しかしそういうものも、開封して切ってみるとまだ十分大丈夫でして、特に瓜の漬物はそのまま食べたり、細かく刻んでタルタルソースにしてエビフライにつけたり、チャーハンのアクセントに使ったりして、どれもとてもおいしかった。タルタルソースはこれまでピクルスと玉ねぎとピーマンのみじん切りと、ゆで卵を卵カッターで3回切って角切り状にしたものを入れていましたが、ピクルスの代わりに京都の漬物を入れると、とても和風な感じになって、もしかするとこっちのほうがおいしいかもしれません。タルタルソースにはときどきパセリやマスタードを入れていましたが、京都の瓜漬けのタルタルソースに和芥子を入れると夏向けの味になって、これもおいしかった。
マヨネーズは市販のものは塩分が強いので、できれば自分で作るといいと思います。作り方は実は簡単で、材料はサラダ油とお酢と卵黄だけです。あとは味付けに塩と白胡椒を少々。卵は冷蔵庫から出してすぐだとうまくいかないので、あらかじめ出しておきます。黄身だけを酢と塩、胡椒と混ぜてとにかくとことん混ぜます。電動のホイッパーがあると、かなり楽です。あとは少しずつサラダ油を足してさらに懸命に混ぜていけば出来上がりです。オランデーズソースを作るときみたいに急がないといけないわけではないので、とにかくよく混ぜることに重点を置けば、失敗なくできるでしょう。
卵は物価の優等生なんて言われて、とにかく価格が安定しているので助かりますし、卵料理はバリエーションが豊かで、飽きることがありません。私の場合はたぶん年間500個くらい食べていると思います。お店でも卵料理をよく注文しますし、持ち帰りの卵焼きもときどき買います。
卵焼き、ゆで卵、目玉焼きやベーコンエッグ、スクランブルエッグなどについては、それはもうたくさんのやり方があって、10人いたら10通りの作り方があると思いますが、どんなやり方がいいのかは好みの問題でしょう。ただ、オムレツについては、好みというよりも上手下手があると思います。洋食のお店で出てくるオムレツと同じものを家庭で作れる人がいたら、本当に尊敬します。
ときどきお邪魔するスペイン料理の店では、なぜかスペイン風のトルティージャではなくて、フランス風に巻いたオムレツが出てくるんですが、火の通り加減がちょうどよくて、卵が流れ出すこともなくしかし硬くなりすぎてもいなくて、全体に均質にほわっと焼けています。文句なくおいしい。10人いたら10人とも、おいしいと言うと思います。あんなふうに焼いてみたいなと、焼く前の卵の温度から、入れる量、混ぜ方、塩の量、フライパンの大きさや厚さ、バターの溶かし具合と量、火加減とその調整、焼く時間と混ぜかた、返しかたなどを工夫してみました。たぶんこれまでに何百個も作ったと思いますが、いまだにうまく焼けません。卵そのものはたぶん、お店ですから普通の鶏の卵を使っていると思います。特別な卵は特別に高いので、高級店以外では使わないでしょう。だから普通の卵を特別の技術で特別においしいオムレツに仕立て上げているわけで、たいしたものだなと、いつも感心します。
卵焼き用の四角い鍋で焼くだし巻き卵も、むずかしい料理の一つですよね。よく冗談で、新婚のお嫁さんの得意料理が「卵焼き」なんて言いますが、本当は卵焼きを上手に焼ける新婚のお嫁さんはあまりいないと思います。そうじゃないと、持ち帰りの卵焼きを売っている理由がありませんよね。
卵料理というと少し違うかもしれませんが、イタリアンでカルボナーラというのがあります。あれもお店によってスパゲッティの太さや質や茹で加減が違っていたり、チーズも千差万別で、十人十色の好みがあるようです。バリエーションが豊かな料理なんですね。
カルボナーラはときどき作りますが、簡単であまり失敗もないので、オムレツや卵焼きに比べるとずいぶん楽ですね。というのも、私の場合は卵をまったく加熱しないので、失敗しにくいんです。準備はボウルに卵と生クリームと粉チーズ、それに一応カルボナーラの由来を重視して粗挽きのブラックペッパーをたっぷり入れて混ぜておきます。パンチェッタの角切りをオリーブオイルでカリカリに炒めておいたところに茹でたスパゲッティを入れ、ひと混ぜしたら準備した卵のボウルにざっと入れて、今度はボウルをひと混ぜして出来上がりです。卵が少しずつ固まっていく変化を楽しみながら食べます。
中華料理の卵焼きを作るときは中華なべをよく熱して、たっぷりの油に卵を入れて作りますが、卵が油を吸ってほわっとするところがオムレツと同じです。それからなぜかよく作るのが卵とトマトの炒め物で、あまりお店のメニューとしては出てきませんが、これが実は中国の一般的な家庭料理の一つなんですね。トマトの酸味が卵とよくあって、白いご飯がすすみます。
ご飯といえばチャーハンにも卵が欠かせませんよね。中華なべに卵を入れてからすぐご飯を入れるひと、ご飯を入れてからその上に卵をのせるようにする人、またはあらかじめ卵とご飯をよく混ぜておく人など、作り方はいろいろですが、卵がよくご飯にからんだチャーハンは本当においしい。
そういえば広島風のお好み焼きも卵焼きにのせますよね。キャベツとネギと焼きそばの入ったお好み焼きが卵焼きと合体して広島焼きになります。これとビールがあればもう言うことはありません。
料理ではないかもしれませんが、生の卵もまたおいしい。ご飯にかける、そのまま飲む、ミルクセーキにするなど、卵はコクと旨みのかたまりです。カスタードクリームやスポンジケーキ、メレンゲをはじめ、デザートにも卵はよく使われますね。プリンとか茶碗蒸しもそうだし。
書いているうちに卵料理が食べたくなってきました。今日はまた卵焼きに挑戦しようと思います。それにしても、食べたいときに食べられるというのは、実にありがたいことですね。