冬の上高地を撮るためには・・・
冬の上高地では、雪の穂高連峰や、霧氷の大正池、田代池など、厳冬の時期ならではの美しい光景を見ることができる。今後、冬の上高地を撮りたいとお考えの方々からのリクエストにお応えし、2013年1月に撮影した写真を再現像し記事内容を編纂したので、参考にして頂ければ幸いである。
上高地は、長野県松本市を流れる梓川上流の標高約1,500mにある風光明媚な観光名所である。中ノ湯から上高地へ向かう県道24号上高地公園線は、通年でマイカー規制が行われているため、観光シーズン中は、長野県側の沢渡駐車場、または岐阜県側の平湯温泉に近いアカンダナ駐車場に車を止め、シャトルバスかタクシーを利用して上高地バスターミナルへ向かうが、11月中旬の「上高地閉山式」が終わると、「上高地開山式」の4月下旬までバスやタクシーで行くことも出来なくなる。沢渡の冬期指定駐車場に駐車し、予め予約したタクシーで中ノ湯まで行き、そこからは徒歩になる。
まずは、照明の消えた真っ暗な「釜トンネル」を登る。長さ1.3km、傾斜約10度の急坂である。トンネルを抜けると気温は一段と低く、筆者の経験では、マイナス23℃。鼻もまつ毛も瞬間に凍りつく。また、大正池までの区間は降雪状態により至るところで雪崩が発生するので、細心の注意が必要である。トンネル出口から、およそ1.2kmで大正池、そこから約1.8kmで田代池に到着する。積雪量はその年によって異なるが、スノーシューを履けば万全だろう。帰りは、中ノ湯までタクシーに迎えに来てもらうことになる。
冬山登山ではないが、氷点下23℃にもなる中で、片道4km以上も歩かなければならない。カメラのバッテリーの消耗も激しい。十分な装備が必要である。最終的には、自己責任で向かうことになる。冬の上高地へは、気軽な気持ちで行くことはできないと思って頂きたい。
冬の上高地は、いつ行っても霧氷が付いているわけではない。筆者は、2012年の晩秋から4回通い、2013年の1月にようやく撮影することができた。上高地に荒れた天気が続き、その後西高東低の冬型の気圧配置が崩れ、夜半前から高気圧に広く覆われた翌朝、快晴無風で放射冷却によって厳しい冷え込みになれば、高確率で霧氷が見られる。
運良く霧氷が付く光景に出会えたら、光が当たるまで待つことになる。霧氷は、逆光によって一番美しく見えるからである。田代池の場合、 朝日が当たるのは、東側の霞沢岳(標高2,646m)の稜線から太陽が顔を出す午前10時過ぎ。筆者は、7時45分に三脚を立て、2時間半の間、その場で待機した。「霧氷の田代池」は、一度は撮りたい光景である。それなりにカメラマンも集まる。おそらく10人も並べば三脚を立てる場所はなくなってしまうだろう。
冬の上高地は、静寂の極み、神が降りたかのような光景だ。「上高地」は、本来「神垣内」と書いたそうである。穂高神社の祭神・「穂高見命」(ほたかみのみこと)が穂高岳に降臨し、この地で祀られていることに由来するという。観光客を寄せ付けない厳冬の季節になると、周りの峰から神々が降り立ち、「上高地」から「神河内」そして「神降地」になるのである。
以下の掲載写真は、1920×1080ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
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