ゲンジボタルのメスの飛翔の様子を記録として写真に撮影した。
ゲンジボタルは、生息地によっても多少の違いはあるが、概ね19時半頃になると発光しながら飛翔するが、そのすべてはオスである。メスは、川辺の草の葉の上に止まって発光している。メスを見つけたオスはメスの所に降りて行き、発光によるコミュニケーションが成立すれば交尾に至る。交尾は夜が明けても続けられ、日の当たらない葉陰などに移動し15時間前後続く。
葉先で目立つように光るメスは未交尾のメスで、既交尾のメスはオスが飛び回る時間帯は、茂みの中で静かに光ったり、歩き回ったりしており、オスの発光飛翔時間のピークが過ぎた22時半頃になると、産卵場所を求めて川面を飛び交うが、オスのようにふわふわ飛ぶのではなく、水面すれすれの高さを一直線に光りながら飛ぶのである。
メスは、基本的に小川の上流に向かって飛翔する。これは遡上飛翔と呼ばれている。増水などにより幼虫が下流へ流されるために、その分成虫が上流に向かうと考えられている。この行動は、ゲンジボタルだけでなくカゲロウやトビケラなどの水生昆虫に広くみられるが、下流方向に飛んでいく場合もある。そして、産卵に適した場所を見つけると、そこに止まって産卵を始めるのである。
この行動は、2011年に千葉県において東日本型ゲンジボタルで観察しているが、今回は岐阜県郡上市の西日本型ゲンジボタルで観察し、記録として写真に収めた。
前記事に記載したが、22時半から川沿いを歩きながら観察を開始した。まだフワフワと発光飛翔するオスもいるが、多くは草や木の葉に止まって発光している。そんな中、下流から早いスピードで上流に向かって直線的に発光飛翔する個体が出現し始めた。これがメスである。写真では、右側が上流であり、左から右の方へと飛んでいる。明らかに、それまでのオスの飛翔とは、異なっていることが写真でも分かる。
何頭ものメスの行方を目で追うと、それぞれが何カ所かに止まり、数頭がまとまって一カ所に集まる場所もあった。おそらく産卵場所と思われるが、数十メートル先の対岸であり、産卵の詳細を観察することはできなかった。しかし、これまでゲンジボタルのメスの飛翔の様子を写真に写していなかったので、今回、証拠として残すことができたことは、大きな成果であった。
23時半を過ぎると、飛翔する個体はほとんどいなくなり、メスが止まった場所では、明滅ではなく静かな発光が続けられていた。
そろそろ時期的にゲンジボタルの発生は、志賀高原などを除いて終わりである。成虫の集団産卵とマクロ映像を取り損ねたことが心残りであるが、それは来年の課題とし、7月5日から三泊四日で行く沖縄(山原)遠征に備えたいと思う。その後は、東京都内と長野県においてヒメボタルの観察と撮影を予定している。東京都内のヒメボタルは、まだ最盛期における発生状況を未確認であり、長野県においては、2021年に撮影した場所とは違う初訪問の場所を選んだので、楽しみである。
ちなみに6月26日(月)は、高知県仁淀川波川地区のヒメボタル保全に関して、国土交通省 高知河川国道事務所等とのWeb会議である。
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