ゲンジボタルの幼虫上陸の観察と撮影を山梨県の生息地で行った。
ゲンジボタルの幼虫は、水中でおよそ9ヶ月、個体によっては4年近く水中で生活し、春になると陸地の土中で蛹になるために上陸を行う。上陸の時期は、日本各地の生息地によって異なり、関東地方では3月下旬頃から5月上旬頃に行われるが、時期になればいつでも上陸するわけではなく、次の条件が合致しなければ上陸しない。
- 日長時間が12~13時間以上であること。
- 当日の気温が水温と同等かそれ以上であること。概ね10℃以上。
- 初回は、降雨時であること。
昆虫は体内時計を持っており、水中生活するゲンジボタルの幼虫の場合は日長時間によって季節を感じ取っており、上記条件を満たす時に上陸を開始する。幼虫は、数分間光り続けながら上陸するのが特徴である。
今回訪れた場所の到着時(18時半)は、まったく雨が降っておらず、またそれ以前も降った形跡がなく、草も土も乾いていた。22時を過ぎる頃から小雨が降り出したが、発光する幼虫は無し。23時を過ぎると雨は本降りとなり、岸辺で微かに発光する幼虫が見られるようになるが、上陸は無し。午前0時を過ぎた頃から上陸する幼虫が数頭見られるようになった。気温は12.6℃。
ただし、この生息地におけるゲンジボタルの発生数からみて、今回の上陸数がとても少ない。気象データでは、今年は、3月21日、22日にまとまった降雨があった後は、4月6日が15時頃から深夜まで降雨。次が今回の4月14日~15日の深夜になる。前回、前々回の降雨時に上陸したかどうかは分からないが、関東の他の地域では上陸が行われたという報告があることから、この生息地においても上陸していた可能性はあり、今回は上陸の終盤であったのかも知れない。
上陸したゲンジボタルの幼虫は、草の根元や石の下等から土中に潜り込み、毎日の平均温度から8.02度を差し引いた有効積算温度が408.4度日になると蛹化し、その後、約10日で羽化し成虫になる。ちなみに昨年の気象データで計算してみると、本年の発生(飛翔)時期は以下のように予想できる。
- 3月21日上陸の場合は、5月31日に羽化し、6月2日頃から飛翔。
- 4月06日上陸の場合は、6月03日に羽化し、6月05日頃から飛翔。
- 4月14日上陸の場合は、6月08日に羽化し、6月10日頃から飛翔。
おそらく6月の第2週目頃が発生のピークになると思われる。(実際は、5/24頃~6/15頃が発生期間で、6/5頃がピークでおよそ300頭が飛翔。2018年の実際の気象データと照らし合わせてみると、3月21日から上陸を開始。4月17日、18日に最も多くの幼虫が上陸したと思われる。)また今回、新たな知見を得ることができたので以下に記しておきたい。
- ゲンジボタルの幼虫は、上陸時期の降雨時であれば周囲が暗くなる19時過ぎから上陸を開始するが、十分な雨が降らなければ、いつまで経っても上陸しない。
- 本降りの雨が少なくとも1時間以上続けば、深夜からでも上陸を開始し、雨は朝から降り続いていなくても良い。
- 上陸する川岸は、どちらか一方であることが多いが、両岸に上陸もする。比較的暗い岸方向を選んでいたように思うが、明確に区別はできない。
- 水際で発光するだけで上陸しない幼虫が多数存在した。
掲載写真は、発光しながら上陸するゲンジボタル幼虫の光跡を写したものである。午前0時19分から午前1時23分のおよそ1時間の光跡を一枚に合成した。10個体ほどの発光する幼虫が写っているのだが、数個体が小川の岸近くの石を登り、また数個体が中州を越えて2mもある護岸を登っているのが分かる。私的には、当然写真の出来には不満が残るが、観察結果として生態的な新たな知見を得たことが嬉しく満足している。写真はピンボケで駄作であるが、ゲンジボタルの生態としてご覧頂きたい。また、過去に別の地域で撮影した「発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫」のマクロ写真も参考までに掲載した。
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ゲンジボタルの幼虫上陸 Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 30秒×120カット ISO 400(撮影地:山梨県 2018.4.15 0:19~1:23)
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫 Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 3秒 ISO 400 ストロボ使用(撮影地:千葉県 2011.4.9)
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