私たちの先人は今日の事態を予想していたのである。林房雄の『大東亜戦争肯定論』を手に取って、それを確認することができた。林が生きていた頃、彼はナショナリズムを容認しながらも、日本国民に軽挙妄動を慎むことを呼びかけた。我慢をしろというのだ。しかし、そこでは「日本がアメリカに縛られて半身不随であり、ソ連に狙われている。中共は膨張主義に転化する恐れがある」といったことが指摘されていた。とくに警戒を呼びかけているのは、覇権を求めてくる中共に対してであった。また、林は日本の政界の現状をつぶさに観察して「現在の日本の思想界と政界は四分五裂の状態だ。最も強力なのは親米派であるが、親ソ派もまた多く、親中共派も急速に勢力を増しはじめた。非武装中立という空想派もあり、最も微力なのが親日派であるかのような奇観を呈している」と分析していた。昭和40年のことである。その構図はほぼ現在も変わっていない。違うところがあるとすれば、ようやく時が熟してきたことだ。「親日派」が徐々に増えてきていることだ。安倍政権に揺さぶりをかける力を持つにいたった。日本人であれば、間違ってもアメリカやロシア、中共の手先になるべきではない。林が期待したのは西尾幹二や江藤淳であった。息子の世代であっただけに、「日本の息子たちは『歴史の呼び声』を待っている。正確に勉強し、健康に成長しつつ、静かに待っている。息子たちは決して日本民族の歴史と父祖の理想と苦闘をうらぎらないであろう」とまで書いた。その親日派イコール日本派の流れがようやく日本を動かしつつあるのだ。
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