ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

カラスヤンマ

2024-07-04 13:23:48 | トンボ/ヤンマ科

 カラスヤンマ Chlorogomphus brunneus brunneus Oguma, 1926 は、ミナミヤンマ科(Family Chlorogomphidae)ミナミヤンマ属(Genus Chlorogomphus)のトンボで、沖縄本島北部のやんばる地域にのみ分布している。山間の渓流源流域に生息し、4月中旬~8月下旬(5月中旬~6月下旬に多い)に出現する体長70㎜~83㎜内外の大きなヤンマである。メスの翅がカラスのように黒褐色であることが名前の由来であるが、翅色には個体差があり、翅全体が黒褐色のものや透明部分が現れる個体もいる。
 ミナミヤンマ科は、国内では1属3種2亜種が分布しており、四国南部、九州南部、薩南列島、トカラ列島、奄美大島、徳之島にはミナミヤンマが、沖縄本島にはカラスヤンマとオキナワミナミヤンマが、慶良間諸島にはアサトカラスヤンマが、そして西表島にはイリオモテミナミヤンマがそれぞれ分布している。分布が重なる沖縄本島のカラスヤンマとオキナワミナミヤンマの違いについては、カラスヤンマのオスの翅の先端に小さな褐色斑があるので区別でき、カラスヤンマのメスは、翅が黒褐色なので一目瞭然である。

 カラスヤンマもコノハチョウ同様に今回の沖縄遠征の主目的。一昨年はオスの飛翔写真はピンボケで、メスは産卵を目撃しただけで終了。昨年は1頭も目撃すらできなかったので、今度こそはと気合を入れての遠征である。
 撮影場所は、当初3ポイントを計画した。Aポイントは、畑や草地が広がる農村地区。Bポイントは、一昨年に産卵を目撃した渓流。Cポイントは、生息環境からGoogleMapで見当をつけた河川の源流である。Cポイントは、今回初訪でカラスヤンマの生息を確認しているわけではなく、インターネットにも情報が出ている訳ではないので、遠征最終日に立ち寄る程度の計画にしていた。

 遠征初日は、那覇からレンタカーですぐさま他のトンボの生息地に向かい撮影したが、Cポイントの場所が、そこから遠くはなかったので下見を兼ねて行って見ることにした。深い谷を下りて行った幅2mほどの源流は、小さな滝や流れが早い部分もあるが、勾配が緩やかな所には、所々に小さな粒の礫や砂が堆積した浅瀬があり、何と3つの浅瀬それぞれでカラスヤンマのオスが5メートルほどの範囲を行ったり来たり 探雌飛翔を繰り返していた。そして14時半を過ぎるとメスが飛来。産卵場所を飛翔しているとオスにつかまり交尾態となって上空へ。その姿を目で追っていると、撮影可能な高さと場所の枝先に止まったのである。
 このCポイントには遠征四日間で3回訪れ、蒸し暑い中で長時間待機しながら観察をしていると、オスは、午前9時頃から探雌飛翔を始め、途中、枝に止まって休憩するのだろう現れない時間帯もあるが、夕方17時になっても飛翔を繰り返していた。一方メスは、午前10時から11時の間に1~2回ほど産卵のために飛来し、午後は14時半から16時半頃の間に数回飛来していた。木の上に止まっているようで、いつも上の方から降りてくるように思われた。ただし、常に数頭のオスが待機しているために、メスが飛来してもオスに連れ去られてしまうか、あるいは産卵せずに飛び去ってしまうので、産卵の様子を観察することも撮影することも叶わなかった。オスを網で捕獲しておかなければ、産卵を観察し撮影することは、わずかな期間では難しいと思われた。

 Aポイントの農村地区には、早朝に1回、夕方に2回訪れた。夕方においては、18時半頃から草地の上を低空で飛ぶカラスヤンマのメスが何頭も現れた。いわゆる黄昏飛翔である。あまり羽ばたかず滑空するような飛び方で、草地の上の虫を捉えていた。しばらく飛翔した後、どの個体も樹林のほうへ飛び去ってしまい、撮影はできなかった。
 朝は4時過ぎから待機していると、日の出時刻を過ぎた頃(この朝は雲がかかり朝陽が遮られていた)1頭のメスが上空を旋回しながら飛んでいるのが目に入った。その後、数が増えて全部で4頭のメスが同じ場所で飛翔し、飛んでいる虫を捉えていた。この農村地区は7時に切り上げ、別のトンボを撮影するために移動を開始すると、海岸沿いの松林の上を10頭近くのメスが、群飛している様子も見られた。オスもいるのだろうと思うが、翅の黒いメスが目立つので確認はできていない。この光景も、3年目の訪問で初めてである。

 カラスヤンマの写真を撮ると言う今回の遠征の大きな目標は、初日から期待以上の成果を残すことができた。結局、遠征の四日間でAポイントとCポイントに3回ずつ訪れ、Bポイントの渓流には一度も行かなかったが、オスの飛翔と枝止まり、メスの黄昏飛翔、そして交尾態を2回も撮影することができた。また、メスの翅色については全体が黒褐色の個体や透明部分が現れている個体など個体差も写すことができた。Cポイントには遠征初日に下見のつもりで立ち寄ったが、そうしなければ今回の成果は少なかったかもしれない。
 以下には、今回撮影できたカットの中から、先の記述に合うものを選んで掲載した。3年目にしてこれほど様々なシーンが撮影できたのは、発生時期や天候など様々な条件の合致もあるが、一言でいうと「運が良かった」のだろう。残るシーンは、産卵である。
 カラスヤンマは初撮影の種で、私が撮影した「昆虫リストと撮影機材」のリスト「蜻蛉目」で115種類目となった。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

カラスヤンマ(オス)の写真
カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 1/3EV Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.27 11:08)
カラスヤンマ(オス)の写真
カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F3.5 1/60秒 ISO 400 +1EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 13:18)
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)の写真
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 6:06)
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)の写真
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 500 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 5:43)
カラスヤンマの写真
カラスヤンマ(産卵のための現れたメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 3200 Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:46)
カラスヤンマの写真
カラスヤンマ(産卵のための現れたメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 3200 Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:46)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200 +1 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.26 16:11)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/200秒 ISO 3200 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.26 16:36)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.28 11:27)
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