ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

フジミドリシジミ

2018-06-13 21:39:52 | チョウ/ゼフィルス

 フジミドリシジミ Sibataniozephyrus fujisanus fujisanus (Matsumura, 1910) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)シジミチョウ亜科(Subfamily Lycaeninae)ミドリシジミ族(Tribe Theclini)フジミドリシジミ属(Genus Sibataniozephyrus)のチョウで、北海道(南西部)、本州、四国、九州に分布する日本の特産種。食樹はブナ科のブナ、イヌブナで山地のブナの自然林に生息し、二次林にはほとんど生息しない。翅の開張は33mm内外でミドリシジミ族のなかではもっとも小さく、翅表の色彩が強い青色を帯びるのが特徴である。最初に富士山で発見されたことが和名の由来である。
 フジミドリシジミは、環境省カテゴリーに記載はないが、佐賀県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類、福岡県、熊本県、三重県、愛知県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類、茨城県、埼玉県、岐阜県、島根県、愛媛県、高知県のRDBで準絶滅危惧種として記載している。地球温暖化に伴うブナ林の分布域縮小やシカの下草の食害による裸地化が個体数の減少の原因として挙げられている。

 フジミドリシジミは、ブナの樹冠部で早朝と夕方に活動していることから目にすることも稀であり、写真に撮ることはまず無理である。しかしながら、東京都内には、フジミドリシジミが生息するブナの冠部を上から眺めることができる場所が一ケ所だけあり、奇跡的に撮影できる。それでも、距離は数メートルあるから、小さなチョウを撮るのは簡単ではないし、撮っても証拠程度の写真が多い。しかし、その生態を知り行動を細かく分析すると、場所を変えれば状況は変わってくる。
 フジミドリシジミは花から吸蜜することはなく、活動場所のブナの樹冠部で吸水するが、樹冠部で吸水できなければ林道脇などの下草に降りてくるのである。
 ある時、訪れたブナの森は大木ばかりで、樹冠は10mも上。見上げたが、飛びまわっているフジミドリシジミは1頭もいない。林道沿いを見て回る。すると、ブナの森を流れる小さな沢と林道との出会いの周辺で10頭を越えるフジミドリシジミのオスが下草上で見られた。これほど狭い範囲の下草に多くのフジミドリシジミが見られるとは驚きであった。下草に朝日が当たり始めた頃、葉に付いた夜露を舐め、翅を開いて体を温め、しばらくすると弱々しく羽ばたきながらブナの梢へと飛び立っていった。

 偶然や奇跡的に撮影できたものも一つの記録であると思うが、昆虫の生態を知り、行動を詳細に観察することによって確実に収めることができた写真は、学術的にも裏付けとなる貴重な生態写真となる。ただし、撮影しやすいということは、採集もしやすいということにもなる。本種は、環境悪化以外に採集者による乱獲も減少に拍車を掛けていることから、撮影場所の詳細は記さないこととし、撮影場所の問い合わせに関しても一切お答えしないこととしたい。また、本記事の写真は、全て過去に撮影したものである。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F10 1/4000秒 ISO 6400(撮影地:東京都 2014.6.1 6:06)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/1600秒 ISO 6400(撮影地:東京都 2014.6.1 5:56)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800 +1EV(撮影地:岐阜県 2015.7.12 7:29)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000 +1EV(撮影地:岐阜県 2015.7.12 7:31)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250(撮影地:岐阜県 2015.7.12 7:25)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 6400(撮影地:東京都 2014.6.1 6:37)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000 +1EV(撮影地:岐阜県 2015.7.12 7:25)

フジミドリシジミの写真

フジミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F10 1/1000秒 ISO 6400 -1/3EV(撮影地:東京都 2014.6.1 7:52)

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2 コメント

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Unknown (四宮京子)
2021-10-28 14:04:04
庭木に止まったシジミチョウの、ポツンと赤い目印が気になり、翅が開く瞬間を見逃がすまいと、じっと、ずっと待ちました。少しずつ、静かに開かれてゆく様が美しく...
息をのむようでした。夜中までかかって名前を知り、今このブログで写真を拝見。美しい写真の数々、フジミドリシジミは忘れられません。背景の葉にいっそう鮮やかな存在感。
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Unknown (古河)
2021-10-30 20:35:30
四宮京子さん、コメントありがとうございます。翅を開くまでじっと待ち、そして念願かなって開いた瞬間は感動しますね。
翅を開いた写真を撮るまで、何年も通って、やっと撮影できた種類もいます。
どうぞ、これからも感動の体験をしてください。
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