田母神俊雄という自衛隊の人が「日本が侵略国家だったというのは濡れ衣だ」という内容の懸賞論文を応募して最優秀賞に選ばれ、応募したことが内規違反に当たるため更迭されたということがニュースになっています。大方はその論文の内容が稚拙で誤っているという論調であり、こんな人物が自衛隊のトップ2にいることに対しても批判的です。世間の印象はおそらく、「ひどい人がいるものだ、自衛隊もだんだんひどくなってきた」といった感じでしょう。ただし、田母神という人がどういうふうにひどい人で、自衛隊がいつの頃と比べてひどくなってきたのかと聞かれれば、それに答えられる人はいません。あくまで、なんとなくの印象。しかしその「なんとなくの印象」が選挙になると浮動票の行方に直結するわけですから、マスコミは報道の仕方に気をつけなければなりません。
さて、報道の中であまり問題にされなかった「内規違反」について、私はかなり引っ掛かりを感じました。一般の会社で、たとえば懸賞論文に応募するのに上司に内容を読んでもらい許可を得てから応募しなければならない、などという規定はありません。公表された内容が会社に著しく損害を与えた場合は、就業規則に従って処罰の対象になることがありますが、応募する前から検閲するような規則はありませんし、会社はそんなにヒマではありません。また会社が違法な行為を組織ぐるみで行なっていて、それを告発する論文だった場合、無論上司に内容を確認してもらうこともできないし、また会社としてもその論文のおかげで会社が社会的制裁を受けたからといって、論文を発表した人を就業規則の処罰対象にすることは、世間的にできないでしょう。
ところが自衛隊の場合はそういう内規が存在する訳で、今回の事件がなければ一般的に知られることはなかったでしょう。自衛隊は自衛隊法に基づいて存在している組織で、すべての法律は上位の規範である憲法に違反していないことが要件です。
日本国憲法21条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
自衛隊の内規は、この条文に違反してはいないのでしょうか? 会社の就業規則でいえば、法律に反している規則があれば、その部分の適用は無効です。就業規則の大部分が法律に反していて、しかもその就業規則どおりに仕事が行なわれているとすれば、その会社は組織ぐるみで違法行為を行なっていることになり、そんな会社は認められません。
もともと自衛隊は軍隊という性格上閉鎖的な組織にならざるを得ない訳で、内部では基本的人権もクソもありません。「軍事機密」という大義名分を掲げて情報をほとんど公開しないから、何兆円という予算がどんな使われ方をしているのか、知りようがありません。そういう組織なのです。
本来なら、この事件を契機に自衛隊の存在そのものが問い直されなければならないのに、みんなで寄ってたかって田母神という人を悪者に仕立てることで、自民党や官僚お得意のトカゲの尻尾切りで済ませようとしている気がします。
自衛隊は軍隊で、軍隊は人殺しのための組織なのですから、自衛隊は人殺し組織です。当たり前の話です。自衛官ひとりひとりが実際に人殺しになってしまう前に、自衛隊は解体しなければなりません。
「軍隊があるのに反対なやつは、強盗が押し入ってきて妻子が殺されたり犯されたりするのをただ黙って見殺しにする腰抜けだ」という議論をどこかで目にしました。
話のすり替えです。軍隊を認めないのは、強盗に対して無抵抗ということではありません。武器を買い揃えたりしないということです。
強盗がくるからといって、給料を武器に費やすサラリーマンがいますか?逆に警察に捕まってしまいますよね。たとえ武器を揃えたところで、窓からグレネードを投げ入れられたり、RPGで攻撃されたらどうすればいいのでしょう?
運よく目の前に来た強盗をやっつけることはできました。しかし実は後ろで糸を引いているヤツがいて、次から次へ強盗を送り込んで来られたら、どうしますか?
そして強盗に送り込まれるのは実は家族を人質にとられたそこらへんのお父さんやお兄さんで、無理やり強盗をさせられているとしたら?
軍隊があるのに賛成の人に、逆に聞きたい。家族を人質にとられて外国に人殺しに行かなければならなくなってもいいんですか?
何度もいいますが、今回の事件はトカゲの尻尾切りで終わらせてはなりません。なんとしてもこれを機に自衛隊という憲法違反の人殺し組織を解体しなければなりません。解体したら予算もたくさん浮くでしょうし、自衛隊員は身体を鍛えているので第一次産業に転職すれば、日本の食料自給率も上がるでしょう。そのために予算をつけるなら、私たちは納得します。