一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

645  初蜩遠くかすかに紛れなし

2012年07月16日 | 

(はつひぐらし とおくかすかに まぎれなし)

 一昨日7月14日、17時、初ヒグラシ。去年を調べたら、13日。わずか1日違いである。麓から、かすかにヒグラシの声が聞こえた。懐かしき1年振りのヒグラシ。しかし、気温の違いだろうか、麓で鳴いても、ここではまだ鳴かない。

 ウグイスの初音は、飛び上るほど嬉しいが、ヒグラシは、懐かしいがなんとも切ない感じがする。いづれにしても私は、哀愁を帯びた、物悲しく切ない音色が大好きだ。

ヤブカンゾウ(薮萱草)、ワスレグサ(忘草) ユリ科ワスレグサ属の多年草

どちらが正式名なのか分かりません

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644  蛇の子のその小さきを吠えらるる

2012年07月15日 | 

 作業場の片隅に置いておいた、薪を伐るためのエンジンチェンソー。今のはもう3台目だ。30年で3台だから、1台10年は使ったことになる。薪割り機は24年だから、メンテナンスさえちゃんとやれば、結構持つものだ。

 そういえば、チェンソーをドロボーに盗まれたこともあった。誤って石でも伐れば、一変に伐れなくなるチェンソー。最初の頃は、いくら研いでも切れるようにならず、往生したこともあった。

 さて、ある日、犬のモモがしきりに吠えている。お客さんでも来たのかと外を見るが、気配はない。しばらく様子をみていたら、どうやらそのチェンソー辺りに向って、吠えているらしい。

 やはりそうだった。チェンソーを退けてみると、鉛筆ほどの可愛い蛇が隠れていた。さすがに、ドアを開けて逃がした。「もう二度と来るんじゃないぞ」

 確かに犬の鼻はすごい。そして、危険を察知する能力に驚く。だから、犬と人間は、数万年に亘り、大事なパートナーとして共存しているのだ。

イヌマキ(犬槇) マキ科マキ属の常緑針葉高木(小田原城址)

小田原市指定天然記念物です

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643  五月雨や父の長靴母の傘   

2012年07月14日 | 

(さみだれや ちちのながぐつ ははのかさ)

 記憶が定かではないが、この句、娘が幼稚園の頃のことではないだろうか。子供は、親の真似をしたがるものだ。

それよりもこの句から、中島潔の絵加藤登紀子の「鳳仙花」を思い出してしまった。ついでに、本場のチョー・ヨンピルの「鳳仙花」も聞いてみて下さい。

 (上の「中島潔」や「鳳仙花」をクリックすれば、映像を見ることができます)

ムラサキシキブ(紫式部) クマツヅラ科の落葉低木

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642  旧姓を記して黴の英和辞書    野里女

2012年07月13日 | 

 (きゅうせいを しるしてかびの えいわじしょ)

  数十年を経た愛用の英和辞書。今では、書棚に静かに眠っているのだが、久し振りに御用となったらしい。ページをめくるうちに、旧姓の我が名前に目が止まる。

 と、その瞬間から、生まれ育った実家や家族、勉強していた部屋のこと、女学校や共に学んだ 友達とのこと・・・・・・

 今では、当時の面影もなくすっかり変わってしまった街なども思いつつ、しばらくは懐旧に耽ったことだろう。

オオバギボウシ(大葉擬宝珠 ) ユリ科ギボウシ属の多年草。

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641  水を撒くいつでも今が楽しそう   幸子

2012年07月12日 | 

 (みずをまく いつでもいまが たのしそう)

 そう簡単なことではないが、楽しく明かるく笑って暮らすことができれば、一番の健康法だろう。そう言えば、武者小路実篤に「馬鹿一」という小説があった。読んだのは、40年以上も前の高校生時代のことで、内容までよく覚えていないが、馬鹿一と呼ばれている男。宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の中から共通する部分を抜粋すると 

イツモシヅカニワラッテヰル

ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ

実篤は明治18年生まれ、賢治は明治29年生まれだから、意外と二人は年が近かった。

ミツバ(三つ葉)セリ科ミツバ属の多年草

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640  蚕豆や普通の暮らししたいだけ  となみ

2012年07月11日 | 

(そらまめや ふつうのくらし したいだけ)

