ハイスピードで連写して「まぐれ当たり」を期待するが、コツをつかむと確率が上がる。まぐれは、偶然とは違って技術向上で何とかなるものである。
連敗続きの上に、行動できない雨の週末。恨めしくも思うが、ここは様々なことを見直し考え直すきっかけにしたい。
運と偶然は異質なものだ。宝くじに当選するのは「運」ではなく「偶然」であり、意志の力ではどうにもならない。一方、運は意志の力で引き寄せることが出来る。昔から「運も実力のうち」とよく言う。運の無さや悪さは結果論であり、失敗には何らかの理由がある。学ぶべきことは学び、事前の準備を怠らず、努力と継続が必要である。結果が残せないという不平不満は負のオーラを生み出してしまう。諦めない限りは失敗ではないのだ。
まだまだ、昆虫の季節は続く。未撮影のトンボは探索を継続し、秋には、今年もサツマシジミ狙いで和歌山遠征を予定している。計画は多くないが、努力と継続で運を掴んでいきたいと思う。
ちなみに、雨と週末が重なったのは偶然だが、前線の停滞と大雨は、ある意味必然であろう。平成24年九州北部豪雨については「海洋の温暖化」との関係が検証されている。今回の豪雨の原因も地球温暖化が関係している可能性は高い。シチリアでは、最高気温が48℃、カナダでは49.6度を記録する熱波に襲われている。これらは地球温暖化の急なペースだとする研究結果が発表されている。地球規模で起こっている異常気象の元凶は我々人類である。努力と継続で温暖化を止めなければ、運の尽きである。
以下には、運と偶然、そしてまぐれにまつわる昆虫写真を掲載した。
今年撮った駄作の中から4枚。偶然に3種類のチョウが集まっていたが、まぐれ当たりが失敗し、全開翅の瞬間が撮れなかったコムラサキ。別のトンボ探索中に、偶然目の前の草に止まっていた羽化して間もないルリボシヤンマ。次に、過去撮影から2枚。まぐれ当たりで撮れたモンキチョウ。普通種でも、こんな写真を連発できたら嬉しいものである。次に偶然とまぐれが重なって撮れたエゾイトトンボ。これは、二度と同じシーンは撮れない奇跡の一枚である。そして最後は、先月遭遇したツキノワグマである。ツキノワグマは、トンボを探索中に前方30mほどの場所に偶然出現した。運よく襲われることはなかった。
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。
コムラサキとヤマキマダラヒカゲとキバネセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(撮影地:長野県 2021.7.24 8:05)
コムラサキ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 125(撮影地:長野県 2021.7.24 8:19)
羽化して間もないルリボシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影地:長野県 2021.8.08 8:05)
羽化して間もないルリボシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影地:長野県 2021.8.08 8:05)
モンキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(撮影地:岩手県 2010.7.17 14:39)
エゾイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2018.6.30 12:27)
ツキノワグマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2021.7.24 9:51)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます