アカネ属の連結飛翔と産卵について、すべての種類ではないがその様子を紹介したい。
トンボは、雌雄が連結したまま飛翔するという他の昆虫にはない技を見せてくれる。連結は、その様子から「タンデム」(バイクで二人乗りすること)と呼ばれ、必ず前の個体がオスで、そのオスが腹端の付属器でメスの頭部を挟むことで形成されている。朝のうちに交尾を終えると、種類によっては連結態のまま産卵へ移行する。これが、アカネ属ではしばしば目にする連結飛翔産卵である。
トンボは、メスが他のオスに奪われてしまうと、メスの生殖器に入っている精子を掻き出して自分の精子を渡すと言われている。オスは自身の精子の受精を確実なものとするために、交尾後、メスが産卵するまで他のオスから守らなければならない。そのため、オスとメスが連結したまま産卵するのである。
トンボ類の産卵の仕方には、大きく分けて二通りある。一つは、植物の組織内に産みこむもので、もう一つは、飛びながら産むものである。アカネ属は後者で、連結飛翔しながら打水産卵、打泥産卵、打空産卵を行うが、種類によっては2~3種類の産卵スタイルを使いこなす。稀に途中で連結を解いてメスの単独産卵に移行することもある。その場合、オスは上空でホバリングしながらメスの産卵を見守ることが多い。
連結飛翔産卵は、雌雄の見事な飛行技術による。トンボの飛翔の安定性は、黄金バランスによるものと考えられている。体長、翅の長さが黄金比に近く、翅は、フラクタル(入れ子)構造をしており、毎秒約20回程度の羽ばたき運動における翅の”剛性”を高めている。また、翅の先端はカテナリー関数の形をしており、風の抵抗を最小限度にする構造であり、4枚の翅にそれぞれ専用に付いている筋肉を使い、4枚の翅を巧みに操り重心をとりながら、ホバリング・急旋回・高速飛行などの様々な飛翔を可能にしている。
雌雄の連結飛翔産卵は、トンボの飛行技術の極みと言えるだろう。雌雄の息の合ったコンビネーションにも見えるが、瀕死のメスとの連結飛翔が観察されていたり、オスの体温がメスより高いとも言われており、実際はオス主動で行われていると考えられている。
参考:東海大学橋本研究室/バイオインスピレーション手法に基づく飛翔昆虫の運動メカニズムの解明
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