コノハチョウ Kallima inachus eucerca Fruhstorfer, 1898 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)タテハチョウ亜科(Subfamily Nymphalinae)
コノハチョウ族(Tribe Kallimini)コノハチョウ属(Genus Kallima)のチョウで、翅の裏面が枯葉のように見えることが和名の由来である。模様は個体変異が多く、1頭ずつ模様が異なると言ってもよい。
コノハチョウ属はインド、東南アジア地域を中心に10種が知られ、コノハチョウは、インド北部からヒマラヤ、インドシナ半島、中国、台湾に、そして日本国内では沖縄本島、沖永良部島、石垣島、西表島、徳之島などの南西諸島の島々に分布しており、日本に分布するものは7亜種に内の Kallima inachus eucerca とされる。
本種は、丘陵から山地にかけての日ざしの比較的多い川沿いの樹林内やその周辺に多くみられ、幼虫はオキナワスズムシソウ、セイタカスズムシソウなどを食べ、成虫は年に複数回発生し、3月頃から晩秋まで見られ、成虫で越冬する。訪花はせず、日中にアカメガシワなど樹液や腐った果実に集まる。また、高所を素早く飛行し、林縁や林冠で占有行動を取っている。越冬態は、成虫である。
コノハチョウは、環境省版レッドリストで準絶滅危惧(NT)にリストされており、都道府県版レッドリストでは、鹿児島県(平成26年改訂)で準絶滅危惧としている。昭和44年(1969年)には、沖縄県の天然記念物に指定され、昭和48年(1973年)には、名護市の「市民の蝶」にも指定されており、採集は禁止されている。
コノハチョウの撮影は、今回の沖縄遠征の主目的の1つであった。一昨年は、石垣島では見られず、沖縄のやんばるでは翅がボロボロの1頭を見かけただけ。昨年は1頭も見ることすらできなかった。今年こそ、との思いで、これまで訪れたことのない場所に行って見ることにした。
現地に午前9時頃に到着すると、早速、飛び回るコノハチョウを発見。昨年までの探索は何だったのかと思えるほど、周囲には10頭を超える数がいる。頭上の木の葉に止まっていたり、地面にも止まるが、すぐに飛び立って写真に写すのは難しい。そこで、二か月前から準備しておいたトラップが役に立った。パイナップルを黒砂糖を溶かした35度の泡盛に漬け込んだものである。その液を木の幹に塗ると、次から次へと吸汁にやってきた。習性なのだろう。面白いことに、どの個体も頭を下にして止まる。翅を閉じたり開いたりしながら吸汁しているが、敏感で近くによると飛んでしまう。それでも、木の葉のような翅裏と、びっくりするくらい鮮やかな色彩の翅表を十分に写すことができた。
コノハチョウは、初見初撮影の種で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」のリスト「鱗翅目」で149種類目の撮影となった。
今回の沖縄遠征で撮影できたチョウ類は、コノハチョウだけで、他の昆虫写真はすべてトンボ類であった。未撮影のフタオチョウ、イワカワシジミ、リュウキュウウラボシシジミも計画には入れていたが、時期的に難しく、また、過密スケジュールと暑さから気力と体力が奪われ断念してしまった。今後、沖縄に行く機会があれば挑戦したいと思う。
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