三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

1億総クレーマー

2007年06月16日 | 政治・社会・会社

 苦情担当者として以前、民事介入暴力についてのセミナーを受けました。暴力団対策が主でしたが、それ以外に民事介入暴力に準ずる事例として、悪質なクレームについての話がありました。たとえば飲食店で、揚げ物の焦げた部分を黒い虫がついていると言い張って、新しく作って提供されたにもかかわらず、会計の際に「謝るだけなのか、値引きするのが本当じゃないのか」と脅す客。こういう事例は不当要求に当たりますので断固として拒否しなければならないのですが、大きな声を出しながらしつこく要求してきて、気の弱い店長は脅しに負けて値引きしてしまいました。見た目は普通のおばさんでしたが、平気で不当要求をしてくるんですね。商売をやっている者にとっては厄介な相手です。さらに悪質なクレーマーになると、自分で料理の中におしぼりの袋の切れ端や自分の髪の毛を入れておいて、それを異物混入だと騒ぎ立てて全額無料にしろ、謝罪文を出せ、何か品物を寄越せ、などと言ってくる計画的な事件がありました。店長がしっかりしていれば当然、こういった不当要求(というよりも脅迫、恐喝です)は撥ねつけますが、やはりここでも気の弱い店長は要求に応じてしまいました。後になって警察に届け出ても、まともに取り合ってはくれません。その場で110番してくれれば対処の仕方もあったと苦言を言われておしまいでした。クレームというよりも犯罪そのものなのに、警察の対応はその程度なのです。警察官もプライベートではそのくらいの脅しは平気でやっているのかもしれません。なにせ日頃から犯罪者を相手にしているわけですから、朱に交われば赤くなって、脅しくらいお手の物です。

 悪質クレーマーというのは、常日頃から悪いことばかりをしている不良の連中やプライベートのときの警官だけとは限りません。カタギの一般市民が悪質クレーマーに豹変することもよくある話です。

 最近はやりの携帯電話画面のクーポンが使えるのに使えないと言われたと大騒ぎした中年男がいました。困ったアルバイトが本社の私に電話してきたので、謝罪して会計をいただかずにお帰り願ったのですが、その後がいけません。繰り返し電話してきては、「すごい目で睨みつけられた」だとか「妻の前で恥をかいた」だとか、とにかく感情的な側面をずっといい続けます。そして、対応したアルバイトを馘にしろだとか、他人の会社の人事にまで不当な要求をしてきて、最後は「本社のお前の話し方が気に入らない、謝罪文を出せ」と、会ったこともない私に要求してきました。もちろん断りましたが、すると今度は「これから会社に行くぞ」などとレベルの低いチンピラ並みの脅しをしてきました。ほとんどサラ金、ヤミ金の連中と変わりません。

 こういう人が普通のサラリーマンとして生活しているのですから、日本という国は政治家が腐っているのではなくて、日本人全体が同じように腐っているんだなと、だから腐った人間が政治をやってさらに国を腐らせているんだなと、そう思わざるを得ないんですね。腐った政治家は腐った国民が選んだものだから、安倍もノバもブッシュもネオコンも金正日も小泉も森も折口もオテアライも石原も社会保険庁も霞ヶ関も桜田門もトヨタもキヤノンも銀行も、みんな同じように腐れ果てているのはほかならぬ日本国民のせいというわけです。みのもんたが「年金の行方不明は国民の責任だ」と言っているのは、「バカを政治家に選んだお前らが悪い!」ということであり、さらに「国民全体の知的レベルが低い、要するにバカ、道徳レベルも低い、要するに国民が全員ヤクザで性悪。だからこんな国になってしまったんだ」とそういう深い意味なのかもしれません。

 そしてそういう腐れ果てた根性の持ち主である国民のひとりから今日も苦情の電話がかかってきます。またいつもの台詞を言わねばなりません。願わくばこのお客様がクレーマーではないようにと祈りながら、

「おっしゃるとおりでございます、まことに申し訳ございません・・・・」