11月23日勤労感謝の日。今年最後の祭日は冷たい雨である。かつて、この時期には信州・美ヶ原高原によく出掛けていた。ビーナスラインが冬期通行止めになる前に霧氷を撮るためである。霧氷が付くには様々な自然の条件が重なる必要があり、その条件と私の休日が合致しなければ撮影は叶わない。今年は11月16日と19日に薄っすらと霧氷が付いたようだが、肝心の私の休日とは合わなかった。
美ヶ原高原では、2011年、2012年、2013年、そして2017年に霧氷を撮影しているが、例年11月後半から見られた霧氷が年々見られなくなってきたように思う。前述のように様々な条件の合致が必要だが、条件の1つが気温である。氷点下になることが減ってきているのである。気象庁が発表している過去の気象データから美ヶ原高原の11月における「マイナス5℃以下の日数」「平均気温の推移」「最低気温の推移」をグラフ化してみた。グラフは、クリックすると拡大表示される。
以下3つのグラフから共通して言えることは、年々暖かくなっているということである。これは、温暖化の影響と言って良いのではないだろうか。
干ばつによる森林火災や豪雨による洪水と土石流。近年こうした観測記録を更新する異常気象が世界中で相次いでいる。背景にあると指摘されるのが気候変動である。
ここ数十年の気候変動は、氷河の融解や海面水位の変化、洪水や干ばつなどの影響、陸上や海の生態系への影響、食料生産や健康など人間への影響も観測され始めており、その気候変動の原因は地球温暖化と言われている。様々な災害には社会的な要因や偶然性も大きく関わっているが、イベント・アトリビューション(Event Attribution)という新しい技術によって、地球温暖化と異常気象や災害の因果関係が具体的に示されつつある。
大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて40%も増加し、陸域と海上を合わせた世界平均地上気温は、1880年から2012年の期間に0.85℃上昇している。有効な温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末の世界の平均気温は、2.6~4.8℃上昇すると予測されている。東京では、現在の真夏日は年間約46日だが、21世紀末には年間約103日、1年の3割近くが真夏日となると言われている。また平均海面水位は、最大82cm上昇する可能性が高いと予測されており、標高の最も高いところでも海抜4.6メートルしかない南太平洋の島国ツバルは、海面が上昇した場合、水没する危険性があると言われている。
今年も11月6日からエジプトで、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開催された。COPは「Conference of the Parties」の略で今回が27回目である。温暖化対策の国際ルールによって、世界は温室効果ガスの排出を実質ゼロにする“脱炭素”へ動きだし、社会は構造変革が迫られている。ホスト国のエジプトのシシ大統領は「将来世代のことを考えると、躊躇している暇はない」と具体的行動を呼び掛ける。温暖化対策は待ったなしの状況である。
美ヶ原高原も12月になれば気温が下がり雪も降り、霧氷が付く条件も増える。麓から歩いて登るか、王ヶ頭ホテルに宿泊し送迎してもらえば撮影も叶うが、11月ならではの晩秋と初冬における霧氷光景を撮ることは出来ない。
以下に掲載した写真は、美ヶ原高原で11月に撮影した霧氷の風景である。温暖化で消える風景ならば私自身の行動も原因の1つである。撮影に出掛ける時も、日々の生活の中でも改めるべきことが沢山ある。温暖化は、災害という大きなインパクトで我々に言ってみれば仕返しをしているが、温暖化で消える風景も地球からの叫びと捉えるべきである。11月の霧氷が貴重な記録とならないよう温暖化防止の為に行動しようと思う。
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
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