散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

なぜか岡山(11)

2009年09月21日 16時15分21秒 | 食べ歩き
4日目の朝、6:30分に起床し、5700歩ほどの散歩。かなり空腹になってきた。今日の朝食では一度やってみたかった、えびめし+カレーという暴挙に出てみた。予想通り、ちょっとスパイシーなご飯とカレーは合うような気がするのだが、地元の人には怒られるのだろうか。



9時半過ぎに岡山駅に行き、今日の目的地は山地側に約1時間の行程となる、津山市へのちょっとした遠征だ。津山と聞いてどんな所か思い浮かぶ人はいるだろうか。私もつい最近まで「津山30人殺し」の事しか知らなかったのである(詳しく知りたい人は各自検索でもして欲しい)。



ところが、ついに「B-1グランプリ2009」で初登場3位となった食べ物がある。津山のB級グルメ「ホルモンうどん」である。元々岡山にはえびめし、ドミカツ丼の2大B級グルメがあるのだが、他に何かないかと探したところ引っかかってきたのが「ホルモンうどん」なのだ。




→津山駅から川を渡って市の中心部へ。

昼食時間には間があるため、まずは津山郷土博物館へ。



正直何の知識も持っていなかった津山だが、パレオパラドキシアという哺乳類の化石が発掘されたり、巫女型人物埴輪(非常に珍しい形である)が発掘されたり、なかなかの展示物があるのだ。さらに近くに津山城もあるのだが、ちょっと面倒になり昼食の場所を探す。

実は津山市では「ホルモンうどんマップ」というのを作成しており、今日街を歩いている人の中にも、そのマップを頼りにしている人も結構いるのだ。しかしそのせいか、ある店は大混雑。またある店は連休中で休みのため、地図を持った人が途方にくれたりしている。私は人の多そうなエリアから移動し、ちょっと外れの店「M」目指すことにした。



今日は今回の旅行の中で29度と最も暑くなった日。歩くだけでも汗が出てくる。20分程度歩いてやっとたどり着き、店内に入り、無事鉄板前(暑い…)に座ることができた。さて早速注文と思ったが、昼前から相当込んでいたようで、年配ご夫婦のお二人は相当テンパっているようだ。しかし、うまいこと鉄板前に座ったので、お母さんの方に注文を通し、どのくらい時間がかかるかも教えてもらうことができた。待つ間に、じっくり作り方を見せてもらう。

「ホルモンうどんの作り方」(店によって違うとは思う)
1)数種類のホルモンを鉄板におき、味噌だれを絡めて炒める
2)キャベツと玉ねぎを大量投入。焼き肉のたれくらいの濃度のたれで味付け。
3)レンジでほぐしたうどんを投入し、多分、ウスターソースのような酸味のある味付けをする。
4)もやしとピーマンを順次投入。塩かうま味調味料を振って、全体に混ぜる。
5)皿に盛って、紅ショウガをトッピング。完成。

さあ、やっと私のところにもホルモンうどんが到着した。早速食べよう。野菜がたっぷりなので、それも食べつつ、うどんとホルモンを発掘して食べる。作り方3)で書いたように、結構酸味のある味付けで、さっぱり食べられる。ホルモンも色々な部位が入っているので、歯ごたえや味が違い楽しめるのだ。



しばらく食べ進んだが、おっと、どうも野菜が多すぎるようだ。どうしても少し残してしまい、お母さんにお詫びをしつつ勘定をしてもらう。お母さん曰く「野菜たっぷりだからね」ということであった。

途中ローカルなスーパーでホルモンうどんの味付けにも使えるという焼き肉のたれを発見したが、お店の3種類の味付けを見ていると別物だろうなあということで、購入せず。津山の印象だが、今日は快晴だったせいか、空虚な感じがするほど明るい街だった。街の規模感としては、千歳市くらいに感じたが、街の人のイメージより観光客が増え出して対応しきれないように思えた。「B-1グランプリ」で一層有名になった後が、また大変であろう。

駅に戻り、岡山へ帰る。途中は北海道とそん色のない山・畑である。



岡山のシンフォニーホールでやっている古書市を覗き、本を一冊購入。また岡山駅に戻る。

***
20090926追記。
・私の記述では津山は寂しそうなところだが、人口11万人と結構な都市なのだ。
・国指定の重要文化財などが11点もある。
・津山藩絵師・鍬形惠齋が200年前に作成した「江戸一目図」という立派な屏風がある。当時、江戸の名所をすべて収めた屏風があるということは、文化度も高く、裕福であったのだと思う。

・旧石器時代、この辺りは亜熱帯性の海であったらしい。それで海生哺乳類パレオパラドキシアがいたのだろう。
・津山城は明治7,8年に取り壊してしまったらしい。残念であろう。
・「ホルモンうどん」以外の津山の味というと、「しいたけ弁当」というのが名物のようであった。地味で良いね。

・当然知っている人もいると思うが、津山市はB'zの稲葉浩志の出身地らしい。観光案内所に「稲葉浩志君のメモリアルロードマップ」が置いてあり、生家の場所まで書いてあるのだ。良いのか?

なぜか岡山(10)

2009年09月20日 20時43分33秒 | 食べ歩き
早めに岡山に戻り、夕食のために電車で移動。バー「S」のマスターに紹介された「Y」という店に行く。店の前には若い二人がなぜか待ち状態。様子を窺うと、15時~16時はご飯ものは休憩状態らしいのだ。約10分店の前で待つことになったが、結果オーライであったようだ。

16時に店内に入り、ともに名物だという中華そば(小)、ドミカツ丼(小)を注文。まだ客も少なめだったため、すぐに注文の中華そばがやってきた。濁りスープに細めの麺、具はチャーシュー、メンマ、ねぎ、細めのもやしである。早速食べると、麺が少々柔らかめだが、味は良い。甘めでちょっと魚の風味もあるスープが美味しいのである。



続いて、カツ丼が到着。2品を見比べるとどちらか普通サイズでよかったかも知れないという気になってきたが、まあそれはしょうがない。早速カツを食べると、揚げたて熱々でまず美味しい。かかっているドミグラスソースは少し甘みあり、酸味ありの味付けだ。もっと食べたいという気持ちが湧きあがってきたが、美味しく完食。



とりあえず両方を食べることができて満足し、店を出たところ16時半という中途半端な時間帯なのに10人ほどの行列ができているのであった。偶然、ちょうど良い時間に訪れたようだ。



今日はやりすぎ防止のため、デパート地下でつまみと酒を買ってホテルに戻る。またもや大浴場で汗を流して、ホテル内でゆっくりと地元の独歩ビール、ワインを飲む。

今日は12961歩。

なぜか岡山(9)

2009年09月20日 15時54分46秒 | ART


昼食を終えて、次の美術館巡りは「倉敷市美術館」である。一つ目の展示は「写真家・中村昭夫の原点1956-1964」である(どんな人かは知らない)。展示は4つのパートから構成されている。

1)倉敷
2)瀬戸内海の漁民
3)李ラインの漁民(一応、どういうものだかは知っている)
4)人間裁判‐朝日訴訟‐(知らなかった。結核患者が最低限人間らしい生活を保証しろと裁判に訴えたものらしい)

綺麗事では済まされないこの地域の状況を撮影した、力強いドキュメンタリー写真である。もう一つの展示が「共鳴する美術2009-表現への挑戦-」という倉敷ゆかりの若手作家の写真・絵画展である。他の美術館でリーフレットを見て、ぜひ現代作家の展覧会を見たくなったのである。

まずはモノクロの風景写真のみを展示していた青地大輔。何気ない雨粒、鳥、建物、樹木を撮影して、静寂というか”無音”を感じさせる作品である。次も写真の杉浦慶太。彼の作品は大部分が真っ黒の背景であり、ポツンと道路わきの風景などを配置しているのだ。「惑星№034」では、川か海に浮かぶ小さな人工島のようなもののある、静かな風景が見て取れる。

変わって絵画の松井えり菜は気持ちが溢れすぎてしまうほどの過剰な画だ。「ふたつの気持ち」では女性の顔が分裂して3つ目になっている。「UNISON!!!!!」では。ドコモタケのような生物と人の顔が合体(というか分離途中?)なのである。また「食物連鎖 Star Wars!」では人の口からクジラやマンモスが飛び出し、さらに背景に恐竜が描かれている宇宙的スケールの作品だ。

最後の藤原裕策は動物のような植物のようなモチーフを細かく描いた作品。上に塗り重ねた色彩をスクラッチで下の白い色を出したり、仕上げの工夫をしている。ということで、全く知らない地域の若手作家の作品を見る機会を持ってよかったと思う。

この後、「児島虎次郎記念館」へ。



まずは若いころのデッサンから。さすがに手堅くて上手い。油彩も結構な点数が展示されており、大作そろいだ。

「姉妹」:金髪、紫のコート、緑色のテーブルクロスと色彩が大胆。
「祭りの夜」:夜だけあって、光の強さはさすがに抑え気味。しかし色彩の過剰さは変わらない。
「奈良公園」:巨大な風景画。これは日本風味というか、全体に中庸な感じを受ける。

以上で疲れ切り、倉敷の街並み散策は程々で岡山に戻る。普段はもう少し落ち着いた良い街なのかもしれないが、今日の大混雑はあまり良い印象ではなかった。とはいえ、私もその一人なのだから、文句を言うことはできない。

***
20090926追記。
松井えり菜の作品は、1点が北原照久所蔵、1点が高橋コレクションであった。何となくわかるような気がする画風である。

なぜか岡山(8)

2009年09月20日 12時31分43秒 | 食べ歩き
この日の昼食は大原美術館そばの「S」という蕎麦屋さんだ。今日の蕎麦粉は雨竜町産のものを使っているらしい。私は天ぷら蕎麦を注文してみた。



蕎麦の量は店によって全く違うものだが、「江戸切り蕎麦」とうたっているこの店の蕎麦は、やっぱり少なかった。蕎麦はゆで加減、香りもかなり良く(新蕎麦だった)、申し分ないのだが、いかんせん量が少ない。天ぷらはエビ、ナス、かぼちゃ、マイタケ、謎の草(?)とこちらも量が少ない。





晩飯はがっちり食べようと、とりあえずは蕎麦湯をたくさん飲んで気を紛らわせるのであった。

なぜか岡山(7)

2009年09月20日 12時21分43秒 | ART
今日はやや遅めに起きて、ホテルの朝食。こちらのホテルではえびめし、味噌汁、サラダ、ハム、ソーセージ、納豆、海苔、白桃のカレー、ままかり、きび団子と岡山の味が楽しめる。



9時頃、倉敷へ移動。電車でわずか十数分と近いので、楽々といける。ところが昨日バーでも聞いたのだが、あまり岡山と倉敷の仲は良くないらしい。合併すればあっという間に政令指定都市になっていたのだが、合併構想は話はあるものの消えてしまうようである。元々、倉敷が天領であったためという話も聞いたが…。



まずはまっすぐ大原美術館へ。やっぱりという感じだが、観光客が非常に多く、美観地区は全然美しくない。北海道の人に分かるように言うと、観光シーズンの小樽運河沿いやメルヘン交差点をさらに悪化させたような状況である。


→この辺は、人が少ないように見えるだろうが…



■まずは美術館本館から。
アマンジャン「髪」:ムンク的憂鬱さ。
デルヴァン「連馬」:ベルギー絵画の雰囲気あり。
ミレー「グレヴィルの断崖」:ミレーが海を描くのは珍しいのでは。人物はミレー調。

児島虎次郎「和服を着たベルギーの少女」:和服はともかく、顔を印象派のタッチで描くと、蛇女のようである。
フレデリック「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」:美術館の壁いっぱいに展示されている大作。左側はバタバタと訪れる死、右側は神のもとへといざなわれるのだが、何しろ人口密度が多すぎる感じだ。
セガンティーニ「アルプスの真昼」:真昼の色彩を追求したまぶしい作品。

シダネル「夕暮の小卓」:テラスの酒瓶やポットが、夕方の光で上手く浮き上がっている。
セルジェ「春の小川」:イメージより随分暗い作品。川はなく白い花の列が川の存在を暗示している。空も灰黄緑色だ。
エルグレコ「受胎告知」:大原美術館の名品。隅々まで手抜きなし。これを待つこと10秒で、正面からじっくり見られるのは素晴らしいことだ。

アマン・ジャン「家族の肖像」:ごく自然な家族の様子を描いて、これは良い。
コッテ「セゴヴィアの夕景」:真っ赤な夕景を描いた大作。これは力がある。
ヴラマンク「サン・ドニ風景」:まだスピード感が出ていない時代の作品。陰鬱な色は彼ならでは。
ロスコ「無題(緑の上の緑)」:色は緑が2/3とグレー1/3の面積比率に見える。単純でいて何かある作品だ。

■分館
ピカソ「鳥籠」:寓意を秘めている感じ。
スーティン「鴨」:近美の作品しか見たことがないが、まったく異色な感じがする。
ルシアン・クートー「ロワルアルブル夫人」:人を鎧の部品のようなもので構成した面白い作品。

古賀春江「深海の情景」:結構適当な雰囲気も漂う作品。上方に太陽の黄色がうっすら。
松本竣介「都会」:青春のやるせなさが感じられる。三岸のオーケストラっぽい描写も。
関根正二「信仰の悲しみ」:記憶にあるのとは違い、意外と明るい感じ。歩く人たちが泣いていると思い込んでいた。

河原温「黒人兵」:「浴室シリーズ」しか見たことがないので、これは実にうれしい。穴に向けて落下する男の足や靴底がクローズアップされた作品。非常に素晴らしい。
熊谷守一「陽の死んだ日」:その後の猫を描いている熊谷ではない。死に顔にはじける色彩、葛藤のあったであろう作品だ。

■昼食をはさんで工芸館と東洋館。
残念ながら1日で全部きちんと見るのは困難な美術館である。駆け足で一通り回る。

私は国立近代美術館における展覧会で大原美術館の作品を結構見ているが、それでもまだ見ぬ名品が沢山ある素晴らしい美術館である。特にエルグレコの作品はそう簡単には見られないだろうし、河原温の「黒人兵」などは、「こんな作品があったのか!」と驚きで一杯となった。またいつか来るかもしれない、と思うのも無理ないだろう。

なぜか岡山(6)

2009年09月19日 21時04分41秒 | 飲み歩き・道外(東京以外)
2日目も夕方になり夜の岡山に繰り出す。まずは昨日、店の前で声をかけてきたおばちゃんが好印象だった、西川近くの「K」へ。偶然かも知れないが、店を探索して歩いていると、何人かのお店の人に声をかけられた。それがことごとく良い感じの人なのである。



さて、カウンターに座り、まずはビールを飲む。通しは穴子きゅうりとイカの酢味噌。今日は岡山の味を中心に行こう。

まずは、ままかりだ。岡山県内では「隣家に“まま(ご飯)”を借りに行くほど美味しい」そうだが、それ以外の地域では全く注目されていないため、美味しくないのかもしれないという魚だ。焼いて味付けしたものと、一般的な酢漬けのものがあるようなので、両方食べてみる。

まずは酢漬け。後ほどホテルの朝食でもままかりが出てきたのだが、正直なところ漬かりすぎており、どんな魚でも同じではないかという味になっていた。しかしこの店では、魚の形もシャキッとしており、良い味付けだと思う(しかし、絶妙というほどでも…)。



続いて、焼きままかり。こちらは焼いた香ばしさが感じられ、絶妙の一品だと思う。これならば、私ももっと食べたいくらいだ。



さらにいわし天ぷらと、10食限定というばら寿司を注文。いわし天ぷらは火の通し加減が素晴らしいのだろう。中はちょっとねっとりした感じが残るほどで、小いわしの味わいがはっきりとする。



ばら寿司はいわゆる五目寿司のようなものである。上にのった具はエビ、タケノコ、椎茸、アサリ?、穴子、サワラ、レンコン、錦糸卵など。華やかであるが、まあ、想像通りの食べ物だろう。喜平という酒を燗にしてもらい、一緒に飲む。



この店はお店の人も良く、お客さんも楽しんでいる様子だ。岡山の味を味わうには良い店ではないだろうか。しかし、食べ物のボリューム感は少な目で、上品な店といえるだろう。

あまり酔わないうちに、事前に調査しておいたバー「S」へ移動する。まず1杯目はジンフィズ。なかなかの手練で若いバーテンダー氏が作ってくれた。それを飲みつつ、本日の構成を考えて…。

考えてもいつも変わらないのだが、2杯目はマティーニ。ジンの銘柄を聞かれたので、ブードルスと言ってみた。そして店主が作ったマティーニは…、これはさすがの味だ。ブードルスを使ったせいか、かなりのロングステアをしていたようだが、その効果が出ている。味に丸みはあるが、薄まっていない。感心させられる出来具合である。

3杯目はジン+青りんご+コアントロー+ライムの、甘め+酸味の強いカクテル。これを飲みながら、マスターに最近のカクテルコンテスト事情を聴く。クラシックカクテルを発展させたものが基本にはあるそうで、ある年はギムレットを進化させ、アクアビットを使ったものが優勝したそうである(材料も3種類で、シンプルだったそうだ)。

すると次の年には、それに青りんご風味を加えたもの(もちろん、単純に足しただけではない)が優勝し、さらに次の年は梨の風味を効かしたものが優勝したそうだ。前年のを参考にするだけではないのだろうが、ある程度の流行りというのはあるようだ。

最期に強烈なペルノー+グレナディン+オレンジジュース少量の、ゼロというカクテルを飲む。1930年代のクラシックなグラス(昔はステム部分が短いらしい)で、飲ませてもらったが、個性的で初めて飲む味わいのカクテルであった。



他にもサパンというもみの木のリキュールを味見させてもらったり、岡山の興味深い話をいろいろ教えてもらった。何とも素晴らしいバーで、またいつか岡山に来ることがあったら、再訪したいものである。

今日はこの辺で帰宅。今回の旅行では、東京出張の時などに比べ、非常に慎重なナイトライフを過ごしているなあ。

今日の歩数は20975歩。

なぜか岡山(5)

2009年09月19日 16時34分59秒 | ART
今日の午前中は、岡山県立美術館で「ターナーから印象派へ」展を見る。最初に言っておくが、ターナー作品は5点(笑)。といっても悪い展覧会ではなかった。



ウィリアム・ヘンリー・ハント「イワヒバリの巣」:今回一押しの作家。薔薇のピンク色、卵の青色と色彩が非常に素晴らしい。
エドワード・ダルジール「夕空の川景色」:紫を使いながらバランス良く仕上げている。
ジョン・エヴァレット・ミレイ「グレン・バーナム」:林の間を老婦人が向こうに歩いて行く、地味な画だ。

アンソニー・ヴァンダイク・コプリー・フィールディング「海岸風景」:雄大かつ様になっている。
ウィリアム・クラークソン・スタンフィールド「テクセル川河口」:シャープに荒々しい水の流れを描き、よくできている。空気遠近法を使い、印象派ではないものの大気の感じが出ている。
ジョン・ウィリアム・ノース「ストブホール近くのテイ川」:水が一瞬澱んで、流れ下るところを描いたテク自慢な作品。

ジョージ・フレデリック・ウォッツ「ネス湖」:もやーっとした湖の雰囲気が描けている。
アルフレット・ウィリアム・ハント「ハイデルベルク」:幻想的建物と風景。緑の山にピンク色で朝焼けの空を表現。不思議なセンスだ。
エドウィン・ランシア「乱射」:死んだ母鹿に寄り添う子鹿。古典的な傑作。

ジョージ・クラウセン「春の朝:ハーヴァーストック・ヒル」:娘を連れた実に美人の母。喪服らしいものを着ているので、よからぬ想像が…。ロシア絵画を思わせる作品だ。
ジョン・ウィリアム・ゴッドワード「金魚の池」:象徴主義作品。金魚にえさをやる女性を描いただけなのだが…。実にすばらしい作品である。
エドワード・アトキンソン・ホーネル「春の目覚め」:女性を描き、乱雑に見えて上手い。

ジョウゼフ・マラッド・ウィリアム・ターナー「タブリ・ハウス‐準男爵J・F・レスター卿の屋敷、風の強い日」:湖の上に天候の悪化を予感させる、黒い雲の帯がかかっている。不吉な感じの作品。
ポール・ゴーギャン「ディエップの港」:さりげない港からの風景。らしさが開花する前だと思うのだが、これも悪くない。

続いて常設展。
■「大正期以降の油彩画と現代の美術」
坂田一男「習作(鍵のあるコンポジション)」:昭和元年にして、完成度の高い洗練された抽象画。
木原千珂「LUMIERE」:なんと木原康行の奥さんの作品。色と形による視覚マジック系の作品。

■「原撫松の軌跡」
原撫松は46歳で死んでしまった、作品を見る限りでは非常にまじめな人だ(多分)。
「鈴木トメ像」「鈴木タヨ像」:バリバリの日本式肖像画。
「横向きの裸婦」:留学した後は、西洋技法をきちんと身につけているのだ。

■「国吉康雄・坂田一男・小野竹喬・森谷南人子 生誕120年を記念して」
いずれも同年(1889年)に岡山で生まれた画家の作品展である。国吉の作品を10点ほど見ることができ、実にうれしい。
国吉康雄「カーテンを引く子供」:カリカチュアライズされた、少々不気味な子供。
同「鶏小屋」:黒いシャガールといった感じの画風だ。
同「逆さのテーブルとマスク」:まさにタイトル通りの画なのだが、病んだ感じがする。
同「ここは私の遊び場」:廃墟となった街並み、黒い日の丸の旗が目立つ。昭和22年の作品なので、色々と思うところがあったのだろうか。

坂田一男「キュビスム的人物像」:典型的なキュビスム作品。
同「コンポジション」:昭和初期にして迷いがない。
同「作品」:これも昭和23年の作品だが、黒い日の丸が描かれている。

森谷南人子「向井石切場」:石切場のはずなのに、変な植物オーラを放っている。

■「おかやまアート・コレクション探訪 -仮面-」
アフリカの仮面コレクション。タンザニアの儀礼用仮面で人毛を使ったものがあったのだが、なぜかいいオヤジ具合に禿げているのである。何だか可笑しい。

***
昼食をはさんで「林原美術館」へ。この美術館はトレハロースで有名な林原グループの美術館である。北海道以外の地域を旅行して思うのは、企業力が全然違うのだなということである。



企画展「平家物語絵巻のすべて」を見る。江戸時代前期に作成された、全36巻からなる超大作絵巻のうち、木曽義仲の活躍から平家滅亡の後までが展示されていた。絵巻自体の字はあまり読めないのだが、現代文で解説が付いており、何しろ有名シーンばかりであるから話は良く分かる。色は非常に綺麗で、保存状態としはこれ以上は望めない感じだ。

かなり観覧に時間がかかり、喫茶コーナーでコーヒー休憩。



2泊目から都合によりホテルが変わるので、ここで「三井ガーデンホテル」にチェックイン。部屋がぐっとせまくなってしまったが、まずはホテルの大浴場で風呂につかり、夜の出撃に備える。

なぜか岡山(4)

2009年09月19日 12時51分56秒 | 食べ歩き
2日目の朝。6時起床で2キロほど市内を散歩する。



市内中心部を流れている西川(にしがわ)は、やけに水量が多く早い川だ。河畔には変な鳥もいたりして、なかなかのものだ。札幌の創成川も見習ってほしいと思う。



6時半過ぎにホテル内の「U」にて朝食。胚芽米にカレー少々、味噌汁、ミートボール、鮭、マカロニ、かまぼこ、鶏南蛮、ほうれん草、納豆・温泉卵うどん、ヒジキ、オレンジジュース。なかなか悪くないが、岡山の味が欲しいところだ。







8時過ぎに移動開始。電車で3駅移動し岡山県立美術館の「ターナーから印象派へ」をまず見る(感想は「なぜか岡山(5)」で)。



昼食は名前だけ知っている岡山本店のデパート「天満屋」地下にある「I」でえびめしだ。



えびめしというのは実は東京発祥メニューで、ある人が岡山に持ち帰って局地的に岡山のみで食べられているローカル洋食である。駅の飲食店のショーケースにもえびめしの見本があったから、一般的な食べ物になっていると思われる。



今回はえびめしプレートを注文。最初にお代わり自由らしいコールスローが到着。次にコーンスープが来て、ちょっとしたコース仕立てになっているようだ。





それからおかず一品を選んで付けることのできる(私は唐揚げを選んだ)、えびめしがやってきた。何とも真っ黒なお姿だが、味はというと…。見た目からする味の濃さ、しょっぱさは全くなく、控えめなソース味とスパイス味というところだろうか。具にエビが結構入っているので、目をつぶって食べればエビピラフかもしれない。ものすごく美味しいものでもないが、毎日食べられそうな洋食、それがえびめしだ。まじめな話、翌日以降ホテルの朝食でえびめしがあったので、私は4日連続えびめしを食べたが、特に飽きるということはなかった。



ちょいとこの店で気になったのは、年配の女性の一人客が多いことだ。デパートの地下にあるので、買い物がてら立ち寄るというのは不自然ではないだろう。しかし、おばちゃんが“わしわし”とえびめし(更にハンバーグ、エビフライセットだったりする)を食べているのは、かなりの力強さを感じる。岡山は女性が強いのかもしれない。天満屋でも有名なのは女子マラソンだけだ。

なぜか岡山(3)

2009年09月18日 21時17分10秒 | 飲み歩き・道外(東京以外)
やっと岡山駅に到着。新幹線の通る駅は立派だ。また駅前も結構都会の雰囲気がする(中心繁華街は別の場所だが)。駅前では桃太郎と三匹の家来がお出迎え。下から見上げたので立派なお姿なのだが、実物はイメージより相当小さい。





早速ホテルへと歩く。駅前のメインストリートに自転車専用道路エリアがある。おいおい分かってくるが、岡山市は自転車王国で非常に自転車の通行量が多い。小さな交差点でもかなりの割合で自転車ゾーンが作られている。


→駅前を線路と平行に走る大通りに専用ゾーンがある。

電車で一駅ほどのところにある「Kホテル」にチェックイン。たまたま角部屋が用意されていたが、普通にはないほど広い部屋である。立派なテレビと4人掛けの応接セットがあるのだ。少々休憩の後、早速夜の岡山の街に出発。

今回は事前に調査しておいた、駅からすぐ近くの「S」へ。



時間が早めでまだ誰もいないので困るが、カウンターに座る。まずビールと、通しは落花生豆腐だ。メニューから刺身盛り合わせ4品とおひたし、鱧炙りを注文する。



最初にやってきたおひたしは、春菊と菊花を合わせたもの。野菜のゆで加減が抜群なのと、やはり出汁がうまい。この店は料亭の居酒屋部門としてオープンされた所なので、基本的な技はしっかりしているようだ。



続いて刺身。今日はサワラ(岡山を代表する魚)、コチ、タコ、サンマの4品である。北海道では、サワラを刺身で食べることはないだろうが、程よい脂ととにかく柔らかい魚である。甘みもあり、なかなかの味。ただし私の好みからすると、白身でむっちりとした歯触りのあるコチに軍配が上がる。コチは、とにかくきめ細かい身であり、ヒラメ・ソイの上物と匹敵する味わいだ。タコも瀬戸内海の味でもちろん美味しい。サンマは旬ということで、こちらの人にはお勧めなのだろうが、私にはあまり珍しくない。



次に鱧炙り。鱧は関西圏ではよく食べられるが、北海道ではあまり食べない魚だ。皮目を火であぶったものだが、私の好みとしては身のほうもほんの一炙りして欲しいと思った。その方が香りと味が強まると思うのだ。



