桜月夜とは、桜の花が月夜に照りはえるさまを言い、与謝野晶子は「みだれ髪」の中で「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき」と詠っている。「桜咲く月夜にすれ違う人々とその顔が美しい」と言っているわけだが、自身の満ち足りた気持ちと桜月夜によって、見るものすべてが美しく見えるという心の変化を表している。
東山魁夷は、自身の作品とともに、月と桜について以下のように述べている。
丸い大きな月。静かに古代紫の空に浮び上る。
花はいま月を見上げる。
月も花を見る。
桜樹を巡る地上のすべて、ぼんぼりの灯、篝火の焔、人々の雑踏、それらは跡かたもなく消え去って、
月と花だけの天地となる。
これを巡り合せというのだろうか。
これをいのちというのだろうか。
本記事で掲載した写真桜月夜は、2011年の撮影である。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まり一年が過ぎた。家族全員、自宅でのテレワークではなく都心に通勤しているにも関わらず、幸いにもこれまで一切、新型コロナウイルスには感染していない。飲食店での会食はせず、最大限の感染防止を行っているからであろう。特に緊急事態宣言中は、休日の過ごし方にも注意をし、日中は不要不急の外出を控えるようにしている。趣味である写真撮影においては、車での移動、人に合わない近づかないを徹底するべく、日中の移動は止め、撮影は夜間において星景写真を主として行ってきた。
東京の山間部では、梅林が満開に近く、河津桜や八重桜は開花の所もある今日この頃。日中に人の来ない里山で越冬昆虫を撮ることも問題ないと思う。昨年のこの時期は完全に自粛し、里山等で春らしい光景を一切撮らなかったので、今年こそはと思っていたが、3月7日に解除予定であった緊急事態宣言が21日まで延長され、緊急事態宣言中は夜間撮影のみと自身で決めた以上は守りたい。
テーマと撮影場所も決めている。以前に宣言した「海と星空」では「東日本大震災の復興」を大きなテーマとして撮りたいと思っているが、天候が味方してくれない。月と雲がない澄んだ空が条件だが、3月になってから2週続けて条件を満たしてくれない。今週末は石化鵜の新月でありながら雲が広がってダメであった。このテーマは、緊急事態宣言解除後も追い求めたいと思うが、季節が限定されるため、チャンスを待ちたいと思う。
そんな理由から、3月になってから一度も撮影に出掛けていないため、過去に撮影した写真をデジタルならではの比較明合成処理を行って初公開した。
月には、昔から大きなパワーがあることが知られており、月の満ち欠けは心と体に影響を及ぼしている。満月では、達成、完了、収穫、実りなどのエネルギーがあり、感情の起伏が大きくなり、気分も高揚しがち。新月では、育てる、新しいことを始めるというパワーが強いとされる。
東日本大震災から10年。過日ではあるが、3月13日は魚座の新月。12星座の連なりの最後の魚座は、次のサイクルへ向けて「癒やしと解放」を行い、出発点に戻るような意味合いを持っていると言う。そして新月は、精神性の浄化や自分の深いところからの気づきを促してくれると言う。
これまでの自分を大きく反省し、見るものすべてを美しく、また命の尊さを感じ、他者の悲しみや痛みに心から寄り添える人になりたいと、月に願おうと思う。
お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1920*1280 Pixelsで投稿しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。
桜月夜
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 比較明合成(撮影地:山梨県身延町 2011年)
桜月夜
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 比較明合成(撮影地:山梨県身延町 2011年)
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