オオミドリシジミ Favonius orientalis orientalis (Murray, 1875) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ミドリシジミ亜科(Subfamily Theclinae)ミドリシジミ族(Tribe Theclini)オオミドリシジミ属(Favonius Sibatani & Ito, 1942)で、ゼフィルス(Zephyrus)と呼ばれている樹上性のシジミチョウの一種である。当ブログPartⅡにおぴて単独で掲載したことがなかったため、今回、過去の撮影であるが紹介したい。
本種は、平地~山地の広葉樹林に生息しており、幼虫の食樹は、コナラ、クヌギ、ミズナラなどで、成虫はクリの花などで吸蜜することもある。オスの翅表が青緑に輝く一群であるオオミドリシジミ(Favonius)属の中では、本種が最も淡い青味を帯びているが、構造色であるから光の当たり具合によって変化し、他種に引けを取らない美しさである。
オオミドリシジミは、環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、福岡県、長崎県で絶滅危惧Ⅱ類に、千葉県、三重県、奈良県で絶滅危惧Ⅱ類に、東京都および他7県で準絶滅危惧種として記載している。食樹であるブナ科のコナラ・クヌギなどで形成される雑木林(里山)の減少が影響している。
ゼフィルスの撮影は、2011年のアカシジミとミズイロオナガシジミが最初であるが、これらは下草に止まっていることが多く、生息地に行けば翅裏だけなら容易に撮る事ができる。その後、少しずつ撮る種を増やそうと思ったが、ゼフィルスは基本的に樹上性のシジミチョウである。翅表が美しい種ほど、頭上より高い木の葉上に止まっており、また種によっては産地が限られ、撮影は簡単ではない。そこで、まずは発生が6月上旬と早く、自宅から遠くない所にある雑木林にてオオミドリシジミを狙うことにしたのである。2013年のことである。
その雑木林に行くと、個体数は多いが、案の定すべて頭上の遥か上ばかりに止まっている。オスは、葉の上で翅を全開にしてテリトリーを見張る行動をとる。他のオスが近寄ってくれば、飛び出して2頭がクルクルと飛び回り(卍飛翔という)追い払うと、また同じ葉の上に止まって翅を開くが、翅表は下からでは全く見えない。
後に、早朝に長い竿で木をゆすると下草に降りてくる場合があることを知り、他の種ではそれを行い翅表を写したことはあるが、その写真は図鑑写真ではあっても、生態写真ではない。まずは、種の同定のために翅裏を、そして"葉上で翅を開きテリトリーを見張る仕草"を特徴的な美しい翅表とともに撮って残したい。ある時は、脚立に昇って撮影したこともあるが、様々な生息地で観察を続けていると、目線より下の葉上に止まる場所があったり、あるいは地形上、止まる葉先が見下ろせる場所も発見した。あとは、止まるのを待って撮れば良いのである。撮影がしやすい生息地を見つけること、そして生態、特に行動時間や行動パターンを知ることが、思うような写真を撮るには必要なのだと、その時改めて思った。
しかしながら、発生時期を見定めて初期に撮影しないと、盛んに卍飛翔するために、すぐに翅が擦れてボロボロになってしまう。美しさを美しく撮るのは簡単ではないチョウである。
以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
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