次に日本酒「三光ほほえみの潤い」に切り替え、自家製チーズとタコ唐揚げ、サワラ鍋を注文。自家製チーズは酸味があり、日本酒と合わせても悪くない。タコ唐揚げは予想以上の強靭な歯ごたえ。そして、サワラ鍋。これが大ヒットである。





出し汁に黄ニラ(これも名物の模様)と共にサワラの切り身が入る。切り身は加熱されたせいで、味がしっかりしながらもふわふわの歯ごたえ。あっという間に食べてしまい、出し汁を飲む。やや甘い味付けなのだが、添えられたゆず胡椒をほんの少しとかし込んで飲むと味が引き締まり、旨みだけがいいバランスで感じられる。



最期に御前酒山廃純米昔造りを追加して、鯛酒盗、きゅうり辛子づけ。鯛酒盗は塩辛であるから、結構しょっぱいし癖がある。珍味なので当然なのだが、この店ではその下に大量の青ネギが添えられている。これを一緒にして食べると…、うーん、これは合うぞ。酒盗とはこうやって食べるべきものであった、と思わせるほどの相性の良さだ。また西の人が白ネギより青ネギを好む気持ちも分かるような気がするなあ。



ということで今日は終了。非常に沢山食べているようだが、実はこの店、盛りが少ないのだけが難点である。もう少しボリューム感があると嬉しい気がするのだが…。しかし味は満足すべきもので、最期にお店の女将に「札幌から来ました」というと、お土産に魚のつくだ煮を頂いた。

商店街を散策して、缶ビールを1本買ってホテルに帰る。まだ先は長い。今のうちから暴走するのはやめておこう。

今日の歩数は17002歩。

なぜか岡山(2)

2009年09月18日 14時27分25秒 | ART
姫路駅前から、通り沿いにある彫刻を見ながら姫路城方面へ向かう。確かに遠目に見える姫路城はきれいかもしれない(あまり城に興味がない)。









時間的にどうかなあと思っていたのだが、ここまで来たので思い切って姫路市美術館の「和田三造展」に行ってみることにしよう。





和田三造といえば東京国立近代美術館の「南風」しかイメージがないので、どんな作品が出品されているのだろうか。非常に味のある姫路市美術館の前庭にも彫刻がたくさんある(別途紹介予定)。おなじみ(笑)ブールデルの他に、本郷新の2作品があるのは少々嬉しい。

展示室に入るとまずはコレクションギャラリー「画家の自画像展」だ。ここではアンソール、ムンクの版画、鴨居玲の自画像等があり、期待感が高まる。そして「和田三造展」へ。

「南風」:この画のモデルになった船頭と和田の間に交流が生まれたそうだ。画が事実と異なると怒りだすという、一本気な船頭さんだったらしい。
「樹下婦人図」:何となく神話的で青木繁との共通点を感じる。
「風景(パリ)」:フランス風味で自然な風景画だ。

「風神雷神図」:俵屋宗達から始まる系譜にある作品だが、独自の作品になっていると思う。「南風」の肉体表現に近いものもある。
「石曼荼羅」:カラフルな石を配置した、不思議な画。
「戦闘図」:鉛筆画だがローマ風でみっしりと力強い作品。北海道立近代美術館収蔵品とは知らなかった。

「南蛮絵更紗「山の幸」」:木綿の染織作品で、凄いスケールの大作。
「朝鮮総督府壁画画稿(三幅対)」:妙にカラフルで、どこの国とも言えないような雰囲気。
「蒙古襲来図」:これもお祭り的なカラフルさがあり、楽しそうですらある。

「工事場風景」:ピンクのうろこ雲が印象的。
「浴場」:上の角度から温泉場を除いたような雰囲気の作品。
「イエスの一生」:受胎告知のシーンや、三人の博士が登場するシーンなど。

他にも資料がいろいろあったのだが、アカデミー賞衣裳デザイン賞を取ったこともあるらしく、誠に多才な色彩画家(形もしっかり描く人だが)という感じがした。「南風」の印象だけでは、和田のごく一部を知ったにすぎないということだろう。

もう一つの展示室「國富奎三コレクション」はコロー、クールベ、ドガ、モネ、マティスなどのまあ一般的といえばいえるような展示。ブラマンク「川沿いの村」は色彩を抑え、ブラマンクらしいシュッと引いた線のない落ち着いた作品。キース・ヴァン・ドンゲンの作品も北海道以外で見たことがないので新鮮。ブラングウィンの作品(「ヴェニスの朝市」)も多分初めて見たのではないかなあ。

