散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

「風景が私を見ている気がする。」小林麻美展

2008年05月13日 12時57分44秒 | ART
やはり会社をさぼってでも行っておいて良かった。というのは冗談で、健康診断で昼食抜きになり、さらにクリニックへの移動時間を合わせて使い、テンポラリースペースへ行くことができたのだ。私にしては、特定の展覧会を記事にするのは非常に珍しいことである。

まず目に入るのは、天井からつられたキャンバス。画題は「絵画の場合」の出品作に近い金網越しの風景である。私は前回作品を見たときに「閉塞感」を非常に強く感じたものである。

しかし今回の作品はどうだろうか。金網の中央は大きく破れている。ではそこが向こうの世界への突破口になっているかというとそうでもない。黒い影のようなより太い線がそこにかかり、見えるバリアより強力な見えないバリアを張っているかのようだ。

かといって、絶望感が沸いてくるような作品ではない。色彩が明るくも暗くもないので、向こうの世界は幸せの世界なのか、陰鬱とした世界なのかも容易には想像させない(ここは安易なイメージを描かなかった良さだと思う)。普通の人も描かれているようだし、普通の世界なのかもしれないのだ。となると、一体、金網および黒い影は何の象徴であるのだろうか・・・

とにかく面白い作品で、私の中の面白バロメータ(心の中で一人語りがどれだけ続けられるかが基準)は、相当なレベルに達した。「風景が私を見ている気がする。」いうタイトルも意味ありげだ。私は地方都市に行くと、人っ子一人歩いていない時に、周りの風景が不思議な存在感を発揮しているような錯覚にとらわれることがある(私は超心理学的なものを一切信じないのだが)。その感覚に少し近いのかもしれない。

私が参考にさせていただいている、札幌美術系ブログの皆さんも、この展覧会にはかなりの長文を寄せているようだ。昼間に抜け出して行ったので、ご本人にはお会いできなかったのだが、私には数少ない話を聞いてみたい作家さんの一人である。

クリニックに行く前に、慌しく銀行へ。すると「この指とまれ展’08春」が開催されていた。中央に石垣渉、竹津昇、川上直樹、3氏の作品が展示されているというのは、かなり贅沢な展覧会だと思う。そそくさと見てしまい、すみません。

20080513最近読んだ本

2008年05月13日 09時13分22秒 | 読書
「スラン」A・E・ヴァン・ヴォクト
サスペンス、アイディア、意外な宇宙らしさとSF的小道具(ガジェット)。いずれをとっても良くできていると思う。ほど良く短めにできているところも、この時代の作品のよさであろう(再読)。

「怪しい科学者の実験ガイド」ジョーイ・グリーン
少年・少女向けの科学実験ガイド。特に怪しくはない。子供の頃にこういう本に引き込まれるとそれはそれで楽しいと思う。

「六月六日生まれの天使」愛川晶
記憶喪失を持ち込んだ恋愛もの。しかしダブル記憶喪失はちょっと辛いか。後味も微妙な感じ。

以下、図書館の6冊。
「差別用語を見直す」江上茂
いわゆる差別用語の問題はもちろんだが、過剰な自己規制、過剰な(異常な?)抗議にも問題がある。「一人でも差別だと思えば差別だ」という主張には、辟易するものがある。笑えたのがグインサーガ(これも差別問題で1巻が全面改稿されている)を紹介した部分で「中世のヨーロッパとおぼしき・・・」と書いてあるのだ。へー、あれは昔のヨーロッパの話でしたか。

「新三笠市史」
三笠の本でも借りてみようと図書館の窓口に頼むと、百科事典クラスのサイズの本が出てきて、やむを得ず借りてしまった。何でも三笠市で突然作成し、他市町村に配布して唖然とされたらしい。全部は読みきれなかったが、昔の三笠には百貨店(デパート)があったんだねえ。

「札幌とっておきのディナー&スイーツ」
最近はあまりそういう店には行きたくない。楽な店がいいよ。

「なぜ騙されるのか?」村千鶴子
一般論が多く、「毅然として断れ」というだけの対策提示。

「料理人になるには」大阪あべの辻調理師専門学校
料理人になりたいという人は昔に比べて確実に増えたのだと思う。

「市民のための消費者契約法」村千鶴子
こちらの方が若干古い本であるのだが、事例など分かりやすくて騙され対策本としては良くできていると思う。