カトリヤンマ Gynacantha japonica Bartenef, 1909 は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)カトリヤンマ属(Genus Gynacantha)で、北海道の一部、本州、四国、九州、琉球列島に分布している。尚、奄美以南の琉球列島には、同属で琉球列島固有のリュウキュウカトリヤンマ Gynacantha ryukyuensis Asahina, 1962 が分布している。
成虫は6月下旬頃から羽化し11月上旬頃まで見られるが、黄昏活動性が強いヤンマで、繁殖期時期以外は、日中ほとんど活動することなく、竹林、松杉がまばらに生育する河川敷の林、
池沼岸の山林、雑木林などの薄暗い所で、樹木の枝端・葉端などに下垂して止まっている。
カトリヤンマは、羽化と産卵の様子を除いては、何回か撮影し既に掲載しているが、今回、主目的であったネアカヨシヤンマ Aeschnophlebia anisoptera Selys, 1883. が産卵に訪れるのを待つ間に、近くにいたカトリヤンマ3頭の静止をじっくりと撮影することができた。
カトリヤンマは、早朝と夕方に摂食活動をするが、撮影した薄暗い林内では、午前9時なっても地上を低く飛びながら摂食活動を行っていた。小さな虫を捉えると、草木に止まって食べるが、高い所ではなく、生い茂る草の地上20cm辺りや藪縁の地上1mの木の枝に静止する。最初は300mmレンズで遠くから撮影していたが、体に刺激を与えても、まったく動くことがなかったので、普段あまり使わない15mmの魚眼レンズでギリギリまで近づき、被写界深度の深さを利用して周囲の状況も写し込んでみた。(どの写真も表現上明るく写っているが、実際は林の中でかなり薄暗い状況である。)
この日は、カトリヤンマの行動における新たな知見を得ることができ、また、前記事に掲載した2カットを含めて自己満足度の比較的高いカトリヤンマの静止写真を撮ることができた。この秋は、昨年、一昨年と失敗に終わっている産卵シーンの撮影を是非とも成功させたい。ただ撮るのではなく、美しい生態学的図鑑写真を目指したい。
当地におけるネアカヨシヤンマは、前記事に掲載した静止のみの撮影で、メスは2週続けて現れず、産卵の様子を撮影することはできなかった。2日間で網を持った輩5名が来ていたので、おそらく採集されてしまったと思われる。オスの個体数も一週間で激減していた。当地における採集に法的規制はないが、一人が一頭ずつ採集しても、100人くれば100頭採集されてしまう。しかも、産卵場所に陣取るとは、生態も知らない愚か者としか言いようがない。自分だけ良ければ、それで良いのであろうか?私にとって、採集とは駆除に等しい。オオゴマシジミやキリシマミドリシジミ、その他ゼフィルスでも同じように悲しくなった経験がある。
このネアカヨシヤンマは、環境省RDBで準絶滅危惧、東京都、神奈川県、千葉県等のRDBで絶滅危惧Ⅰ類、カトリヤンマは、東京都、千葉県等のRDBで絶滅危惧Ⅰ類に選定されているトンボである。条例等で採集を禁止し、環境とともに保全の対策を講じなければ、数年後には絶滅してしまうかも知れない。当ブログにおいては、採集者への情報提供を断つために、今後、昆虫写真の撮影地について都道府県名も一切記載しないこととした。
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カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/5秒 ISO 400 +1/3EV ストロボ使用(2016.8.6)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/15秒 ISO 400 ストロボ使用(2016.8.6)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/30秒 ISO 400 -2/3EV ストロボ使用(2016.8.6)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/20秒 ISO 400 +2/3EV ストロボ使用(2016.8.6)
カトリヤンマ(未成熟)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/13秒 ISO 400 ストロボ使用(2016.7.30)
カトリヤンマ(未成熟)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.00 1/13秒 ISO 400 ストロボ使用(2016.7.30)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F5.6 1/25秒 ISO 1250 -1EV(2016.8.6)
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F11 1/20秒 ISO 2000 +1/3EV(2016.8.6)
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
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もちろん採集自体は研究のためや、記録のために必要なことは十分承知していますが、既知の有名産地や特定の種を個人的な満足のために乱獲する、いわゆるコレクター的連中は研究者ではないので、出来るだけ情報から排除すべきですね。
個人的な満足のために乱獲するコレクターには、これまで随分と悲しい思いをさせられてきました。
中には、販売目的での乱獲もあります。
本当は、産卵や生殖時期、時間帯、天気との関係などの生態に関する内容は、知っていただきたいことですが、場合によっては記事内容を考えて公開しないといけないですね。