姫路市美術館は、元々帝国陸軍の兵器庫・被服庫として作られたらしいレンガ造りの建物である。雰囲気は素晴らしいのだが、建物が若干細長いため、展示順路をうまく切るのが難しいような気がした。いずれにせよ、時間のない中ではあったが、満足すべき展覧会であった。


→姫路市美術館正面と、手前の彫刻は木内克「エーゲ海に捧ぐ」。

古めかしい商店街を抜けて、姫路‐相生‐岡山へと移動。いよいよ本来の目的地、岡山入りだ。

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20090926追記。
乗り換えをした相生駅は、日本の駅を五十音順に並べると先頭に来るらしい。

なぜか岡山(1)

2009年09月18日 12時16分39秒 | 食べ歩き
さて、なぜ岡山に行くことになったかは徐々に説明していきたいと思うが、今年の私の旅行は岡山市とその周辺である。まずは6時の始発の地下鉄で札幌駅へ行き、新千歳空港へ。空路、神戸へと飛ぶ。岡山市にも空港はあるのだが、東京乗継の上、到着が14時過ぎになってしまうので、こういうことになった。

神戸空港からポートライナーで三宮へ。そこから新快速で姫路へ。最短時間で移動するならば新神戸~岡山の新幹線に乗るのが当然なのだが、それだけでは味気ない。ちょっとした理由もあって、姫路駅で降りる。ちょうど昼前となり、昼食を取ろう。



姫路ローカルな食べ物と言えば、期せずしてこの連休中に開催されていた「B-1グランプリ」にも出品されていた「姫路おでん」というのがある。これを食べていこう、というのがまずは第一の狙いだ。ということで、以降もいわゆるB級グルメ的な話が非常に多くなる予定である。

さて、姫路でおでんを出す店は当然何軒もあるのだが、昼前であまり遠い場所は避けるとなると、駅地下のおでん「NG」が良いだろう。



非常に狭い入口から入ると、カウンター10席程度の小さな店。すでに客が6人もいるのだが、何とか座ることができた。早速のおでんは大根、豆腐、きんちゃくとオーソドックスなものから。酒は灘菊本醸造を燗してもらった(昼からだが、飲まないわけにもいかない)。



姫路おでんの特徴は、おでんの具に生姜醤油をかけることである。食べたことのない人には「そんなバカな」と思われるかもしれないが、生姜の辛さは程々で、実によい風味付けになるのだ。大根、豆腐は淡白な味だが、それでも問題ないと思う。きんちゃくはレンコン入りだと思うが、これも美味しい。

追加におからこんにゃくという謎の品と、きずし(しめ鯖)を注文。おでんの“こんにゃく”は、なかなか味がしみ込まないのでやや疑問な具であるが、おからこんにゃくはプリプリしすぎない歯ごたえで、味のしみ込みが良いようである。またしめ鯖は身が大きくて、しめ方も非常によく酒にぴったりだ。





あまり時間がないので、これくらいにしておこう。これからちょっとだけ姫路市内散策に足を延ばす。


→姫路のキャラクター「しろまるひめ」だそうだ。

20090917覚え書き

2009年09月17日 20時44分24秒 | 飲み歩き・すすきの界隈
本日は会社の飲み会。

一人、「WS」でジントニックを飲んでから、「TT」での宴会。途中、適切な量の焼肉も出たりして、中々美味しかった。

作業支援で札幌に来ているオジサンが、私より大幅に若いことも判明し、すっきり。しかし、明日は5時に起きなければならないので、2次会は断念。

20090915最近読んだ本

2009年09月15日 21時22分42秒 | 読書
■「闇よ落ちるなかれ」L・スプレイグ・ディ・キャンプ
突如ローマ時代にタイムスリップしたアメリカ人。最初はおずおずと、やがて大胆にローマ帝国没落後の暗黒時代をなくそうと大奮闘する(再読)。

以下、図書館の5冊。
■「オンジン」室井滋
歌姫として自分の歌カセットを売り歩く話。そういえば、こんな特集ありましたね。室井さんはこういうのにも耐えられるタフな人である。

■「すっぴんロンドン」筒井雅子
イギリス、ロンドンならすべてOK。日本は見習うべし。という下らない論調の本も多いが、これはそんな訳はないと素直に読める本。

■「チップの本」水野正夫
全編チップに関する内容の本は初めて。文化的な深みまで伝えてくれるが、一層外国に行く気がなくなるわけである。

■「週末アジア」吉田友和
基本的に週末+1日休暇で行ける海外のガイド(沖縄もあり)。東京だからなせる技という気もする。それから月曜早朝に帰ってきて、それから出勤というのもつらい気がする。

■「女一人の買いつけ世界旅行」岡田正子
ビジネスベースのため、観光とは一味違う旅行体験談。