今後の日本の外交を考えるにあたっては、高坂正堯の言説に付いてもう一度再検証すべきだろう。一時期保守派の主流であった現実主義の思考がそこにはあるからだ。高坂の代表作である『豊かさの試練』において、日本は軍事大国になる可能性について「日本はほぼ間違いなしに、大きな経済力を持つが軍事的には強力な存在になれないよう宿命づけられている」と断言した。その理由としては、日本の戦後は「強大な軍備に反対する世論が強く、かつ広汎に存在する」といったことや、「現在の社会、経済の構造は小さな軍事力を前提にして作られている」という点を指摘した。一つは日本人の意識において、もう一つは国の成り立ちが、軍事大国化できない仕組みになっているというのだ。昭和45年あたりまでは、高坂の見方はインパクトがあった。願望が独り歩きしてしまうサヨクの主張より説得力があった。しかし、冷戦構造が崩壊してからは、対米依存一辺倒に対して疑問の声が出始めた。日本人の意識の変化も見逃せない。大東亜戦争がなぜ起きたかに関しても、今の若者は様々な情報に接している。日本悪かったという東京裁判史観は、とっくの昔に色あせた。さらに、日本の科学技術の進歩は、軍事的分野への活用も可能である。現在の自衛隊の潜水艦や戦車のレベルは国際的にも第一級である。核武装だって難しくはない。とくに、核保有国である中共などの挑発などによって、日本はナショナリズムに目覚めつつあり、高坂の言説はもはや通用しないのである。
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