ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

三鷹市大沢のホタル

2023-06-05 14:41:50 | ゲンジボタル

国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル

 三鷹市大沢のホタルについて、講演会と観察会および写真撮影を行ってきた。

 東京都三鷹市市スポーツと文化部生涯学習課(共催:ほたるの里・三鷹村)の依頼により、6月4日三鷹市教育センターにて「ほたるの一生-大沢ほたるの生態を知る-」と題して 講演会を行い、終了後に大沢の里(ほたるの里)に移動してホタルの現状を観察し撮影を行ってきた。講演会は、定員70名で満員御礼。市内はもちらん、市外からも大勢おこし下さり、2時間の講演は無事に終了。 大多数は年配の方々であったが、お子さんも4名ほどおり、最後まで私の話を聞いてくれたのが、何より嬉しい。

 さて、先週は自然発生している「野川のホタル」を観察し撮影したが、今回、講演会の終了後に訪れた三鷹市大沢のホタルは、前回の撮影場所(小金井市)からおよそ800mほど野川を下った場所で、住所は三鷹市大沢の大沢の里(ほたるの里)である。国分寺崖線と野川、水田、湧水が保全され、三鷹のかつての農村風景が見られる公園として整備されている。
 公園化される以前は、昭和40年頃までホタルが沢山飛翔していたそうだが、野川の水路を固定し、水田や水路が埋め立てられ市街地化が進む同時に、湧水が減り、ホタルの数も少なくなったそうである。 そこで、昭和60年頃に、現在の公園部分の市街地化を止め、公園として残すための機運が高まり、同時にホタルを保全する取り組みが始まったとのことである。水田の管理やホタル生育のための環境整備は、地元のボランティア団体「ほたるの里・三鷹村」が昭和63年(1988年)から行っている。
 大沢の里の大きな特徴は「ハケ」と呼ばれる環境になっていることである。JR中央線の南側を流れる野川の北側には、高低差が15~20mの崖ないしは急な斜面が東西に走っている。この崖は、多摩川が10万年以上の歳月をかけて武蔵野台地を削り取ってできた河岸段丘で、斜面地が東京都の立川市から世田谷区までおよそ30kmも続いており、国分寺崖線と呼ばれている。この国分寺崖線を武蔵野地方の方言で「ハケ」と言う。
 ハケの周辺には、里山の雑木林として利用されてきたコナラ、クヌギ、イヌシデ等の落葉広葉樹が中心の雑木林があり、武蔵野の面影を残している。また斜面から染み出す湧き水による小さな水路や湧水池などがあり、豊かな自然環境が残されており、ホタルも生息しているのである。「ハケ」という環境に生息するホタル(ゲンジボタル)は、とても貴重である。
 三鷹市大沢のホタルでは、ホタルの他に貴重なものがある。江戸時代後期から三鷹市大沢地区で栽培され、現在、江戸東京野菜にも登録されている「三鷹大沢わさび」である。 「三鷹大沢わさび」は約200年前の文政2(1819)年、大沢地区の国分寺崖線の豊かな湧水に着目した伊勢出身の箕輪(小林)政右衛門が、故郷の五十鈴川流域から持ち込んで栽培を始めたと伝えられている。
 「三鷹大沢わさび」は、国内にほとんど残っていない在来種(幻のワサビ)であることがワサビ研究の第一人者で岐阜大学の山根京子准教授の分析で判明している。DNA鑑定の結果、岐阜県山県市の山間部で自生している野生種と一致しており「岐阜県西南部がルーツで、伊勢神宮周辺に持ち込まれ、さらにそれが三鷹に持ち込まれた」と推測している。その原種が、大沢の里(ほたるの里)のワサビ田に生き残っており、その上をホタルが舞うのである。

 講演会が終了したのち、早速、大沢の里周辺を散策。古民家(かつての箕輪家)の隣に「三鷹大沢わさび」のワサビ田がある。ワサビ田の手前は湿地になっており、ブライダルブーケに使われるサトイモ科のカラーの白い花(正確には、ミズバショウと同じ葉が変形した仏炎苞)が目立つ。同じく白い看板や百葉箱、木の構造物などがあり、更には柵越しに遠くから眺めるため、ホタルが飛んでも写真的には絵にならない。しかし、貴重な光景は、是非とも残しておきたい。そこで、現場では映像のみを撮影することにした。(ゲンジボタルのマクロ写真は、別の東京都内で撮影したものである。)
 気温24℃、晴れで無風。満月であるが、昇ってくるのは20時近くで、ワサビ田の背後は国分寺崖線と林があるため、月明かりの心配はいらない。18時半過ぎからカメラをセットし待機。19時頃になると、地元の家族ずれが増えてきた。ワサビ田を覗ける範囲が10mほどしかないため、人々が列をなす。お子さんたちが多く、活発に動き回る。19時半を過ぎてホタルが発光飛翔を始めると、皆、歓声を上げていた。
 小さなお子さんも、安心してホタルの観賞ができる場所であり、三鷹市でホタルが飛ぶという素晴らしい環境であるが、この時は、広げた三脚にドンドンとぶつかってくるので、撮影は行ったものの良い映像にはならなかった。また、生息しているホタル(ゲンジボタル)は、東日本型であることを期待したが、発光を見る限り、残念だが西日本型であった。野川のホタルが、中部地方から移入したとのことであるから、こちらも西日本から移入したと思われる。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

三鷹まるごと博物館講座パンフレット
三鷹まるごと博物館講座パンフレット(ほたるの一生)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
三鷹市大沢のホタル -国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル-(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.



最新の画像もっと見る

コメントを投稿