空気や水は、あって当然。だから、誰も感謝しない。いつもあって当然の生活では、有難味を感じないのが普通だからだ。
しかし、いつも傍にいて当然だった父や母、妻や夫、我が子や友が、突然いなくなってしまう。遅かれ早かれ、防ぎようもなく、いつか必ずそういう時は来る。いや、たった一つ防ぎようはあった。自分の方が早く死ねばいい。
さて、この句の「ゐるやうにゐなくなりたる」は、微妙な表現だ。①現時点でいなくなったことは知っている。②いなくなったのに、いるように勘違いしていた時間があった。それは、数時間でも数十分でもなく、数分か数十秒、もしかすると数秒のことかもしれない。
いや、もしかすると、数年以上かもしれない。