ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヒロオビミドリシジミ

2021-06-06 15:49:37 | チョウ/ゼフィルス

 ヒロオビミドリシジミ Favonius cognatus (Staudinger, 1892) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ミドリシジミ族(Tribe Theclini)オオミドリシジミ属(Genus Favonius)で、国内25種類のゼフィルスの中でも京都府北部から山口県にかけての中国山地にのみに局所的に分布し、食樹であるブナ科のナラガシワを主体とする低山地の雑木林に生息している。
 ヒロオビミドリシジミは、開発等による雑木林(生息地)の消失や里山の放棄放置による生息環境の悪化等よって減少しており、環境省RDBには記載がないものの、都道府県RDBでは、大阪府(絶滅危惧Ⅰ類)、京都府、兵庫県、広島県、島根県(絶滅危惧Ⅱ類)、鳥取県(準絶滅危惧種)に選定している。
 オオミドリシジミ属のオスの翅表の色は、ジョウザンミドリシジミやハヤシミドリシジミのように青系統が多いが、ヒロオビミドリシジミの翅表は、前翅は青緑で、後翅は黄色味が強い金緑色である。今回、ようやく本種オスの開翅写真を撮ることができたので、紹介したいと思う。

 ヒロオビミドリシジミの撮影場所は、大阪府能勢町にある「三草山ゼフィルスの森」である。本ブログでは、基本的に撮影場所は都道府県名までとしているが、「三草山ゼフィルスの森」は大阪府自然環境保全条例に基づく緑地環境保全地域に指定された森で、公益財団法人「大阪みどりのトラスト協会」が地上権を設定しており、ナラガシワ林の育成(育苗、萌芽更新、受光伐、植樹)によるゼフィルス類の保護や蝶類の多様性確保のために下草の縞状刈り払いによる林内整備、不法採集防止のための巡視活動、観察会等による啓発等を行っている。採集した場合は、条例により罰せられるため、撮影場所を明記することにした。
 当地には、2015年と2017年、2019年と過去に3回訪れている。2015年には、オスの開翅を撮影できたものの残念ながら羽化不全の個体で翅が痛んでいた。そのリベンジで訪れた2017年は、発生時期よりも前に訪れてしまったため、一枚も撮ることができなかった。そして3回目の2019年は、メスの開翅しか撮ることができなった。昨年は、新型コロナウイルスの影響で取りやめたので、今回は、何としても「オスの全開翅」を撮りたい。しかも、羽化して間もない翅の擦れていない美しい個体で!
 天気予報では、4日は一日雨で翌5日は、曇りのち晴れ。過去二回と同じ天候であり、下草に降りているに違いない。問題は、発生しているかどうかであるが、次の週末の天気の事を考えると、わずかなチャンスを逃したくはない。そこで勤め先が半ドンであった4日(金)正午に東京を出発。途中、静岡県内は台風のような風雨に見舞われ、新東名高速道路を恐怖と共に走り抜けた。17時に名神高速道路の大津SAで昼食兼夕食。その後、新名神高速道路の茨木千提寺PAに止め、車中泊とした。いつもなら現地近くの「道の駅」で車中泊するのだが、高速料金の深夜割引(30%)を利用したく、今回は手前で寝ることにした。ちなみに、6月20日までは緊急事態宣言に伴い休日割引はない。
 5日。午前4時にPAを出発し「道の駅」で小休止。移動後、5時半より三草山へ向けて登山を開始した。

 ゼフィルスの森に6時到着。管理が行き届いた美しいナラガシワの森は、まだ霧に包まれていた。一部では伐採が行われており、萌芽更新されている。
 さて、息切れした呼吸が整った後に探索開始である。14.48haの森に私含めて撮影者は5人だけ。ソーシャルディスタンスは十分。気温15℃。下草の笹はかなり濡れている。ゼフ棒で枝を叩かなくても降りているはずと確信するが、林道沿いをいくら歩き回っても見つからない。一昨年の経験から、どのあたりの下草に降りているかは分かっていたので、その近くで待機することにした。すると、下草の葉の上に青色を発見。ヒロオビミドリシジミのオスが翅を開いて止まっていたのである。
 私が見つけたキラキラ輝く小さな命。ようやく訪れた大チャンス。ここは慎重に近づき1枚。その後、一旦翅を閉じてしまうが、30分すると撮影しやすい良い向きに止まって全開翅してくれた。しかも、翅が擦れていない新鮮な個体である。前翅は青緑で、後翅は黄色味が強い金緑色という本種翅表の特徴をしっかりと収めることができた。
 この個体は、撮影後にナラガシワの梢へと飛び立っていった。この日、下草に止まっていた個体は、この1頭だけで、あとはナラガシワの高い位置の葉上に1頭。時期的には、まだ早いようで、他のゼフィルスは全く見かけなかった。まさに奇跡であった。

 残るは、ヒサマツミドリシジミのオスの開翅。メスを撮った富山県に遠征予定だが、晴れないとダメなので、今度も奇跡が起きることを切に願う。
 今回は、大阪からの帰り道に、岐阜県関ケ原町のゲンジボタル生息地に立ち寄った。その内容は事項に記したい。

参考:三草山ゼフィルスの森

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

三草山ゼフィルスの森の写真
三草山ゼフィルスの森
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 6400 -1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 6:08)
ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:12)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 7:44)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:23)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:24)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:29)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:33)

ヒロオビミドリシジミの映像
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