今日は、MLBのオールスターゲームが行われる。又、オリンピックもまもなく始まる。出場選手もほぼ決まり、最後の調整に入っていることだろう。

さてこの句、「普通の暮らし」とは一体どんな暮らしだろうか?例えばダルビッシュなら、どう答えるだろうか。北島康介なら、総理なら、私なら、あなたなら・・・・「普通の暮らし」とは、人によって千差万別なのだ。

この句の作者は、最近病気になったので、この句ができたらしい。「平凡でいいから、健康で平和に暮らしたい」突き詰めると、こんな結論になるのだろう。

ツユクサ(露草)  ツユクサツユクサ属の一年生植物

俳句では、秋の季語だが、萩同様、もう咲いています

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639  それ以上それ以下もなしあっぱっぱ   さくら

2012年07月10日 | 

  あっぱっぱの語源は、和製英語のup a parts だそうである。まだ普段着が和服の時代の、大正から昭和にかけて流行したそうである。夏用の木綿のワンピースで、簡易服、清涼服とも呼ばれた。洋装化の代表的存在で、女性解放に寄与したとも言われている。

この句、「それ以上」と言っているが、同類の「これ以上」と違って、他人事か又は客観的に自分を見ている感じがする。

 だから、あっぱっぱを着た作者は、鏡を見て、「私は今の私で十分だわ」と悟って、堂々と微笑んでいるんじゃないだろうか。いづれにしても、自信に溢れた句のように思える。

オカトラノオ(丘虎の尾 )  サクラソウ科オカトラノオ 属の多年草

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638  二の腕を見せぬ夏服ばかりなり  多可

2012年07月09日 | 

 袖のない服をノースリーブ(No sleeveは和製英語,正しくはSleeveless)というが、作者はその類(たぐい)の夏服を一着も持っていないという。そこで、この句を解釈すると、全然意味の違う2種類がある、

①  一度は着たかったが、着る勇気がなかったことを後悔している

②  意識的に持たなかったのであって、むしろ誇りに思っている。

それは当然後者ではないかと思う。それとも、両者入り混じった複雑な心境だろうか。

ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙) アヤメ科クロコスミア属

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 637  2012年6月  岩戸句会

2012年07月08日 | 岩戸句会

父の日や脱ぎし靴にも上座あり    薪

ファインダー覗く蜻蛉の息をして

 

紫陽花やほとぼり冷めぬ火止め窯   洋子

窯焚きや八等分に切るメロン

 

鯵さばく板前の指の白さかな     遊石

紫陽花にしたり顔させ通り雨

 

三色のあじさい活けて句を案ず    章子

小説の女と泣いて半夏雨

 

親父の日母を張り倒したあの目    炎火

七変化法案の骨抜けてます

 

目覚めればこむらがえりの源五郎   正太

父の日や母の日失くした子等が来る

 

老いし身に重き独りの更衣      歩智

長梅雨や切手貼り付く足の裏

 

父の日の遥か異国で迎えをり     稱子

夏の宵店子続けて出る話

 

父の日に届きし物は文房具      空白

父の日に履きやすき靴届き居り

 

窯の火を止め五月雨の世に戻る    雲水

梟の深き闇より梅雨入りす

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636  黒南風や竜宮城のような駅   鞠

2012年07月07日 | 

(くろはえや りゅうぐうじょうの ようなえき)

 日本各地の駅に降り立つと、どこもかしこもほとんど同じで、全く個性のない街づくりをしていて、がっかりする。地方都市が都会の物真似をしているのだ。

 竜宮城のような駅とは、小田急線の片瀬江ノ島駅のことだとか。私は、写真でしか見たことはないが、趣味が良いとはとても思えないが、江の島という土地柄を考えると、単なる駅ビルよりは、はるかに良いかもしれない。

 黒南風は、梅雨時の暗く陰鬱な雨を降らせる南風で、竜宮城との取り合わせが妙。

(上の片瀬江の島駅をクリックすると、駅の写真を見ることができます)

クチナシ(梔子、巵子、支子)  アカネ科クチナシ属の 常緑低木

 

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635  落とし文一つ供えて曾良の墓  敦子

2012年07月06日 | 

 芭蕉を慕い、奥の細道の旅に随行した曽良は、62歳の時に巡検使の随員として九州に旅したが、芭蕉が没して17年後の宝永7年5月22日、壱岐の勝本で病に倒れ客死した。曽良の墓は勝本の能満寺にあるが、没して30年を経た元文5年(1740年)、甥の河西周徳により、故郷諏訪の正願寺にも曽良の墓標が建てられた。
 オトシブミ(落とし文)は、ゾウムシ上科の昆虫でクロモジ(黒文字)の葉などに卵を産み、上手に葉を巻いて、地面に落とす。この揺籃が、江戸時代にわざと落とした巻き手紙に似ているので、付いた名前だそうである。「ホトトギスの落とし文」「落とし文の揺籃」などとも呼ぶ。

上のオトシブミ(落とし文)をクリックすると、映像を見ることができます

アカメガシワの雄花

 

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634  少年は真面目に蜂と話しおり

2012年07月05日 | 

(しょうねんは まじめにはちと はなしおり)

 2階のベランダの木製の手すりに蜂が巣を作り始めた。たぶん足長蜂ではないかと思う。以前なら、深く考えもせず、すぐに叩き落としていたのだろうが、今回は観察する気になった。

成虫が増えたら、種類が分かるのではないかと思っていた。女王蜂が巣を作り、卵を産み、卵が幼虫となり・・・・・・

  実に安全なところに巣を作ったものだ、と感心していたのだがとんでもない。今回の台風であとかたもなく巣が落ちてどこかに消えてしまった。

足長蜂の女王蜂

誰に教わった訳でもないのに、たった一人で巣作り

ほんとにすごいねえ

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633  鯵捌く板前の指の白さかな  遊石

2012年07月04日 | 

(あじさばく いたまえのゆびの しろさかな)

 一流料亭の板前、花板や立板は当然として、味を見る椀方や煮方なども、味覚を一定に保つために、酒やタバコは禁止、汗をかく激しい運動なども制限されていたとか。

 だからこの句の板前が、生来の色白と考えるよりも、板前としての職業上の節制によっての色白と考える方が妥当だろう。

  但し、料理の世界も時代が移り、様変わりしているはずで、そこまで節制している板前が、はたして日本に何人いるだろうか。極めて疑問である。

アカメガシワ(赤芽槲、赤芽柏) トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木の雌花

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632  夏暁の母が触れるおちんちん

2012年07月03日 | 

(なつあけの ははがさわれる おちんちん)

 「おねしょ」と言うべきかもしれないが、「寝小便」が私には相応しい。私は、いつ頃まで寝小便をしていたか。最後はたぶん小学校3年生ぐらいではなかったか。

 つまり、この句はいやらしい句でもなんでもなく、幼少期の私が寝小便をしているかどうか、を確認するために、母がそっと触るのである。

 620回の「万緑や舌が弄る抜歯跡」の句の「弄る」で、幼少期の記憶が突如として蘇ってしまった。それを一言で言えば、やはり寝小便をする屈辱と羞恥心、それは母に触られることによって更に増幅された。

 こういうことを、未だに記憶しているということは、私の人間形成に影響を与えただろうし、現在の私の深層心理にも影響を与えているに違いない。

ハンゲショウ(半夏生、半化粧、) ドクダミ科ハンゲショウ属

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631  親父の日母を張り倒したあの眼   炎火

2012年07月02日 | 

(おやじのひ ははをはりたおした あのめ)

私の父は満州からの軍隊帰りだったから、実に恐ろしかった。だから私は、父が死ぬまで一度も逆らったことがない。但し、母を殴ったのを見たことはなかった。

しかし、作者の親父は、子供の目の前で母親を張り倒したという。眼の前で悲しい現実に直面した少年は、しかしながら今、妻を愛し、子を愛し、孫を愛する実に優しい男になった。

「反面教師」とか「鬼の子は仏」という諺があるが、少年が仏に成り得たのは、実は彼の「親父」のお陰に他ならない。

世の中には、これとは逆に、「仏の子は鬼」という諺もある。優しく、甘やかして育てると、とんでもない鬼になることもあるので、ご注意を。

エゴノキ  エゴノキ科の落葉小高木

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